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クロスホープ

 同じフェルムの森といっても、戦いの舞台はリクと出会った場所からだいぶ離れている。

 今回はフェルムの森北西側の奥地を目指す。

 東側と違ってここにはポイズンキャタピラーが生息していない。


 ちらほらとゴブリンが徘徊している他、植物の魔物であるトゥースフラワーとポイズンマタンゴがいる。

 トゥースフラワーは自生した場所から動けず、こちらから近づかなければ問題はない。

 討伐するにしてもそのLvは【43】なので近接戦で挑むのは無謀だ。


 オレも当初は毒芋虫よりこいつを狩ろうかと思っていたが、稀に反撃で魔法を放ってくるのが危ない。

 ドロップアイテムも大しておいしくないので誰もがスルーするだろう。

 

 ポイズンマタンゴは軽快に移動してくる上に毒攻撃を持つ。

 毒攻撃は怖いけど、きちんと備えた前衛クラスなら討伐に苦労はしないだろう。

 逆にオレみたいなウィザードにとって、こういう足が速い魔物は要注意だ。


 とっとことっとこと歩く様は愛らしさもあるけど、実力はかわいくない。

 道中、すでに何人か絡まれて毒をくらっている冒険者が何人かいた。

 あいつら、驚いたことにグリーンポーションを持っていない。

 ところがそんな奴らに近づくのがメルチャだ。


「大変でんなー。グリーンポーションありまっせ」

「す、すまねぇ。助かる」

「ほな、一つ500ゼルでどうや?」

「たっけぇ! ぼったくりだろ!」

「あー、じゃあ毒殺待ったなしやなー」

「わかった! 払う! 払うから!」


 え、えげつねぇ。

 グリーンポーションは店売りでも一つ200ゼルがいいところだ。

 これでも決して安くないから、アルケミストがいるギルドではグリーンハーブから作り上げる。

 かなりあこぎな商売をやっているけど、元はと言えば備えてなかったあいつら悪い。


 メルチャがニシシと笑いながら支払ってもらった金の勘定をしている。

 ギルド資金が溜まるのはいいことだ。

 味方内にいてヒヤヒヤするけど、ああいう商魂逞しさがないと上には上がれない。

 特にクロスホープはまだまだ駆け出しだからな。


 メルチャの商人は他のクラスと違ってアイテムを大量に持てる。

 戦い向きじゃないけど補給物資の運搬要員としてギルドに貢献してくれるのだ。

 オレみたいな貧弱なウィザードじゃあんな風にはいかない。


「まったくよ。メルチャのせいで恨まれたりしなきゃいいけどな」

「バゼル、心配ない。感謝こそされど、恨まれる要因なんてないだろ。それにこれに懲りてあいつらも準備不足を学ぶ」

「まぁそうだけどよ。あいつ、オレにツヴァイハンダーを買ってきてくれた時は5000ゼルで手に入れたんだよ。どんな手段を使ったんだか……」

「相場は確か10000ゼル以上だったよな。そりゃ怖いわ」


 決して珍しい武器じゃないとはいえ、どこでそんな値段で買ったんだ。

 値切り交渉が抜群にうまいのかもしれない。

 ちなみにツヴァイハンダーはキッチリ有料みたいで、8000ゼル支払ったらしい。

 それでも相場よりは安く買えたことにはなるんだが。


「オイラが使ってるアイアンナイフも安く売ってもらったんだよね」

「リクのアイアンナイフってどこにでも売ってるよな。どうやって差額で儲けたんだか」

「商談ならいつでも乗るで!」

「うぉっ!」


 急に割って入ってきやがった。アサシンか、こいつは。

 ニッコニコして隙あらばオレにも売りつけようって顔だな。

 安く買えるなら望むところだ。


 しかし世の中、うまくできているもので。

 調子に乗ったメルチャの後ろに毒キノコが迫っていた。


━━━━━━━━━━━━━━━━

ポイズンマタンゴ

Lv  :18

HP  :132

MP  :0

使用スキル:【毒攻撃】

弱点:火

━━━━━━━━━━━━━━━━


「みぎゃーー! 絡まれたぁ! 助けてぇ!」

「いや、お前も攻撃しろよ」

「マネースマッシュは金を使うんや! 節約したいんやぁー!」

「めんどくせぇな。毒くらったらグリーンポーションよこせよ」


 無事、【ファイアボールLv10】で毒キノコを処理すると手を握ってお礼を言われた。

 メルチャの言う通り、【マネースマッシュ】はソードファイターの【ヘビィスラッシュ】の下位互換のくせして金が減る。

 これでも戦闘手段に乏しい商人にとってはありがたいスキルだ。


「あー、もうけったくそ悪いキノコやなぁ。はよゴブリンどものところにつかんかい」

「到着したらお前も少なからず戦えよ。ギルドの貢献度のこともあるし、弱いゴブリンなら商人でも倒せる」

「うちかてさぼりたいわけやないで。安心してや」

「だといいけどな。それに比べてフーイーはよくがんばっているな」


 そんなやり取りをしている横でフーイーがちらほらいるゴブリンを倒していた。

 一見して淡々と撃っているようだけど、ちゃんと敵との距離を計算している。

 接近される前にギリギリの距離で仕留めていた。


「あいつ、すごいな。敵の速さを完全に計算に入れている」

「あの子はやり手やでー。前はどこだかのギルドにおったらしいんやけどな」

「あいつもシェリナさんと同じか」

「というかクロスホープはうち含めて、みーんなどこに行っても馴染めなかった連中やで。そんなのをシェリナさんが拾ってギルドを立ち上げたんや」


 それは意外だ、と思ったけどしっくりくる。

 オレが言えた口じゃないけど、やっぱり変わり者の集まりだったんだな。

 ということはバゼルもチンピラすぎてどこにもなじめなかったのか?


「いや、なんでオレを見てんだよ」

「別に」

「そうだよ。前のギルドで気に入らねぇギルドマスターをぶん殴ったせいで追い出されたんだよ」

「それは自業自得だな」


 まったくもって意外性がない理由だったな。

 そりゃオレにも絡むわ。

 バゼルはそうと、リクもそうなのか?


 リクはせっせとドロップアイテムと盗むを合わせて【毒キノコの胞子】を集めている。

 あれはアサシンのスキルで必須だから、売ってもいいしシーフから上位クラスになった時に自分で使ってもいい。

 メルチャと違ってリクは高い素早さを活かして、多少なら格上を狩ることができる。


 オレがアドバイスをしたおかげで、少し力のパラメータに振ったおかげで安定して戦えるようになったな。

 それまでは素早さしか振ってなかったからな、あいつ。

 歩き進むといつの間にか隣にシェリナさんがいた。


「皆、何かしらの理由で居場所を失っている。だけど私は見捨てない。全員に未来があると信じている」

「オレを含めて、か?」

「当然だ。それにさっきのポイズンマタンゴへの魔法でより確信した。君は絶対にギルドの最大火力になるだろう」

「ウィザードが不遇の中、嬉しい評価だな。ぜひ期待に応えたい」


 訳ありの人材を集めていた中、仲間に死なれたんだからそりゃつらいだろう。

 効率重視の廃人ギルドなんかは役立たずはすぐに追い出される。

 もしくはキャラの作り直しなんかを命じられて抜けた奴もいた。

 もはや仕事の領域だったな。


 まぁ当番制で狩場で番を張って、目当ての魔物が湧いたらすぐに刈っているような連中だからな。

 オレはそういうのに嫌気が差したから抜けたんだったか。

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