2話
この物語は、日本を舞台に作られておりますが、並行世界としての日本という設定になります。
現実世界とは、似て非なるものとして作品をお楽しみ下さい。
また、この作品に登場する人物や、国名、地名、政党名、政治内容など全てフィクションです。
今日は、父に付き添って国会へ入場してしている。私は、議員ではないが、父の補佐役という名目で入場を許可されている。本日は、日本の安全保障に関する事案の討論となっていた。
現在、話しているのが、野方義朝防衛大臣である。
「先日も北斗海の領海内にアーセナの艦艇4隻と原子力潜水艦が4隻、南国諸島の領海内にツーゴルの鑑定4隻原子力潜水艦が3隻。領海侵犯したことを確認しております。この所、我が国に対する挑発行為がエスカレートしており、現状の法律では海自も傍観するしかない状況で苦慮している所であります。」
(私が入手した潜水艦の情報に加え、艦艇の情報も加わり、既に上に届いている様だ。)
「日本飛翔党の方は、そうやって憲法を弄りたがりますが、そのことと憲法は関係ないでしょう。ツーゴルもアーセナも外交的努力で解決できるんですよ。」
大臣の発言後に発言したのは、日本平和第一の党の代表、牧田一議員である。意見は、真っ向対立している。この辺りは、いつもの国会でも良くある光景である。そこで、発言をしたのは、父の北嶺源一である。
「とある情報筋では、アーセナとツーゴルは、結託して我が国へ侵攻を企てていると聞いております。継続して外交的解決を目指すのは当然ですが、外交で収まらない場合のことも想定した対策も求められるのではないでしょうか?」
「いや、周辺国が脅威となる政策は慎むべきだ。かつての日本が周辺国に与えた脅威は甚大だった。歴史を繰り返すべきではない。」
こんな調子で意見は、対立し、膠着する。父や大臣も頑張っているが、この議論に終着点を見出すのは難しそうだ。私は、議論して物事を決めることに関しては、とても良いことだと思っている。ただ、国益となる事柄に対して、妨害することが事前に決まっている討論会だとしたら容認することはできない。
(お節介ですが、ちょっと調べてみましょうか。)
私は、不毛なやり取りをしている間に、会場に臨席されている議員様方を情報魔法"鑑定"でチェックする。この鑑定は、前世で改良を加えており、必要な情報を詳細に入手することができる様になっていた。
奈良橋孜
年齢 65歳
性別 男性
政党 涼風の党(衆議院議員 東京都第31区)
説明 涼風の党の幹事長。ノコーシュとの繋がりがある。これまで政治献金として、累計4億7千万円をノコーシュ側から受け取っている。仲介役のノコーシュの諜報員とは不倫関係にある。
(やはり…。)
たまたまチェックしたのが奈良橋議員であって、彼は氷山の一角である。私は、片っ端から議員達を鑑定の魔法でチェックした。驚いたことに、臨席議員の3分の1が周辺国から個人的に政治献金を受け取っている事が判明した。残念なことに、父が所属している日本飛翔党にも、周辺国の息が掛かった議員が何人もいたのだった。
私は、これらの情報を情報魔法"トレース"によって脳内に保存しておいた。
《北嶺邸》
自宅で父に今日のことを話す。これを伝えると言うことは、父に大賢者の能力を報告すること同義である。私は、必要な事だと決心して口を開いた…。
「頭が混乱してしまって何と言っていいのかわからないな。魔法など空想であるのが世界の常識だ。普通は、お前のその話を信じることは難しい。だが、私も母さんも、お前の死に直面し、一度は諦めかけていた。医師が言った様に、今こうしてお前が元気に生活できている事こそが奇跡な訳だからな。だから信じたいし、このことを端から否定はしない。だが、信じるには確証が必要だ。わかるよな?」
「はい。もちろんです。では、1つ簡単な魔法を使用します。浮遊魔法"フローティング"!」
