とりあえず、第一話続きがあるかは定かでない
黒猫が路上に飛び出した。
歩道を歩いていた黒ジャージ姿の少年が猫を助けようと反射的に飛び出した。
私は、失念していたのだ。
彼は「世界の支配者」と同義であり、「異端者」でもあった事を…
だから、この世界が彼をここまで拒絶しているとは、思ってもいなかったのだ。
そんな彼に向かって無情にも通りすぎる大型トレーラー
彼の存在が、絶対であることを解っていながら、その絶対なる存在に恐怖し… 消しにかかる世界。
彼は認められつつも許されない存在なのだ。
私は咄嗟に広げた両手を彼に向けて叫んだ。
ハイヒール!
この世界に魔素何て無い。
自分の命を削るしか方法がない。
私はこんなところで死ぬわけにはいかないが…
でも、それ以上に彼を死なすわけにはいかない。
黒猫はやはりダミーだったようで、彼の手に触れる前に霧になって消えてしまう。
トレーラーによってミンチになってゆく彼に私の治癒魔法が重なる。
これならギリギリ間に合うかも知れない。
私は自分の命がもうすぐ終わることを感じながら彼が助かることだけを願った。
「お願い間に合って!お願い!おね…が…ぃ…」
霞行く視界…
薄れていく意識…
何故か心臓の音だけが、騒がしく頭の中に響いて…そして小さくなっていった。
トレーラーが彼を通り越した。
そこには何もなかったかのように、平然と走り去った。
彼の存在を否定する世界の意思そのものであるように、何もなかったそんな言葉が空から降ってきそうな夜だった。