表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/42

ウィザードへの転職、ステータスとスキル

「やっと着いた……えらい目にあった」


 故郷の町から王都クリンディラまで歩くこと一週間以上、オレはなんとかウィザード協会の支部に辿りついた。

 ハッキリ言って道中の大半の魔物はノービスで戦える相手じゃない。

 見つかった時点で死確定なので、オレはなんとか魔物を避けながら歩き進んだ。


 そもそもトラベルファンタジーではゲーム開始時、チュートリアルである程度レベルが上がる。

 大体ノービスのクラスレベルが【10】くらいになる上に最低限の装備は支給されたはずだ。

 下位クラスへの転職条件はクラスレベル【10】、つまり実質ノービス時代に狩りをする必要がない。

 しかも希望するクラスを選択すれば、自動的に各協会にまで転移させてくれる親切仕様だった。


 オレの場合は当然そんなものはなく、自力でクリンディラまで移動しなきゃいけない。

 道中でなんとか狩ることができる魔物を選んで自力でクラスレベル【10】達成した。

 いやぁ、ひどい目にあった。オレじゃなかったら死んでたね。

 で、魔術師協会のクリンディラ支部だけどこれがひどい有様だ。


 周囲の雑草は伸び放題で、まともに管理されてないのがよくわかる。

 中に入ろうとしても扉の立て付けが悪いのか、なかなか開かない。

 がんばって建物の中に入るとやる気がなさそうな協会員が受付で眠りかけていた。


「こんにちは。ウィザードへの転職を希望します」

「ふぇっ!? え? あぁ本部からの集金ですか? ちょっと待ってください、今月もきついんですよ……」

「そうじゃなくて転職……」

「……本当に?」

「本気です」


 受付の女性が目をこすりながらオレを観察した。

 希望の未来に思いを馳せて冒険者になろうとしている少年にしか見えないだろうな。

 それがウィザードになろうとしているんだから、信じられないのも無理はない。


「あ、ありがとうございますっ! ではさっそく転職手数料をいただきます!」

「これでいいですか?」

「はい、結構です!」


 受付の女性の表情が明るくなった。

 この世界のウィザードがオレが知るトラベルファンタジーと同じとは限らない。

 たとえそうだとしても、オレは一人の親の尊厳を少しでも回復させたかった。


「本当にウィザード希望者がいないんですね」

「そうですね。今は強力な前衛クラス向けの武器がありますし、それにスキル効果が乗れば威力が絶大です。今やウィザード協会支部もほとんどないんです」

「いつからこんな状態なんですか?」

「十年前に私がウィザードになった時にはすでに傾きかけていたみたいです。その頃はまだいくつか支部があったんですけどね……」


 十年前といえば親父が追放されてから五年が経っている頃か。

 確かにゲームと違って死んだら終わりだし、検証が進まない理由はわかる。

 だけどそれを考えてもここまで不遇扱いされるものか?