父は、ソファーに座ったままの姿勢で、宙に浮かび上がった。
「うわぁ。す、凄いな。未瑠叶、降ろしてくれるか。」
「あぁ。はい。」
「こんなものを見せられたら認めざるを得ないな。他にも何か使えるのか?」
「えぇ、もちろんです。基本的にやろうと思ったことは、大体できますね。」
(まあ、600年近く魔王城に篭って研究してましたからね…。)
「凄いな。その魔法の力で議員の不正を暴いたのか?」
「はい。情報魔法"鑑定"と言います。対象の情報を調べる魔法です。簡単な情報から詳細な情報まで自在に得られます。」
「例えば?」
「そうですね。今回で言えば、〇〇議員が〇〇国と繋がっているとか、いくら位受け取っていたとか、その国の諜報員と不倫関係になっているとかもありました。もっと深く読み取れば諜報員の名称や、議員の口座情報なども得られます。」
「あぁ。もう分かった…。未瑠叶、悪用するなよ。」
「えぇ。もちろんですとも。」
(レーダー情報を干渉した際に違法行為してしまったことは、とても言えそうにない…。)
「それにしても、とんでもない情報が入ったものだ。まさか我が党の曽我さんまで不正に染まってしまっていたとは…。それに政党別としても、議員数の3分の1に及ぶ方々が不正を行っているとはな。これが公にされれば、国民からの信頼も地に落ちる。慎重に扱わねばならない情報だろう。末恐ろしい。各党ともに大混乱になり兼ねない案件だ。」
「父さん、この情報はどうするおつもりですか?」
「知ってしまった以上、このまま捨てて置くわけには行かないだろう。国民に選ばれ、代表して政治を担っている身だ。国民の為にやれることはきちんと手を尽くすつもりだ。」
(父が真っ当な人間で良かった。父さんなら任せても大丈夫だろう。)
「未瑠叶よ、この情報をリスト化して纏めておいて貰えるか?大河内派や、理念が近しい者で、クリーンな議員を集め、徒党を組む。早急に対策を練り上げねば…。」
「承知しました。他に協力できることがあれば仰って下さい。」
「そうだな…。では、可能なら対象議員の物的証拠を集めてくれ。お前に危険が及ばない範囲でだ。勿論、内密にな。」
「それも問題ありませんが、法に触れてしまう恐れがあります。宜しいですか?」
「うーむ。本来なら政治家として、父親として許可してはいけないのだが、今後の日本の未来に関わる非常事態だ。目を瞑ろう。そして、未瑠叶。お前を信じるよ。魔法で気づかれない様にできるんだろ?」
「えぇ。容易いことです。」
「任せる。お前が関係することは、俺が必ず責任を取るから安心しなさい。」
「承知しました。一週間で集めて見せます。」
まず、私は対象議員のリストの作成を行う。名前と具体的な不正内容をリスト化して行く。情報魔法"トレース"によって保存された情報を元に、バソコンで作成していく。元々、未瑠叶君がシステムエンジニアだった事もあり、コンピュータに関しては、水を得た魚である。1時間程度でリストは完成した。
次は、リスト議員の証拠集めだ。議員の居場所は、脳内マッピングに議員の個人情報を合わせると、マップ上に居場所が表示される様になった。実際に議員が居る場所に行って使用する魔法は、以下の通りである。
一、隠蔽魔法"インビジブル"
二、偽装魔法"カモフラージュ"
三、妨害魔法"ジャミング"
四、映像魔法"ミルチューブ"
五、魅了魔法"チャーム"
六、自白魔法"アドミッション"
七、記憶操作魔法"イレース"
インビジブルは、術者の音や気配を遮断し、周囲に術者を認識させない魔法。対象者に近づくまでに部外者に見つからないようにする。術者の指紋も残さない為、潜入に重宝される。
カモフラージュは、術者の外見を他の者(物)に写し替えることができる。その内容は、術者のイメージで自由に可変が可能である。
ジャミングは、監視カメラや盗聴器などの媒体や、音や振動なども一時的に無効化し、こちらの存在や情報が外部に漏洩することを防ぐ。範囲は、最大100メートルまでで、術者が自由に範囲を調整できる。ミルカがこのミッション用に即席で作成した独自魔法。
