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獣の穴 4

━━━━━━━━━━━━━━━━

名前:闘魂のハチマキ

分類:兜

スロット数:1

効果:物理防御力+10 攻撃速度が10%上昇する。

━━━━━━━━━━━━━━━━


「うっし! これで二個目!」

「やったな、リク」


 ワータイガーの群れを撃退した甲斐があって闘魂のハチマキを二個も手に入れた。

 【お宝ハンター】がなかったらせいぜいゼロか一つが限界だっただろう。

 この【お宝ハンター】は犠牲にする戦闘スキルは多いけど、その分の効果は絶大だ。


 戦闘型にするかサポート型にするか、そこを明確に考えられている奴は強い。

 一番よくないのはすべてのいいところ取りを狙って中途半端になることだ。

 リクは【盗む】【お宝ハンター】【追加攻撃】のうち、前二つに集中的に振っている。


 【追加攻撃】のLvをMAXにすれば発動率が50%を超えるけど、リクはそこをグッと堪えた。

 あれもこれもと目移りするのが普通なのに、割り切っている。

 それはきっとリクが明確な目標と役割を認識しているからだろう。


「オイラ、ギルドの皆が気持ちよく戦えるようにいいアイテムいっぱい手に入れたいんだ」

「ローグになれば【お宝ハンター】の上位スキル【怪盗の手腕】があるからな。期待しているぞ」

「うん! がんばるっ!」


 この純粋さが強さに直結している。

 強さとは何も戦闘で無双するだけがすべてじゃない。

 それぞれが個性を活かして貢献すれば、それだけで強い。


 ちなみに【怪盗の手腕】はレアドロップ率が上昇するパッシブスキルだ。

 【お宝ハンターLv10】が前提条件だから、戦闘型はまず習得しない。

 気休め程度に【お宝ハンターLv1】だけ取るプレイヤーもいるくらいで、普通は【0】か【10】のどちらかにする。


「ウィム、さっきはオレが漏らしたワータイガーを仕留めてくれて助かったぜ」

「お互い様だ、バゼル。それにしてもお前、強くなったな」

「当たり前だろ。俺だって気合い入れて鍛えてんだからよ」


 バゼルは素早さ両手剣型ソードファイターだ。

 ステータスは力と素早さのみ振って、ひたすら手数と高威力の【ヘヴィスラッシュ】で押し切る。

 女はともかく、強さには一途みたいだ。

 狙っている上位職はソードマスターで、そうなれば【ソードボンバー】よりも使い勝手がいい範囲攻撃スキルがある。

 ぜひがんばってほしい。


 三層に到着して出迎えてくれたのはワータイガーの他にブラストベアだ。

 数こそ少ないけど単体の実力はワータイガーを上回る強敵で、シェリナさんがいなかったら押さえられる前衛はいない。


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ブラストベア

Lv  :46

HP  :1302

MP  :15

使用スキル:【パワーブロー】【スピードフォース】

弱点:なし

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「ファイアボールッ!」


 Lvの割に高いHPを誇るブラストベアだけど、魔法防御力はそう高くない。

 今のオレなら二発で仕留められる。

 一撃を浴びたブラストベアがオレにヘイトを向けて襲ってきた。


 ブラストベアの【パワーブロー】をシェリナさんが真正面から剣で受ける。

 その間にオレは追撃を試みた。

 この際に気をつけないといけないのがやっぱり周囲だ。


 いくら前衛が頑張っているといえ、隙間が一切ないわけじゃない。

 死角をついてやってきたワータイガーの攻撃をオレが回避。

 ウィザードだからって簡単に殺せると思うなよ。

 散々前世で鍛えているんだからな。


「ウィムさんにぃぃーーーー! ヘビィストライクッ!」

「がぶはぁっ!」


 すぐにユユルが駆け付けて仕留めてくれた。

 ユユルの成長は数値上だけのものじゃない。

 的確に状況を判断して、何をどうすべきか見極めた上でオレを助けてくれた。


 現状でバゼル、リクは安定してワータイガーの相手をしている。

 オレがダメージを与えたブラストベアをシェリナさんが倒して加勢にいったから、あっちは大丈夫だ。

 不意に側面から襲ってきたワータイガーにユユルが気づいてくれたのはありがたい。


 パーティプレイで大切なのはフォーメーションの維持だけじゃない。

 不測の事態にどう対応するかも大切だ。


「ユユル、助かったよ」

「ウィムさんを守れて安心しました! 次はあれを殴り殺しますね!」

「あ、あぁ」


 次のワータイガーに向けてユユルが走る。

 その際にバゼルが自分の隣にユユルが来て何を勘違いしたのか、より気合いを入れて叫んでいた。

 別にお前と並び立つとか、守りにいったとかじゃないからな。


「ユユルちゃん! オ、オレのほうはいいんですよ!」

「ちゅえりゃああぁーーーーーー!」

「そんなに気合いを入れて、そこまでしてオレを……よっしゃあぁーー!」

「はりゃあぁーーー!」


 よくわからん勘違いコンビが爆誕したかもな。

 想いはバラバラだけど互いの視線は魔物に向いている。

 ていうかなんでバゼルは敬語なんだよ。


 皆の奮闘の甲斐あって、周辺の敵がだいぶ片付いてきた。

 ようやく一休みができるとあって各々が回復アイテムを摂取したり座り込んでいる。


「兄貴! 見て見て! 闘魂のハチマキとタイガーブレード!」

「やるな。闘魂のハチマキはバゼルとユユル、お前で使うといい。タイガーブレードはバゼルの武器にいいかもな」


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名前:タイガーブレード

分類:両手剣

スロット数:1

効果:物理攻撃力+90 

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 何の特殊効果もないけど今のバゼルの武器より強いだろう。

 タイガーブレードは二つほどドロップしたみたいだから、いらない分は売ってもいいかもしれない。

 たぶん二万ゼル程度が相場のはずだ。

 休んでいるとシェリナさんが立ちあがった。


「皆、よく戦った。まさか三層をこれほどスムーズに攻略できるとは思わなかった。前回のゴブリンレイドの時より格段に強くなっているな」

「シェリナさん! このまま気合い入れて五層までぶっちぎりましょうや!」

「五層は少し厳しいかもしれないが、様子見しつつ進もう。バゼル、期待しているぞ」

「まっかせてくだせぇーーーーー!」


 あんなにクッソ単純な性格なら人生楽そうだな。

 ある意味で羨ましい。


「ではもう少し休憩をしたら……」

「た、助けてくれぇ!」


 四層のほうから冒険者が走ってきた。

 オレ達のところに辿りつくと転ぶように座って呼吸を荒げている。


「どうした。何があった」

「バーサが強すぎて……仲間がやられちまう!」

「バーサ? あれは五層にいるドルバーサの取り巻きだろう? なぜ四層にいる?」

「わからない! とにかく助けてくれ! 頼む!」


 野人ドルバーサ。獣の穴の最下層にいるボスだ。

 取り巻きにバーサという一回り小さい野人のような魔物を従えていたな。

 オレ達プレイヤーはゴリラって読んでいたけど野人らしい。


 考えられる原因としては誰かがドルバーサにちょっかいをかけて逃げたくらいか。

 通常、取り巻きはボスを離れないけど絶対じゃない。

 オレが知っている知識と違う点は階層をまたいで追いかけてくるというところだな。


 ゲームと違って階層移動したら敵が追跡をやめるなんてことはないか。

 リアルファンタジーの怖さが出たかもな。

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