9話
この物語は、日本を舞台に作られておりますが、並行世界としての日本という設定になります。
現実世界とは、似て非なるものとして作品をお楽しみ下さい。
また、この作品に登場する人物や、国名、地名、政党名、政治内容など全てフィクションです。
我々JAWTは、現在南国諸島沖の接続水域にいる。海上保安庁と交代して、この水域における紛争や、治安維持の対応が任務である。私は、魔法によって海上保安庁の巡視船「かざぐるま」模した造形の船を建造した。
「ネオラーナ」と名付けた船は、エンジンでは無く、魔動力を使用しており、素材には軽量で硬質な"魔鉄鋼"を用いるなどの改造を施していた。普通ではない巡視船が、ここに誕生した。我々は、目の前にいるツーゴルの公船より、日本海や領土を守る為に行動を開始する。
「創造主。コイツらが創造主の海に無断で入りやがった奴らか?」
「クレレ君。相変わらずお口が悪いですねぇ。そして、ここは私の海ではなく、日本の領海ですよ。」
「口が悪いのは、創造主が望んでそう造ったからだろ?」
「!!」
「昔過ぎて失念していましたが、確かにそんな風にしたのは、私でしたね。申し訳ありません。アナタが希望されるならば、キキ君のように、お上品な喋り方に造り直して差し上げますが…。」
「オレの負けだ。創造主。それだけは勘弁してくれ。オレは、この女のしゃべり方だけは真っ平御免だぜ。」
「クレレ。随分失礼なことを仰りますこと!しっかり聞こえてましたわ。」
「ふん。」
「さて、そろそろ働きましょうか…。では、カナ君。ツーゴルの皆さんに退却する様に説得して頂けますか?」
「ん。わかった。情報魔法"拡声"!」
「日本の領海。帰れ!」
シーン…。
「カナ君。お、終わり…ですか?」
「ん。終わった。」
ズッコケ…。
「どうやらカナ君には、難しかったようですね。では、私が行きましょうか…。」
Papapapapapan!
《攻撃を察知し、結界魔法"シールド"を代理発動しました。銃弾は、シールドにより全弾無効化しました。》
《天、ありがとう。》
「いきなり機関銃を発砲しましたか。海保の時もそうですが、なかなか好戦的な連中の様ですねぇ。少し大人しくさせましょうか。生産魔法"クリエイト"」
私は、生産魔法"クリエイト"を使用して、機関銃を変形させた。ぐにゃりと折れ曲がった機関銃では、今後射撃は無理だろう。
「創造主。いっその事、オレがやっちまうか?5隻とも全部沈めてやんよ!」
「クレレ。アナタは、そうやって直ぐに戦いに持ち込もうとする。お父様が考えてる事を少しはお察ししなさいな。」
「流石はキキ君です。」
「クレレ君。相手は公船です。我々が武力で制するのは、非常に簡単です。ですが、それではツーゴルに我が国に対する侵攻理由を与えてしまうことになります。ここは、相手がとのような行動に出るのかしばらく観察して、対応することにしましょう。」
「ああ。わかったよ。創造主。」
JAWTや、巡視船「ネオラーナ」は、機関銃で攻撃をしかけられたものの、結界魔法"シールド"によって全くの無傷であった。我々は、しばらく相手の様子を観察することにした。
Papapapapapan!
「結界魔法"シールド"。今度は別の船かよ!クソ野郎が!。これでいいだろ。」
「はい。クレレ君。良く我慢できました。お利口でしたよ。」
私は、クレレの頭を優しく撫でてあげた。
「うふふ。」
「あ!クレレ、ズルいですわ。私もお父様にやって頂きたかったですわ。」
「カナも。」
「え!?そんなにいいもんですかねぇ。」
「うふふ。それは最高ですわ。」
「ん。至福。」
私は、魔導生命体の子達らがせがむので、言われた通りに頭を撫でてあげた。うっとりしている顔を見ると、未瑠叶君が昔飼っていた子猫を思い出してしまい、うっかり笑いそうになった。
「ぶつけろー!」
相手の船から大声が聞こえてくる。どうやら射撃は、止めにして体当たりするつもりの様だ。
「お父様、どうなさいますか?」
「うん。好きなようにさせてやりますか。」
相手の5隻の船の内、2隻が「ネオラーナ」の両側に移動してきており、一斉に体当たりを仕掛けた…。
Gashaaan!
