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Pora-Stars  作者: 御月さくら
二人の距離、わずか一枚
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2. 星空の舞台で会いましょう (1)

 『Pola☆staRのスターライトステージ』は、地域密着型(コミュニティ)FMにて、平日十八時から放送されている生放送のラジオ番組で、冠が付いている通り、Pola☆staRのメンバーが日替わりでパーソナリティを務めていた。


 また放送の模様は市内唯一のショッピングモール、その広場の外周に設置されたサテライトスタジオの周りでで視聴することができる。


 わたしの担当は末引く一の木曜日。よく聞かれるのだけど、誰が何曜日の担当なのかは人気順でも、ステージの並び順でもなく、ただのくじ引きで決まったのは公然の秘密である。公然なのはそのくじ引きが定期ライブの一幕として行われたので、放送開始前からのファンは知っているはず。


 でも、何故か未だに人気が末だから木曜日なんだと言われている、何故だ……。


 などと考えながら、タイトルコールに続いて流れ始めたわたし達のメジャーデビュー曲、『Star☆Light』に合わせてわたしは体を揺らしていた。


 曲を聴くだけで身体を動かしたくなってくるのは、もはや癖というか職業病だなあ。いい意味で言えば身体に染み付いているということなのかもしれないが、これから持ち歌が増えるたびに条件反射が増えていくのはちょっと嫌かも。もちろん、それだけ歌わせてもらえるならこんなに幸せなことはないと思うけれど。


 一番が終わりゆっくりとフェードアウトしていく曲に名残惜しさを感じながら、わたしはスイッチを上げ、マイクに向かって言葉を紡ぐ。


「こんばんは、速水陽菜です~。今週も終盤戦に差し掛かってきましたが、皆様いかがお過ごしですか? 今週は、わたしは毎日ダンスのレッスン漬けでした。……というのもレッスン中、見学に来ていたプロデューサーの足を踏んでしまったのが原因で。もちろん何度も謝ったんですけど、もう本当、鬼ってああいう顔をするんだろうなと想像していた顔を、さらに二倍怖くした顔で怒られまして、確かに悪いのはわたしですけど、あんなに怒らなくてもいいじゃないですか、ねえ」


 窓の外でうんうんと頷いてくれるファンの皆に安心していると、急に強い視線を感じてわたしはコントロールルームをちらりと見た。そこには――なんと、そのプロデューサーが苦笑を浮かべたのが見えた。しまった、てっきり今日はいないものだって思ってたんだけど――またこれでレッスン時間を増やされたりしないといい……あ、あとで覚えてろって顔してる。


 もう、やっぱりままならないなぁ――いやまあ、これは自業自得かもしれないけれど。


「というわけで、今週のテーマは『あなたの失敗談』です。わたしに負けないような失敗談をどしどし送ってくださいね。それではこれからの一時間、ままならないことだらけの日常を今は忘れて、陽菜のステージを楽しんでいってください!」


 忘れずマイクをオフにして、わたしは小さく深呼吸。そういえば、以前メンバーの一人がマイクを下ろし忘れ、盛大なため息が電波に乗ってしまったことがあったっけ。


 曲がかかっている最中だったので大事には至らなかったのは幸いだったけれど、それからしばらくの間、ゲストと称してメンバーが持ち回りで彼女が仕出かさないか、監視させられたことがあった。


 当時は不慣れだったらこともあって、仕方ないよねで済んだけれど、もし今同じことをやったらプロデューサーの顰蹙(ひんしゅく)を買うだけでは済まないので、本当に気をつけないと。


 まもなくCMが終わるとの合図がモニター室から発せられた。


 わたしは小さく頷き返すと、マイクのスイッチに手をかけてその時を待つ。CM明けはふつおたのコーナー、さて今日は何枚読めるかな。もちろん目標は全部だけど、どうしてもトークが盛り上がって、読む時間がなくなっちゃうんだよね。時間が余っちゃうよりはいいかもしれないけど、それでもやはり悔しさが残る。


 さあ、今日もよろしくね、と手元にプリントされたメールの束に触れながら、タイミングを合わせてスイッチを押し上げた。

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