表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/42

レイドクエストの結果

「皆さん。今回のレイドクエスト、お疲れ様でした。これでしばらくはゴブリン達もおとなしくなるでしょう」


 冒険者協会員がオレ達の労を労う。

 レイドクエストから帰ってきた翌日、冒険者協会でレイドクエストの清算が行われる。

 一晩が経ったとはいえ、参加者達の疲労はまだ消えてないみたいだ。

 大あくびをしていたり、だるそうにぼーっとテーブルに肘をついている冒険者がいる。


 ちらりとリクを見るとまだ少し落ち込んでいるな。

 自分のせいでオレに怪我をさせてしまったことを後悔しているようだ。

 昨日、リクが何度も謝ってきた。


「兄貴! オイラのせいで怪我させちゃってごめん!」

「気にするな……とは言わない。たっぷりと反省して次に活かしてくれ」

「でも……!」

「反省して次に同じ過ちを繰り返さなければ、それは立派な成長だ。皆、そうやって強くなっていくんだ。お前が強くなってくれたらオレはそれだけで嬉しいよ」


 なんて偉そうなことを言ったけど、オレは冒険者になったばかりの新米だ。

 そんなオレに言われたところで響くかはわからないけど、間違ったことを言ったつもりはない。

 いちいち他人の失敗を叱責したところで何も生まれない。


 責めてモチベーションを下げたところで、どんどん戦いのクオリティも下がるだけだ。

 嫌々やってうまくなる奴なんてほとんどいない。

 特にパーティプレイなんて、結局はお互いの理解だからな。


 嫌いな奴と一緒に戦ったところでやる気になるわけない。

 ゲームでも人間関係が最悪になってパーティプレイがうまくいかなくなったギルドを見てきた。

 一人、二人と離れるうちに自然消滅なんてこともある。


 どこまでいっても人と人との関わりだ。

 いくら強くなろうが最強のパーティメンバーだろうが、最大の敵は自分の中にある。

 それを踏まえた上で本人がやる気になってくれるような言葉で伝えたほうが遥かに建設的だろう。


 誰それがうまくやらなかったせいとか、人は敗因を何かに求めたがる。

 そうするのは楽だし実際そうかもしれない。

 だけどそんな暇があるなら少しでも自分を見つめ直したほうが成長につながるというものだ。


 昨夜のことを思い出しつつリクの肩を叩いた。

 リクがオレを無言で見上げる。


「後でいくらでも相談に乗るから今は話を聞こうな」

「ホントに?」


 これで元気になってくれたかはわからないけど気休めにはなったはずだ。

 それからレイドクエストの結果発表が始まった。

 協会員が紙を開いて文章を読み上げる。


「今回のゴブリン討伐の貢献度ランキングを発表します。順位に応じて報酬やアイテムが支給されるので、代表者は前へ出てください」


 皆で討伐できてやったーで終わらないのがレイドクエストだ。

 このランキング形式については賛否あるが、なければないでさぼった奴にも平等に報酬が分配されてしまう。

 個人以外はそれぞれパーティかギルドの代表者が呼ばれることになっている。

 クロスホープで言えばシェリナさんだ。


 順に下から発表されていって、各々が報酬を受け取る。

 下は個人での参加者という順当な結果だ。

 当たり前だけど個人での参加はやっぱり厳しい。


 ギルドやパーティは全員の活躍が貢献度に加算されるんだから、一人で太刀打ちできるわけがない。

 それでも決して少なくない報酬を受け取って満足しているようだ。

 欲しかったレア魔石が買えると喜んでいるんだから、参加した意味は十分にあったと思う。


「では2位の発表といきます! 二位は鉄人団!」

「あぁ!? なぜ我々が二位であるか!」

「あなた達の活躍も素晴らしかったですが、一位とは大きく貢献度が引き離されました」

「じゃ、じゃあ一位は……」

「一位はクロスホープです!」


 協会員の発表にオレは思わず頬が緩んでしまった。


「やった! やったよ! 兄貴のおかげだよ!」

「いや、全員の力だろう」

「よっしゃあああぁーーーーーーあああぁーーーーーーーーーーー!」


 いや、バゼルうるせぇよ。叫びすぎだろ。

 シェリナさんがホッとして、メルチャは親指をグッと立てる。

 フーイーは適度な距離を保ちながらも、爆発寸前みたいにプルプルと震えていた。

 はしゃいでいいんだぞ?


 シェリナさんが前に出て莫大な報酬とアイテムを受け取った。

 賞金600万ゼルやゴブリン達のドロップアイテムがオレ達の懐に入ってくるわけだ。

 特にゴブリンリーダーの魔石は大きい。


 市場価値は確かゲームだと5000万ゼルだったはずだ。

 売ってギルド資金にするのもよし。

 ギルドメンバーの誰かが使うのもよし。


 ちなみに効果は与ダメージ20%アップ+人型への与ダメージが更に20%アップだ。

 スロット枠は武器、実はめちゃくちゃ欲しい。

 欲しいけど皆の力で勝ち得たものだからワガママは言えないな。

 オレが素晴らしい魔石を前に内心涎を垂らしていると、鉄人団のブランタークがこっちをものすごい形相で睨んでいた。


「ひ、ひよっこギルドの分際で……! 大体あのウィザードはなにかおかしいのである!」

「ブランタークさん、うちのギルドもウィザードを入れましょう!」

「冗談ではないである! 今回はたまたま環境に恵まれただけである! それより今後のことで話すことがあるのである! 帰るである!」

「は、はい!」

「ユユリもボサッとするなである!」


 鉄人団がドタドタと歩いていなくなる。

 その際にヒーラーのユユリとかいう子がオレを何度も見てきた。

 あんなギルドにいて大丈夫か? だいぶ心配だな。


 環境に恵まれただけ、か。それもあるだろうな。

 だけどその環境にうまく合わせるのも腕の一つだ。

 あのギルドの悪いところは巷の情報を真に受けすぎなところだろう。


 ウィザードはかなり両極端なクラスと言える。

 火力マシマシ、紙装甲。それがウィザードだ。

 今回、リクを助けたのが原因といってもゴブリンヒーローの攻撃がかすっただけであのダメージだ。

 あと一歩でも深く踏み込んでいたら一撃で殺されていただろう。


 ハッキリ言って前衛クラスよりも繊細だ。

 攻撃を受けること自体が命取りになりかねないクラスだから、立ち位置を考えたり敵の動きを完全に知る必要がある。

 オレも咄嗟の行動とはいえ、ギリギリ死なないことを見越してリクを助けた。


「では皆さん、次のレイドクエストがあればぜひ参加してください! それでは!」


 協会員の宣言でお開きとなった。

 オレ達はたくさんの報酬をアジトに持ち帰ることになった。

 報酬はギルドの運営資金となり、オレ達の生活費なんかにもなる。


 シェリナさんはどう使うんだろうな。

 高ランクのギルドとなれば専属の料理人がいるけど、まさかいきなりそんなことはしないか。

ブックマーク、応援ありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたなら

ブックマーク登録と広告下にある★★★★★による応援をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