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レイドクエスト VSゴブリン

 レイドクエストの日がやってきた。

 レイドクエストはゲームでも定期的、または不定期にやっていたイベントだった。

 この世界では当たり前だけど、問題が起きればレイドクエストが発生する。


 今回、オレ達が参加するのは大量発生したゴブリンのレイドクエストだ。

 レイドクエスト全体で見ればそこまで難しくない。

 ギルドの戦力を考えた上でシェリナさんが参加を決断したんだろう。


 とはいえ、ゴブリンを甘く見てはいけない。

 ゲームでのゴブリンは最弱のイメージが根強いが、トラベルファンタジーではそこまで弱くない。

 少なくとも駆け出しのノービスや下位クラスになり立てじゃ無理だ。


 それを知ってか知らずか、中には「そんな装備で大丈夫か?」と言いたくなる冒険者がちらほらいる。

 ゲームではレベル制限で参加の有無が決められていたけど、この世界ではそうじゃないらしい。

 そういう人達の大半が個人での参加だから、死んでも自己責任ということなのか?


 討伐隊の数は総勢18人。

 クロスホープの面々はこの日のためにレベリングをしたらしく、リクもそれなりに強くなっていた。

 Lvは【25】、少なくともゴブリン相手には不足がないはずだ。


 参加ギルドはクロスホープの他に【鉄人団】という前衛クラスでガッチガチに固めたギルドだ。

 その名の通り、全身鎧を着込んだソードファイターやアーマーナイトが多い。

 全身鎧は強力な防具だけど、他の足装備や頭装備なんかの枠を取るから一長一短だ。

 足装備なんかに魔石を装着したい場合が割とあるからな。


 参加者の中にはオレを知ってる冒険者がいるようだ。

 あの落ち武者みたいな頭をした中年は見たことあるな。

 バゼルと一緒になってオレをバカにしてきて、最後まで謝らなかった奴だ。


「おい、あそこにいるぜ。オレが言ってたウィザードがよ」

「思ったよりガキだな。あんなのがカエントカゲを討伐したって?」

「おうよ。誰かに討伐してもらったくせに、ドロップアイテムだけ持ってきてイキってたんだよ。笑えるよな」

「カエントカゲは多くのパーティを壊滅させてるってのによ。俺はそういうウソをつく奴が一番嫌いだわ」


 おーおー、好き勝手言いなさる。

 さすが謝罪しなかっただけはあるな。

 それどころか知り合いにまでウソを吹いてイキってやがる。


 さっそく近づいて文句を言ってやりたいが、ギルドに入って早々トラブルを起こすわけにはいかない。

 オレが聞こえない振りをしていると、落ち武者男の仲間がやってきた。

 おいおい、オレが相手にしてやらないって決めたのに何事だよ。


「お前、カエントカゲを一人で討伐したとか大ホラ吹いたんだってな」

「誰のことだ?」

「お前だよ、お前。ウィザードなんて一、二発でも攻撃されたらすぐ死ぬんだ。それなのによくもまぁ大口を叩けたもんだ」

「お前もゴブリンに囲まれたら秒で死にそうだけどな。知ってるか? あいつらリンクするんだぜ」

「あ、あぁ!?」


 あーあ、結局やっちまった。

 どうもオレはウィザードをバカにされると黙ってられないらしいな。

 沸点が低いのはお互い様だけど、自分から絡んできておいてキレるこいつもどうかと思う。

 どうしたものかと思っているとバゼルを初めとして、シェリナさん達がオレを庇うようにして立った。


「おい、デッセイ。オレの仲間を侮辱するってんなら容赦しねぇぜ」

「バ、バゼル! お前だってついこの前までバカにしてたじゃねえか!」

「オレだって学ぶんだよ。いつまでも変わらないお前らと違ってな」

「なんだとォ!」


 バゼル、お前ってやっぱりいい奴だったんだな。

 オレに絡んできた時のお前は何だったんだ?

