命日と誕生日
二話目更新です。ではどうぞ。
教会の外に出ると大雨が降っており、それとは対称的に孤児院が燃えていた。俺はみんなが心配でたまらなかった。どうかみんな無事でありますように。神にもすがる思いで孤児院のほうへ走っていった。
「シスター!エリス!」
俺は大きな声で叫んだが誰からも返事はなかった。さらなる不安を抱えてどうにか孤児院の中へ入ると俺の目に入ったのは人の形をした黒い何かだった。周りを見ると同じようなものがたくさん転がっていた。その黒い何かは子供ほどのサイズであり腕と思わしき場所にこの孤児院のシンボルであるツバメが刻まれたブレスレットがしてあった。俺は理解してしまった。これが全て孤児院の子供たちだということに。吐きそうだ。でもまだシスターは生きてるかもしれない。俺はそんな小さな希望を抱いてシスターを探した。燃え盛る炎を避けて食堂に向かうと地面に倒れている人影が見えた。また焼死体かもしれない。覚悟を決めて人影のほうに向かうとシスターだった。
「良かった!シスター生きてたんだね!」
「グレイ、よかった。あなたは無事だったのね。」
「他のみんなは?」
「急に爆発が起きてみんな巻き込まれてしまって、もう生きてる子は...私は食糧庫にいて巻き込まれなかったけどまだ犯人がここにいるわ。早く逃げなさい。」
「どうしてだよ!一緒に逃げればいいじゃないか!」
そう言ってシスターを見ると倒壊した天井に足を潰されていた。
「シスター..それは一体..」
「みんなの安否を確かめに来たらこの様よ。私はもう逃げられないわ。みんなのお兄ちゃんでしょ。わがまま言わないの」
シスターは優しい口調で俺を宥めた。
ガタ ガタ
後ろから何かが近づいている。
「おっと、まだ生きてる奴がいたのか。」
その何かはフードをしており性別はよくわからなかったが薄らと見えた顔には棺桶のマークが見えた。
「お前がみんなを殺したのか!」
「そうだよ。だからどうしたって話だけどな。これから死ぬお前には関係ないしな。」
そいつは笑いながら答えた。あいつが犯人だとわかった瞬間怒りがこみ上げてきた。ごめんシスター。でも俺は許せない、みんなを殺したこいつだけは絶対に!俺は近くにあった瓶でそいつに攻撃をした。
ガシャン
そいつは全く気にした様子はなく俺の攻撃を受け平然としていた。
「オラァ!」
「アガッ!?」
見えないほどのスピードで蹴られた俺は壁まで勢いよく飛ばされた。
「受け身をとったか。雑魚は黙って死んだ方が楽なのにどうしてわざわざ抵抗して惨たらしく死ぬのか俺には理解出来ないね。」
(俺は死ぬのか?誰のためにもならず。せめてシスターは助けなければ..)
徐々に男が近づいてくる。俺はどうにか立ち上がるがどうすればいいのか全く思いつかなかった。
(せめてアニマの力が使えれば...!)
「あなたのアニマの力は剣を創造する力!強く思えばあなたのアニマは必ず答えてくれる!」
「あの女...!」
俺はシスターに言われた通りに強く思った大切な人を守りたいと..
「いでよ!魂の剣」
俺の手に現れたのは光り輝く剣だった。
「チッ、面倒なことを...」
「お前は俺が倒す!」
俺は剣を相手に振りかぶるが相手の手で簡単に受け止められてしまう。
「そんな...」
「少しはやるかと思ったが余計な心配だったようだな。じゃあな、坊主」
パリーン!ガラスが割れるような音で俺の剣は砕け散った。それと同時に俺の意識も霞み始めた。ごめんシスター、俺はあなたを守れなかった..母さん...
目を覚ますと冷たい感触が顔にあった...俺はどうして生きてるんだろうか?それよりもシスターは!周りを見渡すが人影は焼死体しかなかった。
「こんなのってないよ...クソックソッああああああ」
俺は叫ぶことしかできなかった。自分の弱さと家族の死という事実に。そんな俺の荒んだ心を嘲笑うかのように空は雲ひとつない快晴だった。
序章は次回で終わりです。次回もお楽しみに!