武器を買おう
大会が終わった後は賞金を受け取り、祝勝会などもせずにそのまま宿に帰った。
しょうもないことをして金を減らすのは馬鹿らしいしな。それよりも少しでもいい武器を買うほうが大事だ。
俺も今日は疲れたのでさっさと寝ることにした。廊下でな。
「ちょっと早く起きなさいよ。武器を買いに行くんでしょ」
いつも俺が起きる時間よりもかなり早くにユウナに起こされた。なんでこんなに早く起きてんだこいつ? もしかしてユウナも武器買いに行きたくてしょうがなかったのか? 全然そんな素振り見せてなかったけどな。そうならそうと言えよ。でも流石にこんなに早い時間に武器屋って空いてるのか?
「いくら何でも早すぎないか? こんな時間に空いてんのか?」
「あんたは今何時だと思ってるの? もう十時過ぎよ……まったく、誰も起きないから私が一番に起きて二人を起こさなきゃならなかったんだから」
うそ、もう十時なの? 俺そんなに疲れてたのか? うれしくて感覚がマヒしてたのかな? 確かに俺もテリアの魔法を受けて、いつもよりもすごい力を出したしな。そりゃ、体も疲れるか。
「悪かったな、いつも勝手に目が覚めるから目覚ましとかかけないんだよ。テリアは起きてるのか?」
「うん、さっきまでなかなか起きなくて苦戦してたんだけどね。ほっぺをペチペチしたら起きたわ」
そうか、じゃあ今日は俺が最後だったんだな。まあいつもは一番に起きてるんだから今日くらい多めに見てほしいところだ。
「それじゃあ、さっさと準備して武器買いに行きますか」
素早く支度を済ませ、武器屋の集まっている場所に向かった。
「そういえば、センヤはどの武器使うか決めたの?」
「あ、やば。完全に忘れてた。買えるってことばかり考えてて浮かれてたわ」
「そんなことだろうと思ってたわ。私とテリアであんたの武器決めてあげたから、どうせ決まらないんだしそれにしなさい」
「今回大活躍だったセンヤさんのために考えてあげたんですよ、どうですか? 気が利くでしょう」
その一言がなければもっと感謝してたわ。でも、俺がこのまま悩んだところでどうせ決まらなかっただろうしな。今回は二人の決めた武器を使ってみるか。
「いや、マジで助かるわ。今回は任せるよ」
「まずはセンヤの武器から買いに行きましょう」
「いいのか、選んでもらうだけじゃなくて一番になんて」
「今回はセンヤさんのおかげですし、当然ですよ」
今日はなんか二人がすごく優しい。やっぱり昨日の釣り大会で優勝できて本当によかった。どの武器なんだろうとわくわくしながら歩いていると、ユウナがここよっと言って立ち止まった。
グローブの専門店と看板に書かれていた。
「グローブってあれか、手にはめるグローブか?」
「それ以外にどのグローブがあるのよ。あんたのことだから下手に剣とか買ったところでそのあほみたいな身体能力のせいですぐにへし折るだけでしょ。だから、こういうののほうがいいかと思ったの」
確かに俺剣とか使ったことないし、加減とかもできないだろうな。それでグローブか……それじゃほぼ素手じゃん。つける意味あるのか?