 続いてシェリナさんとリクが男の前に威圧するようにして立つ。


「ウィムをバカにするということは当ギルドへの侮辱と受け取ろう」

「そーだそーだ! そんなネチっこい性格だからハゲるんだ!」

「なっ! オ、オレはまだハゲてねぇ! ゲーバンと一緒にすんな!」


 ゲーバンというのはあの落ち武者男のことだろう。

 仲間から矛先を向けられたものだから、ぷるぷると怒りで震えている。

 他人の身体的特徴をいじるのは感心しないけど、それを言うならクラス差別だって同じだ。

 二人とも、オレの代わりにこんなにも怒ってくれるなんてな。


「おたくら、鉄人団やろー? ギルドの評判って広がるの早いで。ほれ、周り見てみ?」

「あぁ!? あ……」


 メルチャも続いて応戦してくれた。シェリナさんに隠れながら。


 デッセイが我に返ったように見渡した。

 めっちゃヒソヒソされてるな。これはきつい。

 そこで何を思ったのか、ゲーバンは自分のギルドマスターに泣きつきにいったようだ。

 

 話を聞いたギルドマスターがのっしのしとやってくる。

 その際にちらっと見えたけど、後ろにヒーラーがいたな。

 むさ苦しい男達の中に咲く一輪の花と言えるほど似つかわしくない。


「先程から弱小ギルドがずいぶんと調子に乗っているであるな! シェリナ!」

「ブルターク、ギルドメンバーの躾くらい徹底してもらいたいものだな」

「ふん! 元はと言えばウィザードなんぞを加入させたお前が悪いのである! ウィザードなんぞ、前衛クラスの火力があれば必要ないのである!」

「果たしてどうかな? ゴブリン程度ならお前達でもどうにかなるだろうけどな」


 シェリナさんも煽る煽る。

 ブルタークとかいう鉄人団のギルドマスターが顔真っ赤だ。

 ここで荒っぽいことをしたら、あそこにいる主催者に睨まれる。


 今回のレイドクエストの主催者は冒険者協会の支部長だ。

 そろそろいいかなと言わんばかりに支部長がコホンと咳ばらいをした。


「えー、この度はレイドクエストに参加いただいて大変感謝します。知っての通りゴブリンは繁殖力が強く、放っておくと軍隊並みの規模になることがあります。国にばかり頼ってはいられない昨今、我々の身は我々が守ろうということでゴブリン討伐をお願いした次第です」


 国を守るのは国の役目だろうと前世のオレなら悪態をついただろうな。

 この世界に魔物という怪物が溢れていて、尚且つ人手がいくらあっても足りない状況だ。

 小さい村なんかは自衛するしかない。


 さすがに命がかかっているのに守られることばかり考えている奴はいないということか。

 被害が出た後で国に悪態をついたところで何にもならないからな。

 冒険者協会は各地の魔物による脅威を把握しつつ、こうしてきちんと討伐依頼を出す。


 オレ達はその中で貢献すればいい。

 【貢献度】が上がれば分配される報酬の割合も高くなる上にGPギルドポイントも多く貰える。

 クロスホープの二階建てのアジトもGPで建てたものだろう。

 GPはギルドメンバーが討伐を行えば少しずつ入手できるけど、レイドクエストやGVGのほうが遥かに効率がいい。


 そう考えると、あのメンバーで二階建てまで建てられたのはなかなかすごいな。

 とはいえクロスホープはEクラスギルド、まだまだ発展途上だ。

 S、A、B、C、D、Eの序列でクロスホープはまだ一番下のクラスだな。

 Aクラスのギルドとなると要塞みたいなギルド拠点を用意していることもある。


 それに高クラスとなればギルドダンジョンを利用できて、レアアイテムを入手し放題だ。

 つまりギルドに所属しない理由はない。


「ゴブリン村はフェルムの森の奥地にあります。ゴブリンリーダーを討伐すれば統率が乱れてゴブリン達は一気に力を失うでしょう」

「ふん! ゴブリンキングはいないであるか! ならば児戯であるな!」


 黙って話を聞いていればいいものを、ブランタークがいちいち存在をアピールする。

 あいつらのギルドクラスが気になるな。装備なんかを見た感じ、Dクラスっぽい。

 単純に見ればゴブリンを相手取るのに問題ないけど、あいつらはリンクの存在を知ってるのか?


 それにゴブリンと一言で言っても割と種別によって強さにばらつきがある。

 特に主催者が言っていたゴブリンリーダーは確か【Lv54】、舐めてかかっていい相手じゃない。

 まぁあそこまで粋がるんだからそんなことは当然知っているか。


「シェリナ! 貴様らの出番はないと思うのである! ゴブリン討伐は我々鉄人団がすべて請け負う!」

「大いに期待しているぞ」

「ウィザードなんぞを飼って余裕を見せている場合でないことを思い知るであるぞ!」

「飼って……?」


 オレがブランタークを睨むと、挑発するかのようにフンと笑う。

 勘違いもここまでくるとおめでたい。

 他人を見下してばかりいるせいで周りが見えなくならないといいな。

 特にゴブリン相手ではな。

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