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六芒プレース 出題編


 冒険は日の出と共に始まる。


 朝早くだというのに、ギルドには冒険者が次々やってきては依頼を受けていく。少しでも割のいい依頼を受けたいのだろう。バイタリティーにあふれている。冒険者たちを横目に、俺はそんなことを考えていた。


 俺は連れと一緒にギルドに備え付けの飯屋で朝食を食っている所だ。朝はしっかり食わないと頭の回転が鈍くなるからな。だからパンがいくら硬かろうと、スープでふやかして喉に押し込んでいく。


 依頼の奪い合いには参加しない。する必要が無いというべきか。どうせ俺が受けても達成できないのだ。体力も魔力も無い俺には不可能な依頼がほとんどだからな。



「師匠、依頼受けるの? 掲示板見てるけど」

「いや。なんとなく見てただけだ」


 俺は向かいの連れにそう返した。俺と同じ十九歳の割に大人びて見えるこいつは、一応俺の弟子という事になっている。


 名前はメル。世間一般的には美人に属するだろう。仮にも師匠にタメ口を聞くのはひどく違和感があるが、こいつは昔からこうだ。いまさら気にはならない。



 さて、冒険者ギルドに居ながら依頼を受けようとしない俺たちは冒険者なのかと思うやつもいるだろう。その答えは“はい”だ。


 冒険者の仕事は多岐にわたるが、俺とメルはその中でもダンジョン攻略を専門にしている。この街の中心にあるでかいダンジョンが仕事場だ。人類の最深到達点は地下24階。最下層が地下何階なのかは未だ不明である。


 戦えない俺がダンジョンで金を得る方法は一つ。非戦闘員として働く事だ。荷物持ち(ポーター)じゃないぞ? あれは戦わなくてもいいが重労働のわりに賃金が少ない冒険者の底辺の仕事だ。俺はもっと賢く稼ぐ。



「メル、今日は指名依頼来てなかったよな」


 飯を食い終えた俺は助手にそう確認した。


「来てないよ。どうする? 依頼が来るのを待つ?」

「いや、営業をかけよう。知名度が無いと依頼も来ないしな。悪いが手伝ってくれ」

「了かーい」


 そう言って俺は席を立った。ついでに皿を返してくるか。俺はメルの皿も一緒に重ねて返却口に持っていく。


「あっ、私が運ぶよ?」

「別にいいよ、俺がやる。代わりにお前には客引きを頑張ってもらうからな」


 メルが一緒かどうかで売り込みの成果が大きく変わるのだ。美人は羨ましい。





 その後ダンジョンに行く冒険者に自分を売り込みに行った俺たちは、何度目かにしてようやく仕事を得る事に成功した。




「助かったよ。ちょうど昨日行き当たってさ、誰かに依頼しようと思ってたんだ」


 ダンジョンへの道すがらそう言うのは今回の雇主にして冒険者のザッシュ。若い少年少女で組んだパーティーのリーダーだ。まだ装備に着せられている感が残っているのが初々しい。


「へえ、皆は同じ村の出身なんだ」


 メルがザッシュと適当に雑談を続けている。打ち解けるの早いな。メル相手にザッシュが舞い上がっている。


「おいおいリーダー。顔が赤いぜ?」

「ザッシュ、イチャイチャしないでよ」

「胸ばかり見てる。不埒……」

「べ、べつに胸なんて見てねーし!?」


 他のパーティーメンバーとあーだこーだ言いながらダンジョンに到着した。俺は中に入る前に確認を取る。


「向かうのは9層ラストの扉でいいんだな?」

「ああ」


 ザッシュが頷く。俺たちはダンジョンに入り、そして9層の入口にワープした。ダンジョンは各層の入り口にワープ地点があり、一度到達した層までショートカットできるのだ。


「さ、どんどん行くぞ。俺は戦えないからな、魔物はお前たちで倒してくれ」

「わかった」


 このダンジョンは基本的に洞窟だ。そこかしこに生えた苔がうっすらと光を発しているため最低限は視界が確保できる。が、暗いのは間違いないのでメルが鞄からカンテラを取り出し火をつけた。俺たちは地図を片手に奥へと進んでいく。


 途中何度か魔物と遭遇したがザッシュたちが一掃した。道程は順調。最短経路で次の層を目指していく。それでも9層踏破に3時間かかるあたり、このダンジョンは無駄にでかいなとしみじみ思う。つーか足が疲れた。


「これが9層ラストの扉だな」


 俺は目の前のでかい扉をコンコンと叩いた。分厚い板に鉄板を打ち付けた重々しい扉である。城門とかにありそうな頑丈な奴だな。





 さて、ここからは俺の出番だ。




「この扉の問題に正解すれば開いて10層に行けるって訳だ。逆に間違えたら俺が死ぬ」


 解き師。俺のような存在はそう呼ばれている。ダンジョンのパズルを解く事を専門にする奴の総称だ。脳筋ばかりの冒険者には突破が難しいパズルフロアの攻略を手伝う裏方だ。


「師匠ガンバ!」


 メルの声援を背中で聞き、深呼吸。


 まあ所詮は9層、浅層だ。だからパズルも比較的簡単な物しか出ない。さらに層ごとにパズルの種類は固定だ。無論答えは毎日変化するが、凡ミスさえしなければ矢でハリネズミになるような事になりはしない。


「やるか」


 俺は扉に刻まれた問題に向き合った。


挿絵(By みてみん)


まずはジャブです。


パズルNo.1 六芒プレース

難易度 ★☆☆☆☆

手間  ★★☆☆☆

ルール:マスに1~4の数字を入れる。一直線上に同じ数字が入ってはならない。

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