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露店で買い物

 レイドクエストの報酬のおかげで資金ができたので、露店を見て回ることにした。

 この王都の中央通りにある露店には様々な武器や防具、アイテムが売られている。

 各ギルドの商人がギルド資金調達のためにしのぎを削っていた。


 ここで買い物をする際に注意しなきゃいけないのは売り値だ。

 例えば同じ商品でも露店ごとに違うことがあるから即決は危ないこともある。

 買った後により安いものを見つけてしまって後悔したことは一度や二度じゃない。


 売り値の相場については需要があるものは変動しない。

 黙っていてもどんどん売れていくからだ。

 むしろ供給が少ないものに関しては相場より高めに設定する商人もいる。


 あそこで露店を出しているメルチャなんかそうだな。

 魔人の斧の相場は確か120万ゼルだったはずだ。

 今のクロスホープにあれを仕入れる力はないから、元手を使って買ったんだろう。

 売り値が170万ゼルと強気な設定だけどメルチャは軽快な呼び込みをしている。


「このクリティカルがめっさ出やすい斧なら、物理防御力が高すぎる高難易度ダンジョンのマシンポリスでもらくちんやで! こいつに属性付与したり魔石をセットした上位職バーサーカーで、スティル6Vのレアドロ狙い安定なんや!」


 呼び込みが具体的すぎる。

 あいつ、さすが大手ギルドにいただけあってマシンポリスなんて知ってるのか。

 マシンポリスは機械系の魔物ばかりのダンジョンで、装備を工夫しないとまともにダメージを与えられない魔窟だ。


 物理防御力だけじゃなく魔法防御力も高いから、ウィザードなら安定というわけでもない。

 よりウィザードいらねってなるところなんだが工夫次第で実は前衛クラスよりダメージを出せるんだな、これが。

 もちろん高額な装備と魔石が必要になるから今のオレじゃ絶対に無理だけどな。


 いつかはクロスホープの皆で潜りたいものだな。

 メルチャが言う通り、あそこは金策に最適だ。

 そのメルチャの呼び込みが功を成したのか、廃装備を身に着けたバーサーカーの男がやってきた。

 売れたらまた皆でおいしいもの食べような。

 メルチャを視線から外してオレは再び歩き出した。

 

 露店を見て回っていると、同じアイテムなのに値段が上下しているものが多い。

 需要があったアイテムも需要と供給が安定すれば、売れにくくなる。

 そうなると売り手達は値下げ合戦を始めるわけだ。


 売り手としては厳しい状況だが、オレにとってはありがたい。

 オレは手持ちの金と相談して杖とローブ、頭装備を見て回った。

 スロット付き装備といってもピンキリだ。


 例えばオレが装備しているローブのスロットつきの値段は1万ゼル前後だけど、漆黒のローブなんかは100万ゼルを超える。

 これは闇耐性があるローブで特定のダンジョンでは役立つけど、今のオレには必要ない。

 オレがほしいのは古代魔術師のローブだ。


 ところが歩いているうちにオレは問題に直面した。

 ウィザード用の装備がなかなかないのだ。

 答えは単純で、需要がないクラスの装備を売る奴なんかそんなにいるわけがない。

 

