8話
この物語は、日本を舞台に作られておりますが、並行世界としての日本という設定になります。
現実世界とは、似て非なるものとして作品をお楽しみ下さい。
また、この作品に登場する人物や、国名、地名、政党名、政治内容など全てフィクションです。
南国諸島…。日本の最南端に位置する島々を指す。この地域は、他国との国境を呈する地域である。この地域においては、自国領土の解釈が他国と不一致である問題を抱えている。歴史上、そして国際ルール上においても日本の領土であるが、現在紛争に発展するような危機に見舞われていた…。
日本の領海には、毎日の様にツーゴルの海上警察船が侵入し、自国の領土、領海であることを主張している。
この地域を漁場にしている漁師達は、数年前よりツーゴルの海上警察船から圧力をかけられており、漁も満足に出来ない状況にあった。そこで、現地住民からの要請を受け、政府より海上保安庁へ対応命令が入った。近年、海上保安船が最前線でツーゴルの対応しており、隊員にもかなりの負担がかかっていた…。
「未瑠叶、JAWTに要請したい案件がある。」
「はい。お伺いしましょう。」
「南国諸島の接続水域に、連日ツーゴルの公船が表れて領海侵犯を繰り返している。現在、海上保安庁が対応しているが、毎日のように侵入しては、挑発行為を繰り返しているようだ。防衛省としては、外務省を通じてツーゴルには抗議を続けているが、向こうは向こうで自国の領海だと主張していてな。こちらも苦慮している所なんだ。日本国憲法に則ってこちらも行動している以上、領海侵犯として攻撃する事もできず、手をこまねいているのが現状であるのだ。」
「なるほど…。では、私はツーゴルが領海に入ってこないように対応すればいい。ということでしょうか?」
「ああ。日本国としては、大っぴらにツーゴルを攻撃すれば大問題になるからな。正直、日本国とは関係無しにツーゴルが諦める状況が望ましい訳だ。」
「承知しました。ですが、状況によっては戦闘になる可能性は否定できません。」
「確かにそうだな。まあ、これは未瑠叶の能力を信頼しての依頼なのだが…その、お前の身に危険があるのは困るな。何と言うか…矛盾しているのは承知しているのだかな…。」
(ああ。父さんは、防衛大臣という立場と、私の父という立場で苦しんでいる訳ですね。父さんは、本当に立派ですよ。)
「父さん。大丈夫ですよ。私は最強の賢者ですので…。なるべく穏便に済ませるように頑張ってみます。」
「宜しく頼む。ああ。それから…今後、ジャウトを国の秘密機関として受け入れて貰えるべく、現在対応中だ。決して未瑠叶が不利益になることがないように責任もってやらせて貰う。」
「はい。そちらの件も承知しました。では、南国諸島の対応に動きます。」
私は、父の要望を引き受けることにした…。
ーーー
(北嶺邸 自室)
「さて、今回は少々準備が必要ですね。では、最初は船の造り方でも調べましょうか。転移魔法"テレポート"」
Shun!
(綺羅島 海上保安庁施設)
私がやって来たのは、南国諸島の一つ、綺羅島である。そして、停泊中の海上保安船「かざくまるま」を見に来ていた。この「かざぐるま」は、海上保安庁の巡視船の一つで、6000トン級の大型の船である。私は、かざぐるまが停泊している場所の近くへ移動した。今回の目的は、巡視船「かざぐるま」の情報収集の為であった。
私は、かざぐるまに近づいて情報魔法"解析"を行った。この情報魔法"解析"は、対象の構造的な情報を深く調べる際に行う魔法である。素材から始まり、部品や建造技術に到るまで、様々な情報を収集した。私は、大賢者のジョブ称号を持っている為に、尋常ではない記憶能力を有している。私は、解析によって得た膨大な情報を、脳内に確実に記憶していた。
私は、情報収集が終了したので、再び自室へと帰ることにした。綺羅島での滞在時間は、僅か5分であった。
ーー
(北嶺邸 自室)
綺羅島での情報収集を終えて、自室に帰って来た。今度は持ち帰った情報を元に、私専用の巡視船を造ろうと思う。しかし、造るにしても、流石にこの部屋で行うには手狭なので、時空魔法"準空間"を使用して、準空間内で作業を行うことにする。
私は、自室から繋がる準空間を作り出した。私の魔導生命体の待機スペースだったり、ノコーシュの領空内にスパレを設置する際などに用いたが、今回は別の用途となる。準空間は、魔力使用量の調整でいくらでも広い空間にすることができるので、巡視船を造っても問題ない程度の広さに作った。
その後、先程持ち帰った情報を元にして、巡視船の建造に入る。巡視船の建造には、生産魔法"イミテーション"を使用する。イミテーションは、成功するのに条件があるものの、対象の物体と同じ物を瞬時に作り上げてしまう、チートな魔法なのである。
条件は、作りたい物体の構造を理解し、魔法発動の際に具体的なイメージが必要であること。そして、無から有にはできないので、物体を構成する素材を用意することである。素材は、現物とは異なる場合でも作成可能であるが、素材の善し悪しで完成品の品質が変わってしまうので注意が必要である。
私は、巡視船に使う素材を"魔鉄鋼"に決めた。魔鉄鋼は、ネオラーナに存在しており、この世界には存在しない金属である。賢者時代に、異空庫に大量に保管しておいたので、必要なだけ使うつもりである。魔鉄鋼は、魔素の伝導率が高く、外部の魔素を取り込んで硬貨する性質がある。大変頑丈で、質量が軽いのが特徴の金属なので、今回の巡視船建造には持ってこいの素材である。