大きな音と共に、激突によって船が揺れる。
「この野郎!遂にやりやがったぜ!」
《天、ネオラーナの被害状況を教えてください。》
《激突による損傷率は、0.01パーセントです。軽微なカスリ傷程度で問題ありません。微細な傷の修復に生産魔法"リペア"を代理発動します。発動しました。》
どうやら、こちらのに損傷ついては、無いにも等しいくらいに軽微な物であった。特殊な素材"魔鉄鋼"で船体を仕上げている為、当然な結果と言える。逆に「かざぐるま」と同じ素材ならば、無事では済まなかったかも知れない。
「あっ、お父様!あれを御覧になって下さいませ。」
どうやら激突してきた船2隻は、逆に船体より浸水したらしく、傾いている様である。このままでは、沈没するのも時間の問題だろう…。
「ふん。ざまあみろ!」
クレレがしてやったりの顔をしている。
「クレレ君の気持ちもわからなくもないですが、助けますよ。」
「え!?創造主、なんでだよ?」
「そうですね…。彼らは自業自得ですし、そのまま沈めてしまうことも出来ますが、事の一部始終を映像魔法"ミルチューブ"で撮影してますからねぇ。防衛省や政府のお偉いさんにも見せるので、非道なことは避けたい所です。」
「ああ。創造主の立場があるんだろ?わかったよ。」
「ご理解ありがとうございます。では、クレレ君、キキ君、カナ君。君たちの出番ですよ。敵船が沈没しない様に救助してあげて下さい。」
「しゃーねーな。創造主の頼みじゃあな。」
「お父様。完璧にこなせて見せますわ。」
「ん。任せて。」
「生産魔法"クリエイト"」
「生産魔法"クリエイト"」
「お父様、直しましたわ。」
「主。直った。」
「よし、偉いぞ。」
「そろそろお帰り頂きましょう。クレレ君。作戦通り、ツーゴルの軍港近くのポイントに転移させて下さい。」
「範囲を5隻の公船に拡張する。転移魔法"テレポート改"」
Shun!
公船5隻は、完全にこの海域から姿を消した。クレレが使用した魔法は、転移魔法"テレポート改"。通常のテレポートは、術者が移動するが、テレポート改は、任意の人や物を任意の場所へ転送する魔法だ。
「無事終わりましたね。皆さん、ご苦労さまでした。今後もちょっかい出してくる連中が来ると思いますが、こんな感じて追い払って下さいね。」
ーーーー
(防衛省 第一会議場)
「以上の映像が任務の報告書代わりとなります。
あの後、父に報告した所、防衛省にてJAWTの活動の報告をする事になった。集まったのは、総理大臣の野方義朝氏を始めとし、日本飛翔党の錚々たる面々が集まって来ていた。
「凄いな。彼は本当に人間なのか!?常人離れしている。」
「茶番だよ。有り得ん。CGだろう?私は騙されないぞ。」
「北嶺さん。自分の手柄にしようと息子を出汁に使うとはね…。」
「皆さん、静粛に!」
私は、南国諸島の上空でのツーゴル戦闘機への対応や、ノコーシュの極音速ミサイルを捕獲した場面、そして先程のツーゴルの公船への対応。これらを記録した映像魔法"ミルチューブ"による映像を集まった議員の先生方に見て頂いていた。
しかし、反応は予想通り懐疑的な物であった。父や母は、息子が言い出したことなので、直ぐに理解を得られていた。しかし、大した面識もなく、親しい間柄でもない私の話では、説得力が欠けていたのかも知れない…。
(場内の空気が重いですね…。実際に撮影した映像ですらCG扱いですか…。これは、説得するのは難しいでしょうね。)
「皆さん、お待ち下さい。」
ここで、口を開けたのは、防衛大臣の父、北嶺源一である。
「先生方は、突然に現実離れした映像を見せられて、さぞ混乱されておられると思います。ですが、これは紛れもない事実で、現実でございます。私や倅が、自らの野心の為に今回お呼び立てした訳ではございません。ただただ、日本国の平和を維持する為に最良と判断した上で、倅を紹介した次第です。」
続けて野方総理大臣が発言を行った。総理の発言に会場の視線が集中する。
「やあ、未瑠叶君。久しぶりだね。今日は、来てくれて本当にありがとう。それからノコーシュのミサイルの件は、直接お礼が言えなくて済まなかったね。」
「いえ、とんでもございません。お言葉感謝します。それから、私も直接言えませんでしたが、総理の就任おめでとうございます。」
「ありがとうね。さて、皆さん。本題に入りましょうか。先生方は、ノコーシュから我が国に向けて打たれたミサイルの数はご存知ですかな?2週間で23発です。これは、これまで経験したことの無い異常な数です。しかし、こんな状況で国民が無事でいられたのは、ここにいる未瑠叶君のお陰なのです。」