 それでも探さないわけにはいかず、オレは根気よく歩いて回った。

 こういうのは大手ギルドの露店のほうが望みがあるはずだ。

 いらないドロップアイテムを在庫処分みたいな形で打っていることが多い。


 探しているとローゼンクロイツというギルド名が書かれた露店があった。

 紫色の髪をした女性が暇そうに本を片手に持って読んでいる。

 そこに並んでいたのは古代魔術師のローブとアークワンド、時空の帽子だ。


 しかも目を見張ったのはアークワンド、魔石スロットが三つある。

 実は同じ武器でも魔石スロットの数は違う。

 一つのものがほとんどだけどたまに二つや三つのものがある。


 価格を見てオレは愕然とした。

 それぞれ値段は5万ゼル、8万ゼル、2万ゼルだ。

 オレの手持ちはレイドクエストの報酬でもらった50万ゼル、余裕で買える。


「あら、ぼうや。このご時世にウィザードなんて珍しいわね」

「本当にこんな値段で売っていいのか? それぞれ数十万ゼルはしてもおかしくない」

「いつの話してるのよ。今はこんな値段でもさっぱり売れないわ」

「在庫処分ってところか。これを並べているローゼンクロイツってのはかなり強いギルドなんだな」


 女性が妖艶な笑みを浮かべた。

 この人自身も商人の上位クラスであるブラックスミスだ。

 素材さえあれば武器や防具を作ったり鍛えることができるから、メルチャに目指してほしいクラスでもある。


「ウィザードなんてやってる割にはそれなりに知識があるのね。ぼうや、Lvは?」

「【43】だ」

「……高いわね。一人でそこまでがんばったの?」

「最初はな。ありがたいことに今はギルドに所属している」

「ふーん……」


 女性がジロジロとオレを頭から足先まで見る。

 嫌な感じだな。初めてメルチャに会った時を思い出す。

 オレ自身の価値なんてどうでもいいけど、ウィザードをコケにするようならまた頭に血が昇るかもしれない。


 すると女性が立ち上がってオレの頬や首、肩をペタペタ触り始める。

 オレは思わず飛びのいてしまった。


「い、いきなりなにをしやがる」

「ごめんなさい。こういうの初めて?」

「初対面の人間にやることじゃないだろう」

「つい気になっちゃって……。いいわ、この三点セットを売ってあげる。10万ゼルでいいわよ」


 微妙な価格をついてきたな。

 確かに価格よりは安いけど、10万ゼルはレイドクエスト前のオレなら手が出なかった。

 それを知ってか知らずか、女性は悪戯っぽく笑ってオレの返答を待っている。


「買おう」

「ありがと。売れないと思っていたから助かっちゃった。あ、そうそう。今ならこの魔力のブローチもおまけしておくわ」

「魔力が上がるアクセサリか。無料でいいのか?」

「需要がないわけじゃないんだけど、そう珍しいものでもないからいいのよ。さ、首から下げてみて」


 女性が勝手にオレの首にブローチをかけた。

 何かと強引な奴だな。でもこれでスロット付きかつ優良装備が手に入った。


━━━━━━━━━━━━━━━━

名前:アークワンド

分類:杖

スロット数:3

効果:物理攻撃力+18 魔法攻撃力+24

   詠唱速度-10%、TP回復力+10%


名前:古代魔術師のローブ

分類:鎧

スロット数:1

効果:物理防御力+16 魔法防御力+26

   詠唱速度-5%、低確率で【バリアコートLv1】発動


名前:時空の帽子

分類:兜

効果:物理防御力+8

   敵の魔法防御力-5%、低確率で詠唱速度が0になる


名前:魔法のブローチ

分類:アクセサリ

スロット数:1

効果:魔力+3

━━━━━━━━━━━━━━━━


 一気に中級者向けの装備が買えてしまった。

 何がすごいかって物理防御力だけ見れば、バゼルが装備しているものよりも上だ。

 各装備の詠唱速度減少が重なって飛躍的に連射力が伸びるのがありがたい。


 TP回復力アップのおかげで経戦能力が高まったし、時空の帽子の敵の魔法防御減少もでかい。

 トラベルファンタジーは装備ゲーなんて言う人もいるくらいだから、今のオレならある程度の格上とも一人で渡り合えるだろうな。

 バリアコートはLv【1】でダメージ10%減少と、一見して強いけどオレは習得しなかった。


 Lv【1】でも一分しか持続しない上にダメージ減少が10%、Lv【10】でも二分で20%減少。

 スキルレベル上昇に伴う効果が見合わない。

 しかも発動中はTPがどんどん減るからTP管理が大変になる。


 保険として習得する人もいるにはいるけど、オレはプレイングスキルでカバーしていた。

 まぁ結局は好みなのは言うまでもない。


「似合ってるわよ」

「どうも。おかげで生まれ変わった気分だよ」

「じゃあもう少しスッキリしてみる?」

「意味はわからんが遠慮しておく」


 女性がポーズをとって抜群のスタイルをアピールしてきた。

 なんのことかわからんが深入りしてもろくなことにならない。

 後で人を山ほど殺してそうな顔をした男達が出てきたらたまったものじゃないからな。


「ぼうや、名前とギルドは?」

「ウィム。所属ギルドはクロスホープだ」

「クロスホープ? ふぅん……」


 また女性がオレに視線を這わせてきた。

 気になる反応だな。実は結構有名なギルドなのか?

 買い物が終わったからオレはとっととこの場から離れることにした。

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