「まあ、とりあえず入って見てみるか。どんなのがあるかわからないし」
実際に見てみないことにはわからないので店に入ることにした。中に入ってみるとたくさんグローブが棚に並べられていた。
すごい種類だな。ここも二人と一緒に入ってなきゃ、どれにするか一生決めれない自信あるわ。マジで俺だめだな。
「俺はこの種類の多さから選ぶのは無理だ。悪いけど二人で選んでくれないか?」
「まったくしょうがないですね、私たちが選んであげますよ」
一応、自分でもいい感じのを探しながら二人が選んでくれるのを待った。
それにしてもほんとにいろいろあるな。こっちのは完全に金属でできてるし、こっちのはモンスターの皮のようなものでできている。どちらかといったら皮のほうがいいかな。なんか金属だと殴った時痛そうだし、でも威力だと金属のほうが上なのかな……やっぱり決めれないな。
「決まりましたよセンヤさん。見てください、これとかどうですか」
テリアが俺のほうにグローブを見せてきた。
見た感じ指先がでるタイプの手袋だ。これは予想外だ、こんなのもあるんだな。でもこっちのほうがいつもつけたままで日常生活に支障も出ないし、そう考えるとありか。攻撃力よりも自由度ってことか。まあせっかく選んでくれたことだしこれにするか。
「ありがとう、じゃあ俺これ買ってくるよ」
グローブを受け取ろうと手を伸ばしたらサッとよけられた。え、なんでよけるんだ。
俺が手を出したのが想定外だったのか少し焦ってるし。そんなに手に触られたくない……ほんとに泣くよ。
「いいですよ、私が会計してきますからお金だけ渡してくれれば。ちょうど三十万Rです」
そう言うと今度はひっこめた手を出してきた。手に触れられなくなかったみたいで一安心だが、すごい怪しい。いくら俺でも会計くらいできるっていうのに。しかもこれで三十万ってそんなに上質な素材を使ってるのか?
「おい、お前らなんかおかしくないか。今日だけ妙に優しいし、絶対なんか企んでるだろ」
二人がビクッと肩を震わせた。もうバレバレだな。それにしても何を企んでたんだろうか? まあ問いただせばいいわかることか。
「お前らバレバレだからもう正直に白状しろよ。何しようとしてたんだ? はやく言わないともうおんぶしてやらないからな」
冗談のつもりでまずはおんぶをしないというどうでもいい脅しをかけた。でもどうやって白状させるか? 脅せる材料なんて俺にはないんだよな。パーティ抜けるとか言ってみるか?
「フンっそれがどうしたのよ。そんなのどうでもいいわよ、ねえテリア」
「正直に言うんでそれだけはどうか勘弁してください」
「え、なに言ってるのよ。おんぶとかどうでもいいでしょ。落ち着きなさいテリア」
まさかおんぶしないっていうだけで白状してくれるとは、俺のおんぶ最強だな。また今度こういうことがあったら使おう。
ユウナがテリアを必死に止めていたが気にせずテリアは話し始めた。こんなに必死に止めてる時点で認めたようなもんだろ。
「実は今日朝ユウナに起こされて、センヤはどうせ武器決められないから、私たちで決めてあげましょうって言われたんです。そして安いやつを選んで余ったお金を私たちの武器代にあてようって」
「私はそんなこと言ってないわ」
ユウナは何も知らない雰囲気を出しているがもう色々と手遅れだ
「ユウナ、もうやめましょう。今回は流石に私たちが悪いです」
ひど!! しかもせこいわ!! 俺マジで二人が優しくてうれしかったのに。どうせ俺から金をだまし取ってもそんなにいい武器買えるわけじゃないだろ。何してんだよ……。
「もう俺本当に泣くよ。さすがに俺のこといじめすぎだろ。そんなに恨まれるようなことしたか? 俺」
「本当にごめんなさい……。ちゃんと選びなおしてきます」
テリアが少し泣きそうになりながら謝ってきた。
「いいよ、俺はそれで。安いやつだから選んだかもしれないけど、二人が選んでくれたってことには変わりないだろ。余った金はお前らの武器に使っていいよ。でも生活費は残せよ」
ここで怒ってもあんまり意味ないし、実際選んでくれたこと自体はマジでうれしかったからな。
「そんな、悪いですよ。私たちもとりあえずは必要最低限の武器にしておきます」
そんなこんなで全員分の武器を買い終わった。俺はグローブ、ユウナは杖、テリアは普通サイズの剣になった。あと俺のグローブは三万Rだった。
いくら何でも十倍はやりすぎだろ。結局三人合わせて十万ちょっとで済んだ。昨日祝勝会をしなかった意味だろ、まったく。
ユウナはいいのが欲しいって駄々をこねてたけどテリアに怒られて結局一番安いのになったがな。ちなみに俺のグローブよりも安かった。




