3話
この物語は、日本を舞台に作られておりますが、並行世界としての日本という設定になります。
現実世界とは、似て非なるものとして作品をお楽しみ下さい。
また、この作品に登場する人物や、国名、地名、政党名、政治内容など全てフィクションです。
早朝三時。スマートフォンから警告音が聞こえて目を覚ました。午前0時まで仕事をしていた身としては、迷惑極まりない。
私は、スマートフォンを開いて内容を確認する。JJアラートの警報であった。どこかの国から日本近海に向けて、弾道ミサイルが発射されたようだ。最近では、音速を超える速度に到達する極音速弾道ミサイルなる物も作られており、父は年々脅威が高まっていると嘆いていた。
迎撃ミサイルで撃ち落とせばいいのでは?と簡単に思ってしまうが、戦闘機より遥かに速い速度で飛んでいるミサイルを撃ち落とすのは容易なことではない。ましてや、飽和攻撃に対して想定されていない迎撃システムなので、今戦争が起きれば迎撃できずに国内に何発も着弾してしまうだろう。
(日本近郊は、危険な国ばかりですねぇ…。)
私は、軍事用のレーダーを利用して、魔法によって探知できるようなシステムを作り上げだが、警告音などで他国接近を知らせる様にはしていない。勿論、魔法を使えば他国接近の通知を知らせることは可能である。しかし、他国接近の事例は、毎日多数存在しており、とても一人で対処しきれるものではない。
(私にできることにも限りがありますからね。)
私が転生した日本や、この世界は、とても凄い所である。魔法文明は存在せず、科学文明が主流となっているが、魔法を持たない者でも遠方から好きな場所を攻撃できてしまう兵器がある。また、テレポートやフライの魔法が使えなくても、飛行機や自動車、新幹線などを使えば素早く移動できてしまう。そして、魔素ではなく、電気が世の中の中心のエネルギーになっており、魔道具の代わりに家電が生活を支えていた。
(しかし、この科学の世界でも、魔法の世界と同様に、紛争の火種は絶えないものですね…。)
この世界を見渡せば、大小の差はあるにせよ、どこかしらで紛争は起こっている。話し合いなどの外交的努力によって解決させることが一番であるが、それで済まない場合があることは、歴史が証明している。
日本においても例外ではない。今では、ミサイルや、戦闘機、軍用艦に潜水艦。ドローン兵器に無人機など多岐にわたる攻撃手段が存在し、世界の何処かで被害を受けて苦しんでいる人がいる。日本は、平和で豊かな国ではあるが、心無い国からの攻撃で、今の平和が破壊されるかも知れないのだ。
そんな中でも、私は私なりに今できることをしよう。父も国益を守る為に、議員の立場で動いてくれているようだ。
その最中、ある知らせが私の元に届いた…。ララからのメールである。ララは、大沢三郎議員の不正証拠を掴む際、接触したツーゴルの諜報員である。
私は、ララに接触して情報を聞き出した後、ある魔法を使い、彼女にお使いをお願いしていた。魔法は、魅了魔法"部分チャーム"である。この魔法は、相手を魅了させて従わせる効果のある"チャーム"の改良魔法である。
部分チャームは、完成服従のチャームとは少々異なる。ある特定の指示に関してのみ効果を発揮し、それ以外の事象に関しては影響を及ぼさない。そして、指示が達成されると、魔法の効果と、発動中に行動していた際の記憶のみが消失される。術者にとっては、放置して結果を待つだけなので、非常に使い勝手の良い魔法と言えよう。
今回、部分チャームで指示を出したのは、二点だけである。一点目は、ツーゴルの特殊情報局へ行き、日本に関する情報を内密に収集すること。具体的には、日本への軍事侵攻に関する情報である。もう一点は、収集した情報の報告である。報告には、未瑠叶君の職業スキルのノウハウを利用し、個人が絶対に特定できないメールを使用する。諜報員を使って、逆スパイをさせるのだ。我ながら悪どいと思う…。
部分チャームを使ったのは、ララだけではない。アーセナやノコーシュ、コルトルからも諜報員を通じて政治への干渉が行われていたのだ。そこで私は、ララと同様に、各国の諜報員にも部分チャームで逆スパイをするように指示を出すことにした。
ー 数日後 ー
私は、各国の諜報員から上げられた情報を目にし、驚愕することとなる。アーセナは、日本北方の大島。ツーゴルは、本州より西側領土全域。コルトルは、新日本海側の全離島。各国が日本の領土を狙うべく計画していることが判明したのだ。ノコーシュは、侵略計画はないものの、上記の侵攻が見られた際には、便乗して日本を攻撃する計画が判明した。
未瑠叶君の記憶では、第二次世界大戦以降、世界は平和への道を辿っている様だった。しかし、我々が真実を知らないだけで、世界は戦乱の世に向かい、様変わりしつつあるようだ。
アーセナや、ツーゴルにおいては、中央アジアや西アジアを中心に、紛争の火種をばら撒き、戦域を拡大させるように画策しているようだ。目的は、このまま紛争の拡大させて世界を巻き込む形で第三次世界大戦に発展させること。そして、その混乱に便乗して周辺の領土を拡大させる目論みを企んでいるという。
直ぐにこの情報を父に伝える。残念ながら、防衛省や、日本政府も掴んでいない情報だったようだ。父は、私の情報を信頼してくれて、早急に政府内で対策を練ってくれるそうだ。また、外務省を通じて同盟国のベイベイにも情報の共有と協力をお願いして貰うことになるようだ。