「日本の領空・領海に到達した途端にレーダーから反応が消えたのは、彼が異能でミサイルを捕獲したからです。あの極音速ミサイルですよ。凄いですよね。その証拠に五菱工業には、23発全弾が、損傷もない状態で保管されています。これをどう説明しますか?」
「確かに、総理が仰る通り、不可解な状況が起きていることは理解できます。しかし、音速を超えるミサイルを人間が捕獲するなど不可能です。」
「宜しいでしょうか?若輩者の発言をどうかお許しください。三浦先生のご指摘はごもっともです。普通の人間は、捕獲自体無理ですし、その空域に存在するなど有り得ないでしょう。しかし、私も自分の足でその空域に行き、素手でミサイルをキャッチしている訳ではありません。」
「これまでのミサイルの捕獲は、全て魔法の能力による成果です。」
「魔法だって?魔法少女マイちゃんの見過ぎではないのかな?」
「ワーハッハッハ!」
場内に笑いの渦が巻き起こった。
「失礼な!息子を侮辱するのか!」
父がカッとなり大声をあげている。
「父さん、大丈夫ですよ。皆さん、父さんもそうでしたが、実際に自分の目で見て経験しないとわからない事もあります。ですので、先生方も一度私の魔法を体験してみましょうか。」
「何だ?生意気な。火でも出すと言うのか?」
「えっと…、そんなことは容易いですが、もう少し迫力がある方が宜しいのでは?」
私は、人差し指の先にコブシ程度の火を点火させながら、笑顔で話した。指先の火に、場内ざがわめき始めている。
「では、皆さんで空の旅でも楽しみましょうか?」
「未瑠叶!待て…!」
父さんの引き攣った表情に、私はウインクで返す。
「範囲は、この会場内の全員にします。転移魔法"テレポート"!」
「未瑠叶~!」
Shun!
(南国諸島上空)
「ぎゃー!落ちる!」
「助けてくれ!」
転移先は、先程の南国諸島の上空だ。遠くの方に巡視船「ネオラーナ」が見えている。議員の先生方と私は、上空から真っ逆さまになっている。
「飛行魔法"フライ"」
私は、フライで自由自在に空を飛んでいる姿を皆さんに披露する。
「先程の転移魔法がテレポートです。一瞬だったでしょう?そしてこれが、飛行魔法"フライ"です。」
「わ、わかった!もういい!助けてくれ!」
「悪かった!信じる。信じるから…。」
「許してくれ~!」
(もう頃合でしょうか。)
「転移魔法"テレポート"」
Shun!
(防衛省 第一会議場)
私達は、再び会議場に戻ってきていた。父を始めに議員の先生方は、ぐったりとした表情を見せていた。中にはズボンの前が大変な方もいらっしゃるようである。
「如何でしたでしょうか?これが私の魔法の力のほんの一部です。この力で他国からの侵犯に対抗しておりました。」
「納得だが、未瑠叶君。これはやり過ぎだよ。」
「野方総理。申し訳ありません。」
「先生方も、これで彼の力はわかりましたね。彼に頼らないで対応する様に準備していくのが、我々の使命であり、役目である事に変わりありません。しかし、相手側だって、いつまでもこのまま軽いちょっかいだけでは済まないでしょう。彼の協力を仰ぎながら、何とか国難を乗り越えなくてはなりませんよ。」
「未瑠叶君…だったかな?先程は、失礼な事を言って済まなかったな。いや~生きた心地がしなかったよ。君の能力は、きっと神様が、日本を救う為にもたらしてくれたのかも知れないな。私は、君に賭けたいと思うよ。総理から以前から提案されていた政府の秘密機関の件、支持しようと思う。」
「三浦先生…。あっ、前が…。」
「えっ?あっ!!あの時、ほ、本当に怖かったんだよ。」
「あっはっは。」
「私もだよ。では、政府公認の秘密機関"JAWT"の設立に関して異議のある者は?」
…。
「よし、ここにJAWT設立を宣言する!」
こうして、政府の秘密機関"JAWT"が正式に誕生した。秘密機関という立場上、機密扱いとなり、関係者は守秘義務が生じることになった。父からの提案により、この会議の参加者全員には、魔法による、情報漏洩防止を行っておいた。これで、うっかり秘密を漏らすという心配はなくなった。
ーーー
「父さん、すみませんでした。」
「あぁ。やり過ぎたな…。だが、気持ちはわかる。まあ、先生方の支持が得られたことは僥倖だ。まあ、今後も秘密裏の活動には変わりないが、政府が後ろ盾になってくれたのは大きいぞ。」
「はい。父さんの力添えもありますしね。」
「ああ。どんと任せなさい!」
私は、父さんと親子の会話を楽しみながら帰宅したのであった…。
ーーー to be continued ーーー
◇◇◇ 読者様へ ◇◇◇
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