獣の穴 2
━━━━━━━━━━━━
名前 :ユユル
クラス :ヒーラー
Lv :19
クラスLv:11
HP :179
TP :108 クラス補正+4
力 :8
体力 :2 クラス補正+1
器用さ :4
魔力 :13 クラス補正+2
速さ :6 +3
装備 :グランドメイス
風霊の髪飾り
疾風の服
スキル:【ステータス】【ヒールLv2】【杖修練Lv10】
━━━━━━━━━━━━━━━━
「ウィムさん! 【杖修練Lv10】になったので色々とスキルが出てきました!」
「あぁ、その中で【ヘヴィストライク】は最大まで振っていい。ソードファイターの【ヘヴィスラッシュ】と同じ性能だからな」
【杖修練Lv10】になると攻撃系を含むスキルが派生する。
当面は【ヘヴィストライク】一択だけど、グラントメイスと被るのが少し気になるな。
他には敵を吹っ飛ばして距離を取る【ノックスイング】も便利だから、こっちを優先する手もある。
この吹っ飛ばしの効果をうまく使えば敵の近接スキルを不発させられる。
上級者向けのテクニックだけど、いずれ身に着けてもらいたい。
パーティ戦で囲まれた時にも便利だから意外と重宝する。
「迷ったけど残ったSP【1】はヘヴィストライクに振ってくれ。単純に威力が高いからな。ノックスイングも悪くないけど、今は威力を優先したい」
「はい、では【ヘヴィストライク】を習得っと……」
「よし、キラーラビットで少し慣れてきたよな。次はワーウルフにしよう」
「殺りましょう!」
字が違った気がするけど気のせいか。
ワーウルフはキラーラビットと同じ一階層にいる。
キラーラビットと違って縦横無尽に動くからいい練習相手になるだろう。
と、その前に。
「ユユル、【ヒールLv2】で回復しておけ」
「え? でもまだHPが30くらいしか減ってませんが……」
「ワーウルフは【追加攻撃】のおかげで手数が多い。シーフが持ってるスキルと同じアレだな」
「一戦ごとにしっかり回復ですね!」
その心がけが大切だ。
ワーウルフがうろついているフロアまで来ると、オレも周囲を警戒しておく。
今のユユルだと一対一がギリギリだから、追加で二匹目がやってきたらすぐに処理できるようにしておこう。
怖いのは不意打ちだ。
なるべく壁を背にしたまま歩いて警戒範囲を限定するのも大切だ。
ユユルにそのことを教えつつ歩くと岩の柱の陰からのっそりとワーウルフが現れた。
━━━━━━━━━━━━━━━━
ワーウルフ
Lv :23
HP :131
MP :0
使用スキル:【追加攻撃】
弱点:火
━━━━━━━━━━━━━━━━
「てりゃああぁーーーー!」
ユユルがワーウルフに挑む。
今のユユルの素早さだと回避しきれないだろう。
だからこそ【ヒールLv2】の回復タイミングが重要になる。
こいつではいわゆるHP管理の大切さを学んでもらおうというわけだ。
ワーウルフは素早くてユユルの攻撃がなかなか当たらない。
ワーウルフの爪をメイスで防ぎ、そのまま切り返す。
ワーウルフが飛びのいて距離を取ったところを見逃さず、ユユルが駆けた。
距離を一気に詰めて奴が態勢を立て直す前に【ヘヴィストライクLv1】を叩き込む。
ワールウルフが立ったままふらふらとし始めた。
「スタンだ! チャンスだぞ!」
「うりゃあぁぁーーッ!」
スタン状態の持続時間は相手の体力と耐性による。
ワーウルフは素早いけど体力と耐性が低い。
その間にユユルが攻撃を叩き込むと、あっさりと倒した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ウィムはLv【43】 → 【44】に上がった!
ユユルはLv【19】 → 【20】に上がった!
【狼の爪】をドロップした!
【獣の皮】をドロップした!
【獣の肉】をドロップした!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「はぁ、はぁ……や、やれたぁ……」
「お? オレもついでにLvが上がったぞ」
同じパーティの場合、一匹の経験値がパーティメンバー全員に入る。
これを利用して弱いキャラを強キャラで強くする方法、いわゆる養殖がある。
有効な育成方法だが、Lvだけ高くなってプレイングが伴わない養殖勢が多かったな。
もちろんオレは甘やかさない。
ユユルにはきちんと強くなってもらうつもりだ。
それに他人の数値以外の成長を見るのもなかなか気持ちいい。
「ウィムさんはどのステータスに振るんですか?」
「ん、オレは器用さだな。おかげで【ファイアボールLv10】の発動がかなり早いぞ」
「器用さって魔法の詠唱速度に影響するんですね。知りませんでした。私はどうでしょうか?」
「ユユルの【ヒール】を含めた支援魔法は詠唱時間が0だからな。一部の魔法を主体にするなら別だが、お前の型ならあまり必要ない」
ユユルがかなり感心したようにオレの話を聞いている。
この分だと器用さが詠唱速度に影響することもあまり知られてなさそうだな。
いきなり魔力にぶっぱするウィザードが多かったんだろうか?
どうも不自然さを感じてしまうが、考えてもしょうがない。
引き続きユユルとワーウルフのタイマンをさせつつ、追加でやってきたワーウルフをオレが処理した。
思ったより数が集まってくるな。
【ファイアボールLv10】と今の器用さをもってしてギリギリの処理速度だ。
これだけの数を倒しているとオレのLvでも経験値がなかなかうまい。
ユユルがもっと強くなってくれたら二階層に行けるし、更に経験値効率が上がる。
その結果――
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ユユルはLv【20】 → 【22】に上がった!
ユユルはクラスLv【11】 → 【12】に上がった!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「Lvアップが気持ちいいです!」
「最高だろ? だからやめられないんだよ」
「ハイになっちゃいそうです!」
ユユルがグランドメイスを握りしめながら軽く踊っている。
あいつ、何かに目覚めてないか?
だとしてもオレのせいなのだけど。
狼の爪と獣の皮もだいぶ集まってきたな。
獣の肉は食べることによって回復アイテム代わりになるし、ここは狩場としてなかなかいい。
ただワーウルフに囲まれるとあっという間にあの世行きだ。
Lvが【20】以上も離れている相手だろうと、ウィザードは接近されたら割と無力なのだ。
しばらくはここに籠って王都と往復してもいいかもな。
このダンジョン、アクセスがいいおかげで他の冒険者とよく遭遇する。
回復アイテムを分けてくれたり、いい奴らばかりでほっこりした。
戦っていると他のヒーラーから支援魔法をかけてもらって、なつかしい気分になる。
オレがウィザードということで珍しがられたけど罵倒されないのが驚く。
「このご時世にウィザードなんて根性あるな! がんばれよ!」
「あぁ、そっちもな」
これだよ、これ。
久しく味わってなかった狩場での癒しだよ。
断じてクラス差別なんてあってはならない。
それはそうと、王都に帰ったらクロスホープにユユルを勧誘しよう。
皆さえよければ一緒に獣の穴を攻略したいところだ。