ミルチューブは、任意の風景や場面を映像として記録しておく魔法。トレースを応用してミルカがミッション用に即席で作成した独自魔法。
チャームは、相手を魅了して、相手を意のままに操る魔法。
アドミッションは、自白させる為の魔法。対象者は、真実しか語らなくなる。レジストできない限りは、自白を拒否できない。
イレースは、相手の記憶を操作する魔法の1つ。記憶を30分程度遡って削除する。
ーーー
私が最初に向かったのは、日本平和第一の党に所属する、大沢三郎議員である。大沢議員は、自宅にいるらしく、"インビジブル"と"カモフラージュ"の魔法を掛けた上で転移した。
大沢議員は、自室でコーヒーを楽しみながら書物を読んでいた。直ぐに"ジャミング"の魔法を室内全域に展開する。
(魔法は、滞り無く正常に発動しているようだ。)
私は、ボイスレコーダーとボイスチェンジャーのスイッチを入れてから"インビジブル"を解いて姿を現す。魔法だけでなく、科学技術が素晴らしいのがこの世界の良さだと思う。
「わぁ!誰だ君は?ここは私の家だぞ!不法侵入だ。警察を呼ぶぞ!」
ここで、映像魔法"ミルチューブ"も発動しておく。
「先生、申し訳ありません。うっかり土足で侵入してしまいました。あの…先生に協力をお願いしたい事がありましてね。ツーゴルと先生の関係を是非教えて頂きたいのです。」
会話しながら、無詠唱のまま"チャーム"と"アドミッション"の魔法も使用しておく。
「わかりました。お答え致しましょう。私は、ツーゴルとは10年来の付き合いです。ツーゴルの不利益になることは妨害し、なるべく利益に繋がるように仕向けるのが私の仕事です。」
「その見返りは?」
「今までのお付き合いで10億円を超える政治献金を頂きました。」
「仲介役の諜報員などは居ませんか?」
「居ますよ。」
「お名前は?」
「ララ・インスです。」
「ララ・インスさんとお話をしたいのですが、間を取り持って頂いても宜しいですか?」
「わかりました。セッティングしましょう。」
◇◇ 一時間後 都内喫茶店 ◇◇
私は、大沢先生と同じ方法で諜報員の方とも話を行う。本来は、有り得ないが、チャームとアドミッションの魔法の効果は絶大だ。
「ララ・インスさん。あなたは、大沢三郎氏に大金を渡して、日本の国政に干渉しましたか?」
「はい。そうです。」
「あなたは、誰に指示されて行動していますか?」
「ギャン・アンザです。」
「ギャン・アンザさんですか。どういう立場の方でしょうか?」
「特殊情報局の局長です。」
「特殊情報局は、ツーゴル政府の指示で動いているのですか?」
「そうです。」
「ありがとうございました。」
魔法の効果であっさりと情報収集させて頂いた。この会話は、ボイスレコーダーに録音して、証拠として父に提出する。後で声紋判定をすれば、本人であることはわかるだろう。逆に私の声紋は、ボイスチェンジャーを使用しているのでわからないようにしてある。映像に関しては、脳内からバソコン経由でメディア媒体へと移動しておく。ボイスレコーダーの証拠だけでは不充分だった場合には、提出するつもりである。
最後に私とお話した時の記憶を、記憶操作魔法"イレース"によってすべて消去させて頂いた。魔法と科学の融合によって不正を暴くことに成功した。ただし、このララには、魅了魔法"部分チャーム"を使い、あるお願いをしてからお帰り頂いた。恐らく彼女は、無意識に私からのお願いを遂行してくれるだろう。
その後、同様の手口を使い、多くの議員さんの不正の証拠を入手したのであった…。
ーーー to be continued ーーー
◇◇◇ 読者様へ ◇◇◇
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