世界大戦にまで発展してしまうと、私一人の能力ではどうすることもできないだろう…。せめて日本だけは何とか守ってあげたいのだけれど…。
(私一人ではとても手が回りませんねぇ。ある程度魔法が使えて、指示通りに行動してくれる仲間がいればなんですが…。)
私は、ついそんな風に考えてしまう。しかし、この世界では魔法使いである私の方が異端の存在なので、到底無理なことである。
(いや。待てよ…。それなら前世の常識を使えば…。)
「それです!異空庫展開!…あれあれ?」
《異空庫の接続先座標が不明の為、接続できません。座標の検索を実施しますか?》
この声は、賢者時代から引き継いだインテリジェンススキル"天"。天の声が聞こえる感じがするので、前世の時からそう呼んでいる。
(天。お久しぶりです。座標ならまだ覚えていますよ。次の通りに接続を開始して下さい。109 233 30 512 874 2087 7 です。)
《指定された座標に接続します…。接続完了しました。》
今やっていたのは、時空魔法"異空庫"である。任意の異次元空間を保有し、ここに様々な物を収納できる。容量は無限。内部時間は停止。前世の賢者時代に愛用していた。内部の状況を確認すると、前世で収納した物が、劣化することなく保管されているようだ。
「おぉ。良かった。この世界で生活するのに使えそうな物が沢山ありそうですね。」
異空庫内部は、宝の山だった。魔剣や魔導具、魔導兵器に魔導生命体。そして、魔王城にあった数々の書物など。価値のある物や、転生後に必要になりそうなものは全て異空庫に移動させたのだった。一番大きな物は、魔王城だが、大騒ぎになるだろうから、その辺に出すのは止めておこう…。
「いやぁ。懐かしい物ばかりですね。まあ、色々な物を試してみたい所ですが、今回は…。」
私は、異空庫からある物をこちらに移動させた。それは、魔導生命体である。当時に造り上げた中から、気に入っている五体を移動させることにした。
「久しぶりだねぇ。皆さん私を覚えていますか?」
「マスター、勿論ですわ。容姿は、変われど我々の創造主様ですもの。でも、異空庫にいた私達にとっては先程ぶりでございます。」
「あぁ。失礼しました。確かにそうですね。失念していましたよ。」
彼女は、エンゼル。女型に造った魔導生命体である。当時は、側に仕えさせて良く話を聞いて貰っていた。眼鏡の似合う知的美人である。彼女以外には、老執事風のセワズ。美青年風のロニー。自分の容姿そっくりに造ったムスカ。喋る猫をイメージさせて造ったニャルがいる。
どの個体も初期に造った物を、時間を掛けて更に進化させた自信作である。特に容姿や、感情を伴った発声など、人間と遜色ない領域まで拘って造ったのだった。
(あの時は、時間がありましたからね。彼らをこのレベルまでにするには10年も掛かってしまいましたが、今ではいい思い出です。それにしてもムスカは、前世の私そのものですね。妙な気分です。)
私は、魔導生命体の五体をこの世界で使う事を決断した。彼らを連れてきたことにはきちんと意味がある。まずは、父の源一と、母の美奈子、恋人の麗美の身辺警護である。
私は、存在こそほぼ知られてはいないが、国家機密や、他国に干渉するような行動を取っている。魔法によって足が付かないようにしているが、何処で私の情報が漏れるとも限らない。
その場合、報復や封じ込めの為に、私の身辺に何かしらの問題が発生する可能性は、否定できないのである。
「旦那様、しばらくぶりでございます。また、これまでのようにお仕えできること、嬉しく思います。」
「あぁ。セワズ君、こちらこそ宜しくお願いします。」
「御館様。私のことも忘れないで下さいよ。また、狩りに連れって行って頂ければ、必ずお役にたちましょう。」
「やぁ、ロニー君。そうでしたね。魔王城の周りで良く狩りをしましたね。覚えていますよ。この世界では、狩りの依頼はなさそうですが、手伝って貰いたいことが色々あると思いますから、宜しくお願いします。」
「ミルカ様。僕は何をするの?また影武者?」
「いいや、ムスカ君。今の私と君では容姿が違いますからね。でも、ちゃんと出番は考えていますから安心して下さい。」
「主。ニャルにゃ。」
「おぉ。ニャル君。相変わらず可愛いなぁ。ほれ…」
「ゴロゴロ…。」
「さて…。みんな、良く来てくれたね。私は、見ての通り転生して、この未瑠叶君となりました。今後この世界で頑張って行くので、サポートを宜しくお願いします。」
私の言葉に、エンゼルを筆頭に、一同がが片膝を付いて頭を下げた。
魔導生命体の彼らは、賢者時代に苦労して完成させたので、能力は非常に高い。魔力は、私には遠く及ばないが、私が覚えた魔法は、全てインストールしているから、かなりの実力はあると思う。言うならば、当時の勇者タタラカよりも、それぞれが確実に強いというレベルだ。この世界にも強者はいるだろうが、戦闘において敵わない相手は、まずいないだろう。
彼らには、両親や麗美の身辺警護をお願いしつつ、周辺諸国からの軍事行動についても対応して貰う予定だ。私達には、思念リンクがある為に、私がしたいことから大きく相違ないように行動して貰えるので、安心である。
下準備をした私は、両親や麗美に彼らを紹介することにしたのであった…。
ーーー to be continued ーーー
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