表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
通りすがりの陰陽師2  作者: チャーハン・神代
8/109

八、混血

 一度見失ったものの、追ってとりあえず走り、私は偶然にも逃げた狒々の隠れ家的な場所に辿り着いた。近くの木の影に、こっそりと隠れる。

 見つけた…。でも、狒々と一緒にいるあの女の子は…何者?


「あ…1人…気がついたみたい。」


 ツリーハウスの基礎となっている木に、体を絡めとられている少女は、虚な目をしてボソリと呟いた。


『な…何じゃと!?おのれぇ…折角力を手に入れたと言うのに!いったい何が目的で逃げた儂を執拗に追い回すのじゃ!』


 ツリーハウスごと《・・・・・・・・》移動していたらしい狒々は既に疲労困憊で、憎々しげな表情を浮かべていた。

 その目は爛々と光っており、とても正気とは思えぬ目をしている。


「さっき…おじさんに鮮度低いって言われて怒ってた、女の人。ねぇ。もう…いいよ…、ひっく…やめようよぉっ…。」


 ツリーハウスの木の根本に再び、ぽたぽたと少女の涙が落ちた。

 俯く彼女の瞳が、垂れてきた紫色の髪で隠れる。


『何を言うておる!人間などという下等な生き物に、おもい知らせてやらねば儂の気がすまんのじゃ!』


ーーパキッ。


 やばっ、木の枝踏んじゃった!

 驚愕の表情を浮かべて、狒々が私のいる方を向く。

 仕方ない、ここは堂々と出るしか…。


「逃げるのやめたの?それにその子…どうして木に絡め取られてるの?」


 狒々と少女の会話していた所に、しれっと参加する。

 ツリーハウスの木に体を絡めとられている少女は、ポロポロと涙をこぼしながら俯いている。

 狒々に関しては、私の登場があまりにも予想外だったらしく、非常に驚いた顔をしていた。


しずくっ!お主わざとっ…!?』


 狒々が少女の方へ振り向くと、雫と呼ばれた彼女は悲しげな笑みを浮かべていた。


「いいの…これで…いいっ…。これでいいからっ…!」


『おぉぉぉのぉぉぉれえぇぇぇ!!!!!!』


「っ…!」


 狒々は私に背を向け、少女目掛けて、鋭い爪を振り上げた。


ーースパンッ。


「…へ?」


 少女が痛みを覚悟し、ギュッと目を瞑った直後、少女の体は斜めへと傾いた。否、少女が体を絡めとられていた木を、私が切り倒した。

 狒々の爪が空を切り、少女は木の幹から解放される。


「え…あ…あの…。」


「事情よく分かんないけどさ。」


 木を呪符で倒した私は、ぽかんとして地面に座っている少女に手を差し出した。


「とりあえず逃げよっか。」


 手を離れないようにしっかり掴み、私は雫ちゃんを連れて、狒々と反対方向へ走り出した。


「だ…だめっ!おじさんを残して逃げられないよ!」


「お…おじさん!?」


「千晶ちゃーん!」


 走りながら雫の方を振り向き、素っ頓狂な声を上げたその時、他の場所を探していた茉恋さんたちが私の元に合流した。


「どうしたの?その子。」


「実を言うと私もよく分かって無くて…狒々がいたツリーハウスの木に捕まってたんです!」


「木に捕まってた?」


 後ろから追いかけて来る狒々から、走って逃げながら、紡さんが何かに気がついたらしく、雫ちゃんの顔を見てハッとした。


「あんた…ひょっとして混血か?」


 ビクッと雫ちゃんの体が強張る。


「混血…?」


 雫ちゃんの方を見やると、何かに怯えている様に目を泳がせ俯いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