王都到着
「助けて、もう無理……落ちちゃう」
ユウナが弱々しい声でそう訴えている。
まあ、ユウナの体力でよく持ったほうだろう。もうフォーリスを出て、五時間は経っている。俺が風避けになっているというのもあるだろうが、頑張っていると思う。
辺りはもうすっかり暗くなっており、俺も正直そろそろ一休みしたいところだ。夜通し走り続けるというのなら、ルリのほうに一人移ったほうがいいのだが……ポンコツなことがばれてしまったルリとは乗りたくないのもわかるんだよな。でもしょうがないよな。
「一回休憩しとくか? たぶん、今日は夜通し走ることになりそうだし休まないときついだろ」
「そうね、私も本当に限界」
「ユウナは情けないですね。私はまだまだ全然余裕ですよ」
ユウナは本当につらそうなんだが、俺に体を預けているテリアは余計な体力も消費していないようでけろっとしている。前後でこの差はかわいそうだ。まあ、テリアのほうが体が小さいからこうなっているわけでユウナは俺の前に納まるかと言ったらかなり微妙なところではあるが密着すれば何とかなりそうではある。しかし、テリアが譲るかという問題はあるが。
「おーい、ルリ。ちょっと一回休憩しないか? ユウナが疲れて限界みたいなんだ」
俺は横を走っているルリに少し大きめの声で話しかけた。
「そうだね、ユウナのことを考えるとこのあたりで休憩しておくほうがいいかな」
ルリもユウナの体力のなさは知っているので、すぐに了承してくれた。
とりあえずリザードランナーを止め、道の脇に座り、休憩をすることになった。
「やっと休憩できるわ、本当に疲れた。もう私、あれに乗りたくない」
「なにを言ってるんですか? そうなったらここで野宿することになりますよ」
「そうだよ、ユウナ。この調子なら明日の夜明けにはつけると思うし、頑張ってよ」
ユウナがもう嫌だと駄々をこねだしたが、ルリとテリアは野宿が嫌なようで納得してくれそうもない。かく言う俺も野宿よりは夜通し走って王都でフカフカなベットで眠りたい。でも、ユウナの体力が限界なのも事実だ。
「テリアはちょっとルリと乗ってくれ、ユウナを俺の前に乗せるから。それならユウナも疲れないでいいだろ」
「ええぇー、すごく快適だったのにぃ…………」
「頼むよ、テリアだって野宿はしたくないだろ」
「まあ、それはそうですが……はあ、わかりました。私はもう十分堪能しましたし、後はユウナに譲ってあげますよ」
なんだかんだ言って、毎回テリアはこういう時は折れてくれるから助かる。どこかの天使は無駄にごねてくるからなぁ。ユウナもこれなら流石に疲れないだろう。
「だってよ、よかったなユウナ」
「私がセンヤの前に乗らないといけないの? 後ろからこいつに抱き着かれるのは嫌なんだけど」
「ああ、そうか、ならさっきまでと一緒でいいな」
「いや、冗談よ。いつものお約束じゃない。ありがたく前に座らせてもらうわ」
最近こいつの扱いにも慣れてきたような気がする。後ろで捕まっているのはさぞかし体力を使うんだろう。すぐに態度を変えてきた。もうなんかいつもはイラつくだけなんだが、一周回ってかわいく見えてきたわ。俺ももう末期か……。
「そういうことならテリアは私の前に乗るといいよ。それならさっきまでと大して変わらないよね」
「少し不安ではありますが仕方ありません。ルリの慎ましい胸で我慢します」
「別に私はそんなに小さくないから。まだ成長中なんだから」
テリアにからかわれたルリが顔を真っ赤にして反論している。俺もちょっと気まずくなるからそういう話はやめてほしいんだけど。それか俺のいないときにしろよ。
「それじゃあ、再出発するか」
「そうだね、ユウナももう平気?」
「全然。でも体力使わなくて済むんなら大丈夫よ」
俺とユウナ、テリアとルリという二人組に分かれて乗ることになった。普通は二人ずつなんだろうけど、今までがあほだったんだよな。
まあ、ユウナは自分の力では上ることすらままならないので、今回も俺が引っ張り上げた。テリアの時はすんなり納まったのだがユウナとなると、少し窮屈だ。手綱を握る関係上俺が後ろに下がるわけにもいかない。それにユウナの身長はテリアよりも高いせいであまり前が見えない。どうせ、俺が支持を出すわけではないので特に支障はないのだが、ユウナもよっぽど疲れていたのか俺に体を預けてきている。テリアの時もだが、なんかいい匂いがするんだよな。
「大丈夫か? 行けそうか」
「これ思ったよりも快適ね。背もたれもあって完璧だわ。なんで私はさっきまであんな思いをしてたのかしら、馬鹿らしくなってきたわ」
どうやらかなりご満悦なようだ。俺もうれしい限りですよ、ユウナ様。
「疲れたんなら寝ててもいいぞ、着いたら起こしてやるから」
「そんなこと言って、私が寝たら変なことする気でしょ。その手には乗らないわよ」
そんなつもりで行ったんじゃないんだが……心からのやさしさですよ。
それから走り出して数分でユウナは普通に寝ていた。…………でしょうね。絶対寝ると思ってたわ。
横を見るとルリの腕の中でテリアも眠ってしまっていた。俺とルリは互いを見て苦笑である。どうも俺たちはこういう少しそんな役目を今後も負っていくのだろう。
――――それから走ること数時間。
「あ、見えてきたよ」
俺も徹夜にはあまり慣れていないので何とか起きている状態で、少し頭がぼんやりとしていた。ルリの声に反応し、周囲を囲む外壁よりも高い城の姿が目に映った。
すげえ、アニメとかで出てくる城そのものだ。うわぁ、なんか感動する。これで俺もやっとフカフカのベットで寝れる。ああぁ、ほんと疲れたぁ。