いよいよ、巡視船建造に取り掛かる。まずは、生産魔法"イミテーション"を発動する。この魔法は、細部に渡る仕組みまでイメージしていくので、完成までは、かなりの時間を有する。しかし、大賢者のスキル"思考加速"の助けを得て、発動より数秒で巡視船が出来上がった。しかし、この巡視船は、重油によるエネルギーが必要になるので、動力部だけは、エンジンより魔動力に変更すべく改造を施すことにしよう。
ここで使う魔法は、生産魔法"クリエイト"である。クリエイトは、イメージによって新たに物を作り上げたり、加工したりすることができる。私は、生産魔法"クリエイト"を使用して魔力によって船か動くように作り替えた。動力に関しては、この世界の大気に豊富に存在している、"魔素"を利用する。エネルギーの補充が不要なのは、最大の利点である。仕上げに、様々な役割を持つ魔法を幾つか付与し、巡視船の建造は完成した。私は、折角なので同様の巡視船を五つ建造して、そのまま異空庫へと保管しておいた。
「やたー!巡視船を完成させました。今後は、自動化していきたいので、魔王城で使用していた、他の魔導生命体の方々も連れて来ましょう。」
「おぉ。創造主だ。あれ?何か雰囲気変わりやがったか?」
「クレレ、貴方も呼ばれたの?お父様、ご機嫌よう。」
「主。きた。」
私は、今度のミッションの為に、新たに3体の魔導生命体をこちらに連れて来た。全員がメイド服の少女達である。かつて彼女達には、魔王城のメイドとして、城内の管理を任せていた。青髪ショートヘア少女は、クレレ。ピンク色のツインテール少女はキキ。黒髪のロングストレート少女は、カナ。
「やあ、みんな。新しい世界に転生して、この姿になったのですよ。また、皆さんの協力が必要になりました。よろしくお願いしますね。」
「了解だぜ!」
「勿論ですわ。」
「ん。」
私は、新たな仲間を連れて父から頼まれたミッションを開始することにした…。
ーーーーー
(南国諸島 接続水域)
「ここは、日本の領海である。即刻退去して下さい。」
海上保安庁の巡視船「かみぐも」は、ツーゴルの公船に対して対応している様である。ツーゴルの公船は、ツーゴル海上警察船と記載されており、5隻が領海内に侵入していた。この所、領海侵入する船が増えており、海上保安庁も対応が大変になっているそうである。
Pan!Pan!
突然、発砲音が聞こえて来た!
私は、この区域の上空で、隠蔽魔法"インビジブル"によって姿を隠して様子を伺っていた。しかし、ツーゴル側の発砲によって、どうやら海上保安庁の隊員が怪我を負ってしまった様なのである。
「うわー!撃たれた!」
「おい!岸本。大丈夫か!?おい、止血するぞ。救急セット準備しろ!」
「ちょっと、失礼致します。負傷されたのは、右肩だけの様ですね。これならば…。」
「うわぁ!ちょっとアンタ!何処から現れたんだ?それに何者だ!」
「魅了魔法"チャーム"」
「今から治療するので、少し静かにしていて下さいね。」
「承知しました…。」
「宜しい。では、治療します。回復魔法"キュア"」
「痛たた…っくない?治った?嘘だろ?あっ、傷が塞がってる。」
「貴方は一体何をされたのですか?」
「私は、防衛省の依頼で、この地域の治安を守りにきました。あっ、名前は北嶺 未瑠叶と申します。ああ。でも…しばらくすると、私の事や、さっきあった事は、忘れて仕舞われると思いますが…。つまり、交代するので安心して基地にお帰り下さい。」
「範囲をこの巡視船内全域に変更します。魅了魔法"部分チャーム"」
「皆さん。これより、接続地域の治安を我々が引き継ぎます。あなた方は、安心して基地にお帰り下さい。」
「承知しました。全員、交代の為、これから基地に帰還する。任務完了の報告の上、帰還。」
「了解。帰還します。」
海上保安庁の巡視船は、私の魔法により帰還することになった。巡視船の全隊員さんに対しては、記憶操作魔法"イレース"によって、私と接触する前後の記憶を消去させて頂いた。
また、接続地域による他国による領海侵入の対応については、今後は防衛省の方で対応する事が決まった。その件に関しては、大臣の父から海上保安庁へ連絡が入っており、実際には、JAWTが引き継ぐ事が決定した。
JAWTは、現在その存在が明かされない様、魔法を使いながら秘密裏に活動中である。今も父が必死に動いてくれており、政府の秘密機関としてJAWTが認められる可能性が急浮上しているらしい。そのうち政府関係者との謁見があるかも知れない。
「さてと、諸君。そろそろ仕事に戻りましょうか。」
「創造主。了解だぜ。」
「かしこまりました。お父様。」
「ん。わかった。」
私は、自分で新たに造った巡視船を異空庫から取り出して、海上に初侵水させた。この新たな巡視船は、名前を「ネオラーナ」と名付けることにした。前世に生きていたネオラーナを忘れずに、この世界で頑張るという意味で名付けた。
巡視船「ネオラーナ」は、ツーゴルの公船の進路を塞ぐように停止した。私達は、これからツーゴルの公船と相対することになる。果たして、安全に撤退を促すことができるだろうか…。
ーーー to be continued ーーー
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