 ウィザードへの転職希望者がいないんじゃ、こんな風にもなる。

 掃除すら行き届かず、建物の修繕もされずにいたんじゃ受付のモチベーションも下がって当然だ。


 奥へ案内されると、そこにいたのは無精ひげを生やしたやせ型のおっさんだ。

 身なりからしてウィザードだろうけど受付の女性と同じく覇気がない。

 女性がおっさんに説明すると表情が明るくなる。


「そうかそうか! 君は偉い! ウィザードはいいぞ! じゃあさっそく転職といこう!」

「は、はぁ……」


 奥にいた支部長という人物にかなり歓迎された。

 深酒した親父に続いて、まさか二度目の中年泣きを経験するとは。

 気づいたけどこの支部には受付とこの支部長の二人しかいない。

 広さの割にガランとしているから、他の人はきっと辞めていったんだろう。


「君はいい若者だ……ぐすっ……。最近はソードファイターだのソードマスターが人気でなぁ……神剣だの聖剣持ちの火力といったらもう」

「あー、事情はわかってますんで……」

「す、すまない。ではあちらで転職の儀を行う」


 おっさんに誘われて、オレは転職の間に移動した。

 長らく使ってないせいか、室内に蜘蛛の巣が張っている。

 いざ転職希望者が来たら帰りかねないぞ。


 と、口には出さずにオレは転職の儀式を受けた。

 おっさんが本を片手に詠唱を始める。

 ゲームだとここは省略されていたけど、なんだか本格的でワクワクするな。

 そして詠唱が終わると、おっさんが本を閉じた。


「クルフ神よりウィムに授ける……汝、ウィザードなりッ!」


 室内が明るく光ったと同時にオレの姿に変かがあった。

 黒いローブにフード、膝上まで伸びたブーツに短パン。

 服装は薄手の布で作られたウィザードのそれだった。


「おぉ……!」

「これで君はウィザードだ。さっそくステータスを開いてみなさい。変化があるはずだ」


━━━━━━━━━━━━

名前   :ウィム

クラス  :ウィザード

Lv   :10

クラスLv:1

HP   :30

TP   :40  クラス補正+5

力    :1

体力   :1

器用さ  :5

魔力   :8   クラス補正+3

速さ   :1


装備 :布の服


スキル:【ステータス】


残りステータスポイント:12

残りスキルポイント:3

━━━━━━━━━━━━

修得可能スキル


【ファイアボール】【アイシクル】【ウインドカッター】

【ブライン】【ポイズン】【サイレス】【バリアコート】

【MPアップ】【魔力アップ】【杖修練】

━━━━━━━━━━━━


 ようやくステータス画面が様になったな。

 これでノービスの限界Lv【10】より上まで上げられるようになった。

 ステータスポイントはLv【1】からLv【10】分の【9】に加えて、ボーナスポイントで【3】追加されている。

 ノービス時代に使ったステータスポイントはリセットされたわけだ。

 つまりノービス時代にステータス振り分けをミスしても、ここまではやり直しがきく。


 ステータスの+補正はクラスLvに応じて上昇する。

 オレはウィザードだから、MPと魔力に補正がかかっているわけだ。


 ノービスとの違いはまずスキル修得がある。

 まずトラベルファンタジーではスキルポイントを使ってスキルを習得する。


 初期に与えられたスキルポイントは【3】で、いわゆるボーナスみたいなものだ。

 基本的にスキルポイントを【1】消費することによってスキルLvを【1】上げる。

 スキルポイントはクラスLvが上がるごとに【1】ずつ加算される仕組みだ。


 例えばファイアボールの場合、スキルポイントを【1】消費すればファイアボールLv1が習得できる。

 スキルレベルの限界はスキルによって異なるけど、大体【10】くらいだと思っていい。

 つまり攻撃魔法すべてのレベルを最高にするには最低でもLv【28】まで上げる必要がある。


 ステータスポイントはレベルが上がるごとに貰えるポイントを消費して上げるシステムだ。

 今は【12】なので好きなステータスを【12】だけ上げることができる。

 スキル習得もそうだが、このシステムがトラベルファンタジーの難易度を上げている要因の一つと言えるだろう。


 ステータスやスキルの振り直しには特別なアイテムが必要になる。

 前の世界では課金アイテムが必要だったけど、この世界ではどうなっているかな。

 そもそも存在するかも怪しいので実質やり直しはできないと思っていいだろう。


 少なくとも簡単にリセットできるなら、もっとウィザードが見直されてもいいはずだからな。

 ウィザードが廃れた原因の一つは確実にこのリセット不可問題があるからだろう。


「……という流れになっている。理解できたかな?」

「問題ないです。親切にありがとうございます」


 おっさんの説明はオレが知っている内容とほぼ変わらない。

 これは助かるな。だとしたらオレが真っ先に習得すべきスキルと上げるステータスは決まっている。

 この世界の人達がどうしているのか知らないけど、こうする。


「それでスキルとステータスについてだがね。やっぱりウィザードたるもの、魔力に振るべきだろう。力なんかは」

「ステータスは器用さに全振りっと」


━━━━━━━━━━━━

力  :1

体力 :1

器用さ:5【+12】 → 17

魔力 :8

━━━━━━━━━━━━


「ほおあぁーーーーー! き、君! いきなり何しちゃってんのぉ!」

「次にスキルは……そうだな。この辺でレベリングに適した場所といえばあそこだから……これだな」


━━━━━━━━━━━━

スキルポイントを【3】消費して【ファイアボールLv3】を習得した!

━━━━━━━━━━━━


「え、何を習得したの?」

「【ファイアボールLv3】ですね」

「いや、あの、まずはだな。すべてに対応できるよう均等に攻撃魔法をだな……」

「いや、この辺で狩りに適した魔物相手なら、ファイアボールだけで十分です」

「は、はは……」


 おっさんが何も言えなくなって、壁に背をつけてずるずると座り込んだ。

 なかなかベタなリアクションをする。

 申し訳ないけど説明している暇はないんだ。


 口であーだこーだ言うよりも結果を見せたほうが早いからな。

 そして絶対にオレをウィザードにしたことを後悔させない。

 行くぞ。いざフェルムの森へ。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたなら

ブックマーク登録と広告下にある★★★★★での応援をしていただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