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火球のベルム

 ユウナが自信満々に出て行ったあと俺は待機場から試合を観ることにしたので待機場の観戦スペースへと移動した。ここには自分の試合を待つ次いでに試合を観戦しようという冒険者が集まっていた。


「あいつAランクのサンダースを倒した奴だ。あいつは戦士部門じゃないのかよ。なんで今ここにいるんだ?」


「おい、俺もあいつ知ってるぞ。さっき出店でかわいい子おんぶしてたやつだ」


「モエナ姫とも一緒にいるところを見たぞ」


 これから俺はどこに行ってもこういうことになるんだろうか? 俺はこの二日で何回こういう目にあったんだ? 頼むからやめてくれよ…………俺がこの大会で優勝してめちゃくちゃ強いことがわかればだれもからかったりできなくなるんじゃないか? 普通だったら自分より強いやつをからかおうなんて思わないだろ。


「お、そうだあの子をおんぶしてたんだよ」


「すげぇかわいいじゃねぇかよ。なんてうらやましい」


 ユウナの試合が始まったのかな? 


 中のほうを見てみると、ユウナと対戦相手の男が向かい合っていた。どうやらこれから始まるところみたいだ。


「それにしてもユウナの相手魔法使いには見えないほどガタイがいいな。まあ、ユウナにしてみれば相手なんてどうでもいいことか」


 開始の合図が聞こえた。試合開始だ。


 相手の男が開始と同時に力を溜めだしている。何か高位の魔法でも繰り出すつもりあのだろうか? なんにせよ、溜めがある時点でユウナには勝てないだろうな。ユウナなんてあほみたいな威力の魔法を「ていっ」とか言って使ってるんだから。もうすでに格が違う。


 ユウナも毎回速攻でかたづけるのも面白くないのか知らないが、相手の魔法の発動を待っている。単に気になるだけかもしれないけど。俺もちょっとどんな魔法を使うのか見てみたいな。


 お、溜めが終わったみたいだぞ。すごい勝ち誇った表情をしている。まさに「わざわざ俺の魔法の溜め時間を待つとはな」とか言ってそうだ。そんな表情である。


 男が手を上にかざすと、二メートルほどの大きさの炎の玉が出現した。あれは、なんて名前の魔法なんだろうか? ファイアボールにしてはたぶんでかいよな。ファイアボムとかか?


 俺のほうからユウナの表情は見えないが後ろ姿だけでもなんだか怒ってそうだ。


 男が炎の玉を放とうとした瞬間、ユウナの手が光り、俺に打ったライトニングボルトのような魔法を放った。すると男が炎の玉を放つよりも先に炸裂し、男はぶっ倒れた。炎の玉も空中で霧散してしまっている。期待外れだったんだろうなきっと。


 ユウナの勝利を告げるアナウンスがあり、ユウナはゆっくりと俺のほうへ帰ってきた。


「なによあのしょっぼい魔法は! あの程度の魔法を見るために私はわざわざあいつの溜めを待ったわけじゃないわ。もっとすごいやつが出てくるかと思ってたのにとんだ期待はずれだわ」


 俺の予想はどうやら大体当たっていたようだ。ユウナにしてみればあの程度の魔法はしょぼい魔法になるんだな。かわいそうにあの男。実は意外と強かったりしてな。いや、流石にないか。


「なんだか最後まで撃たせてやるのも癪だったからついやっちゃったわ。もっとド派手な魔法を使う予定だったのに」


「そこだけはあの冒険者に感謝だな。あんまり高威力のはやめとけよ。テリアにまた怒られるぞ」


「私だって暴れたりないのよ。なんで折角の大会なのに手加減しなくちゃいけないのよ。理不尽だわ」


 いや、ユウナの強さのほうが絶対に理不尽だから。


「おいおい、マジかよ。あの火球のベルムの魔法がしょぼいって。一体あの子はどれだけすごい魔法使いなんだ?」


「今までの試合見てたんだがどれもまったく本気出してなさそうだったんだよ。やっぱり手加減してたのか」


 まずい声がでかすぎた。てか火球のベルムって今のやつのことか。あいつ二つ名ついてるのかよ。畜生、ちょっとうらやましい。


「早く、おんぶしなさい。テリアたちのところへ帰るわよ」


「そうだな。俺もここには長居したくないな」


 素早くユウナをおんぶし、待機場を後にした。おそらく何か言われてただろうが、何とか聞こえないよう意識をそらすことに成功した。


「そろそろまともな相手と当たらないものかしら。あの程度で私の相手なんて務まるわけないわ」


「もうあきらめろ。決勝トーナメントまで行けばそれなりのやつとも戦えるだろ」


「それまでは要するに退屈な試合ってことでしょ。はあ、やってられないわ」


 俺も似たようなもんだけどな。俺の場合は強いやつと戦いたいってのがないからましなのか?


「二人が帰ってきました。ユウナお疲れ様です。相手の炎魔法意外とすごかったですね」


「は? 何言ってるの? あれくらいの魔法なら一瞬で撃てるわよ。あれに溜めをようしている時点で駄目ね」


「ユウナ基準で測ったら大抵の冒険者は駄目駄目だよ。あれでもBランクの上位なんだよ。たまに名前も聞くし」


 流石にAランク冒険者じゃなかったか。Aランクにしてはしょぼいなと思ったんだよ。でもあの魔法もパーティで行動すれば溜める時間も稼げるのか。でも溜めがないに越したことは無いよな。


「これで全員が四回戦突破だよ。次の試合もこの調子で頑張ろう!!」


 モエナも次はまだSランク冒険者と当たらないもんな。でも、テリアもだけど、俺、モエナがSランク冒険者にやられたりしたら試合に乱入しちゃうかもな。ユウナに我慢しろっていってるのに俺も我慢だな。

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