20話 ミディアムと夕食
俺はこの街で有名な食事処にきた。お目当てはカップル限定スペシャルディナーコース限定五組コースだ。この街に来てから気になっていたのだ。だがあいにく俺にはそういったツレはいない。そんな時に彼女が現れた。これは食べに行けという天啓じゃないかと俺は思った。
「あの……なにか…………お話があるんですか?」
ミディアムはとって喰われるんじゃないかと思っているのか、緊張した顔持ちになっている。
「ご注文はいかがなさいます?」
っとウェイターが注文を取りに来たので
「限定スペシャルコース2つ」
ミディアムの話を無視してメニューを開きながらウェイター に向かってそう注文に答えた。
「は、はぁ……それ頼むんですか? ちょっと食事するだけじゃないですか? これ8000ズラって…………」
一般宿の定食が1000ズラ前後という中での破格の金額に驚愕しているように見えた。
「気にするな、俺のおごりだから」
俺は男らしくそういった。
「お、おごりって…………なんで……、こんな、私に」
期待となにかされるじゃないかと言う不安が入り混じった
「期間限定のスペシャルペアコースがあるんだが、男一人で食うわけにも行かないだろう」
「変なところで小心者なんですね。変態なのに。そういうのはクリスティーナさんとか誘えば良いんじゃないですか?」
クスッと笑ってミディアムはそう答えた。
クリスかぁ、助けた借りがあったとしても出会ったばっかりだし、気を使うしな。
「とりあえず、誘いやすい娘って言ったら思いつくのがおまえだったんだ」
「…………」
「何感動してるんだ?」
「唖然としているんです‼ 適当に選ばれたってことに……」
「ほかに、なにがあるんだ?」
「それは……まぁ……」
「おまたせしました、こちらお料理です」
スープにメインの肉料理、魚料理が運ばれてきた。
「おおこれはすごい」
テーブルに並ぶ豪勢な食事に俺は息を呑む。
「私、男の子と一緒に食事するの初めて…………」
ミディアムは頬を赤らめて消え入るような声でそういった。
「え、えっ…………なにか言ったか?」
俺は聞こえないふりをした。
「…………………………………………」
「…………………………………………」
長い沈黙が流れた
「先輩……これ美味しいですね」
「ああ、うまいな」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
またも沈黙が流れたがミディアムの方から切り出した。
「あのぅ先輩、私のことを、どういう目で見てるんですか!?」
「あぶなかっしくてほっとけない年下の女の子……泣かせる野郎がいたらはっ倒してやる。そうだな……妹かな。妹にしたい。妹になってくれ」
「ババ……、バカなんですか!? 変態なんすか? この歳にもなって、妹にしたいとか言う人いますか? …………あっ、ここにいました!! せせせ、先輩! な、なんであなたはそうなんですか!」
「妹がいれば、いつでも、おにいちゃんってパンツくれるだろう?」
「はっあぁ、先輩の変態話に付き合わされる、私の身にもなってください」
「それはそうと、これをお前に」
俺は髪飾りを渡した。この髪飾りは盗賊のアジトにあった宝物で身の危険があると壊れる代わりに一度だけ守ってくれて、対になるアイテムに危機を知らせてくれるものである。
「この髪飾りは…………」
「ゴブリンといい、今回の盗賊といいお前は危なすぎだ。それがあれば一度は身を守ってくれるだろう。ただ強くなれ。クリスティーナさんがエミュールで修行するそうだから、お前も行って修行するんだ。エミュールまでの費用は俺が持つ」
「先輩…………」
ミディアムは目をうるませてこちらを見ていたが、それを遮るように
「こちらデザートです」
とウエイターが言うとでっかいホールケーキがやってきた。この店の自慢の一品だそうだ。実は俺は男のくせして大の甘党だ。そう、感傷に浸っていると俺が手を付ける前に先にミディアムが食べていた。
「先輩、これおいいしですよ。たべないんですか?」
「ああ、うまいな」
食事を終えると俺はミディアムに明後日出発すると告げ、別れた。ヘルツベリ公爵邸の使用人とタナトスさんにも明後日出発することをつげ、宿で就寝するのであった。
九日/一四日タイムリミットまで、残り五日




