VS ゴブリンリーダー
皆のおかげでゴブリン達の数がかなり減ってきた。
シェリナさんはともかく、バゼルが思ったより強い。
見た感じ、あいつはたぶん素早さ型のソードファイターだ。
シーフほどじゃないけど適度に動いて攻撃を回避するから、回復アイテムの消費が抑えられている。
その点で言えばリクは少々力不足に感じるけど、シーフに多くを求めてはいけない。
この戦いでも【盗む】でアイテムを仕入れてはメルチャに預けている。
ゴブリンのドロップアイテムは魔石含めて大したものじゃないけど、隙あらば金策の精神は必要だ。
そしてこのパーティでもっとも的確に動いているのがフーイーだった。
他人との距離がわからなくても前衛を頼ることは知っているようだ。
矢はそれぞれ炎の矢、氷の矢、雷の矢と揃えている。
弱点が違うゴブリンを一瞬で見分けて放つ矢を変えているんだから凄まじい。
ゲームでもここまでのプレイングスキルを持った奴はなかなかいなかった。
アーチャーの利点は他のクラスと違って簡単に属性攻撃ができる点だ。
それを遠距離からヒュンヒュン飛ばせるんだから、オレも負けてられない。
手数はあっちが上でも、威力はこっちが上だからな。
「アイシクルッ!」
うまくゴブリンが集まったところを見計らって【アイシクルLv1】を放つ。
誰かが攻撃して弱った個体もまとめて倒せるから、範囲攻撃は癖になる。
この間、鉄人団はポーションが完全に尽きたようでほとんど戦いに参加できていない。
呼吸を荒げながら、近づいてくるゴブリンをちまちま処理しているだけだ。
ヒーラーの子のTPもなかなか回復せず、それまでは待ちの状態だな。
「ユユリ! まだTPが回復しないであるか!」
「ごめんなさいっ!」
「ちゃんと魔力にステータスを振っているであるか!」
「え、あ、は、はい……」
なんでちょっと戸惑った?
ギルドマスターがヒーラーのステータスや特性を理解せず、こき使うだけか。
大体一人のヒーラーに対して人数が多すぎなんだよ。
上位クラスのプリーストならまだしもな。
あいつらよりむしろ単独で参加している冒険者達のほうが強いまである。
ソロで活動して生き残っている時点で弱いわけがないか。
反面、パーティプレイだとどうしても誰かに甘えてしまう心があるから難しい。
オレもTP管理を厳しく行っているつもりだったけど、この数じゃどうしても尽きる。
下位クラスのウィザードでこの数はTPがもたないな。オレはメルチャからマナポーションを貰っていた。
「ほな、がんばってなー!」
「おう、ありがとな」
もし有料だったら張り倒していたところだ。
オレはマナポーションをこっそり一つ分多くもらっておいた。
ユユリという女の子に後ろから近づく。
「おい、これを飲め」
「はいひぃ!?」
「置いておくぞ。じゃあな」
「あ……」
鉄人団のアホどもに見つかると厄介だから最低限の用事だけ済ませて離れた。
アホどもは気づいてなくて、他の皆が戦う様子を呆然として見ている。
まったくしょうがない奴らだ。
オレはまた持ち場に戻って戦いを再開した。
ゴブリンを一匹討伐したところでようやく待っていたクラスLvアップだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
クラスLvが【23】 → 【24】に上がった!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
よし、このSPでオレは【ポイズンLv1】を習得した。
なんとか間に合ったみたいだな。
本当は事前に上げておけばよかったな。
道中で上がると思ったが、ポイズンマタンゴのクラス経験値が思ったより低くて計算が狂った。
「来たな」
「ようやくお出ましか」
ゴブリン村の奥から一際大きい個体が出てきた。
両手に斧を持ったいかついゴブリンがギロリとオレ達を見渡す。
その周囲にはゴブリンが十匹ほどまとわりついていた。
ボスモンスターの厄介な点の一つはあの取り巻きにある。
ただでさえ強いのに容赦なく数の暴力で攻めてくるんだからな。
━━━━━━━━━━━━━━━━
ゴブリンリーダー
Lv :54
HP :3450
MP :350
使用スキル:【マイトフォース】【クイックアックス】【グランドアタック】【スタン攻撃】
弱点:氷
━━━━━━━━━━━━━━━━
さすがボス、桁違いのHPだ。
この中であいつの攻撃に耐えられる前衛クラスはシェリナさんくらいか。
オレとフーイーで接近されるまで極力削るしかない。
取り巻きの中にいるゴブリンアーチャーの始末が最優先事項だ。
「ファイアボールッ!」
オレが【ファイアボールLv10】を放ち、フーイーが弓スキルの【ダブルショット】で確実にゴブリンアーチャーを仕留める。
範囲攻撃の【アイシクルLv1】じゃゴブリンアーチャーを倒せないからだ。
それでも数の暴力は正義で、オレもまったく気が抜けない。
今のオレじゃ一発でも矢に当たったら半分以上のHPが削られてしまうからかなり危険だ。
遠距離攻撃持ちをオレ達が削りつつ、バゼルと他の前衛クラス達が一斉に向った。
シェリナさんの【レボリューションスピア】がかなり頼もしい。
オレは取り巻きの数と距離を真剣に見る。
少しずつゴブリンリーダーに接近しつつ、きつそうな前衛クラスの前にいるゴブリンを仕留めた。
よし、この距離なら射程内だな。
「ポイズン!」
ゴブリンリーダーに【ポイズンLv1】をかけた。
ゴブリンリーダーが呻いて、顔色が変化し始める。
残念ながら暗闇には耐性を持っているけど、毒耐性がほぼない。
これで時間経過と共にあいつはHPをすり減らすはずだ。
更にこちらの与えるダメージが増加するから、討伐速度が加速的に上がる。
「ど、毒だとぉ!?」
「あんなもん有りかよ!」
「盲点だったぜ! それが効くならもっと楽に討伐できただろうに!」
前衛クラス達が驚いている。
皆、状態異常を軽視している傾向にあるな。
レベルを上げて物理で殴るのもいいが、変化球を交えないときつい場面が多々ある。
さて、あいつの弱点は氷だけど攻撃は【ファイアボールLv10】だ。
【アイシクルLv1】じゃ【術式研究Lv7】をもってしても、大したダメージにはならない。
火輪の耳飾りのおかげで威力が上がっているから、十分すぎるダメージソースになるだろう。
面白そうと思っていただけたら
広告下にある★★★★★による応援とブックマーク登録をお願いします!