症例:猟犬その1
初投稿です。
君の名前は?
「カメラなんて引っ張り出してきて、なんですかいきなり?」
良いから、これも診察の一環なんだよ?
「診察って……良いです、わかりました。
……忌数、毒島忌数です」
なるほどイミカちゃん、君は何に悩んでるんだい?恋愛?友人?家族?もっと他の何か?
「……恋人なんていませんし作る予定もありません、友人はちゃんと選んでるつもりです、家族の事はアナタだってわかってるはずですよね?
それよりも話を始めたいんですけど」
おっと、怒った?ごめんね?勿論君のことは信用してるさ!!信頼はまだしてないけどね?
君は僕と血が繋がってる、その事実だけで信頼できないさ!!
「……おじさんって変わってますよね、父とは違うタイプの変人な気がします」
兄さんと僕は違うさ、君と義姉さんだってそうさ!みんな違ってみんな変だ。
だから聞かせて?君の変なとこ、君の症例を聞かせてくれ。
「……わかりました、じゃあ最初から話しますね」
お願いしまーす。
「私の遭った怪異、あなた風に言えば症例……私が見たのは犬です」
犬ね、犬種は?
「わかりません」
大きさは?
「大きかったです」
女子高生に大きかったって言わせる背徳感凄いね。
「父さんに言いつけますよ?」
あー!!ごめんごめん!!
でも、大体どんな雰囲気だった?犬……なんだよね?雰囲気は?優しそう?怖そう?強そう?弱そう?それとも……犬としか言いようがないのかな?
「……はい、四足歩行で下を垂らしている生き物のイメージが犬しかなかったので、犬と言いました」
青……緑、そんな色合いだったかな?いや、黒かな?
「知ってるんだったら勿体ぶらずに教えてくださいよ」
だめだね、勿体ぶるのが大人の仕事だからね。
教育のため!君のため!そんな風に嘯きながら君にストレスを与えて自身が上位であるように振る舞うのが大人の仕事だからね!君の方が知恵があっても!才覚があっても!それを長く生きている!たったそれだけの理由で嘲笑う(わらう)のが僕らの仕事さ!
「急に大きな声出さないでください!」
猟犬。
「え?」
君の出会ったモノ、君の出会ってしまったモノを僕はそう呼んでる。
さぁ聞かせてよイミカちゃん、君の症例を、僕の治すべき病床を、君の戦うべき相手をね。