最終話 僕達は……
1年と少し書き続けてきましたが、これが最終話です。
読んでくれた皆様に感謝です。
氷漬けにされたミカエル。すると皆んなが集まってくる。
「ミカエル……。」
「あ、ごめん。ちょっとやり過ぎちゃったかな?」
サリエルさんが口を押さえて、顔を伏せる。街を任せたとか言ってたし、もしかしたら怖いがっていたのか……
「二度も氷漬け……ふふ。」
「え?」
「不憫で面白すぎます。ふふふ。」
笑っていた。どうやら僕の思い過ごしだったみたいだ。少し安心した。
「なんか逆に可哀想になってきたね。私直してあげた方がいいかな?」
「栄理が気を使う事はないだろう。それに氷が溶けてまた攻撃してくるかもしれん。」
「そうかな?HPとか大丈夫なのかな?」
母さんが心配そうに氷漬けのミカエルを観る……龍眼を使ったのか、一瞬ミカエルが驚いた様な見える。目も反らせないし、これって……。
「氷塊と衰弱に……恐怖?」
「「「「…………。」」」」
その能力を知っている僕とシー、父さんとクロイが目を伏せる。哀れミカエル……。とりあえずHP的に問題ないから放って置く事にした。
「これからどうする?」
「どうするって、ミカエルが襲いに行くのを阻止しに来たわけだし。本人これじゃ確認できないよね?」
「シーの言う通りか。これ溶かす?」
「その前に確認する事があるかと。」
クロイが咳払い一つして、周りを見始める。
その目を追って周りを見渡す。
「こんなに街が壊れてたんだ。」
「「「…………。」」」
皆んなが僕に視線を集める。え?何?
「これミカエルもそうだけど、ソラヤも半分とまではいかないけど壊してるよね?」
「流石にそれは言い過ぎだよシー。」
「ではわたくしが説明しましょう。」
そしてクロイが語る僕とミカエルの激戦を……。
「まずは飛んでいく斬撃です。」
「そんなアニメやゲームじゃないんだから……。」
指差された方向を見る。ちょっと遠いけどよーく見ると、建物が鋭利な何かによって切断された感じに。
「あれ?何かに斬られたみたいに。」
「それはソラヤです。そして次に剣と剣が合わさる衝撃波。それは今立っている足元と周りを見れば説明は要りませんね。」
おう。まさかこんな事になっているとは。
「戦いが面白くなって、仲間以外の周りなんて気にしてなかった。」
「わたくし達も巻き込まれぬ様、あそこまで離れていましたから。」
「……遠いね。」
「飛ぶ斬撃を見た時は焦りましたな。サリエルさんとリナさんが先頭で守ると言ってくれましたので、そこまで大事には至りませんでしたが。」
「え?こっちに攻撃来た?」
迷惑かけたか気になり、サリエルさんとリナに聞く。
『我らの所にはミカエルの攻撃すら届かなかったぞ。』
「ソラヤは斬り落とすか、跳ね返すしかしてませんよ。なのでソラヤの後方は綺麗なものです。後方は。」
大事な事なので2回言いました的なあれ?……ごめんなさい。
「まぁ街は放っておいていいので。」
「そういう訳には……。」
「そうですね……ミカエルが壊した人間の建物は誰が直しているのですか?」
「え?人間だと思うけど。」
「では魔界の方は?」
「魔族だね。」
「ですので。これを直すのは天使の役目です。」
「あ、はい。」
言い負かされた?気にしない様にサリエルさんが気を遣ってくれたんだろう。そしたら素直に受け取るとしよう。
そしてこのままここにミカエル置いておけば、いずれ氷は溶ける。だけど僕に負けたからと言って、侵略を止めるか分からない。しばらくは街を修復したりするから、大丈夫だと思うけど。
「凍って喋れないと話し進まないね。」
「ほほ。溶かしましょうか?」
この規模の氷を溶かすとなると、それなりの炎が必要だな。まぁクロイなら問題ないか。
「待て待て。そんなものここで使うな。街まで燃やす気か?」
「大丈夫ですぞ、ローゼ。」
「何がだ?」
「水魔法も用意しますので。」
「燃やす気満々だな!却下だ。」
手に赤い炎を纏っていたが無くなった。
「全くこの兄弟は壊すことばかり得意で……父の様に直す事は覚えなかったのか?」
「「…………あ、父さんの事か。」」
「ゴウ以外に誰の事だと思ったのだ?」
「む?直すのは俺の仕事だ。」
「はぁゴウさんが優しいのは分かりましたよ。」
ローゼが肩を落とす。
「2人とも親の手伝いとかしないの?」
「そう言えば僕はした事ないな。」
「わたくしはお茶を淹れたり、金銭の管理をしていましたな。」
「クロイはそんな感じがするわね。ソラヤは伸び伸び育ったから、こんな破天荒…暴れん坊…素直になったのね。」
「ローゼ、全部口に出てるよ。」
前の環境だと学校行って、家に帰ってゲームだったからな。後は友達と遊んだり。家の仕事なんて一つもした記憶がない。
「ソラヤは学生なのでそれで良かったのです。身の回りの世話は執事の仕事ですぞ。」
「うん。でも少しは自分でも出来るように頑張るよ。」
考えている事がバレたか、クロイがフォローしてくれる。でもこのまま甘えるのもいけないよね。皆んなに少しでも恩返しが出来るよう少しずつ覚えていこう。
「執事?クロイは執事なのか?」
「「「……。」」」
「……ほほ。将来執事になりたいのです。」
「え?そんな魔法が使えて執事とかダメだろう。」
「そんなものですかね?先の事ですし、今はこれからの事を話しましょうか。」
流石はクロイ。脱線してきた話を元に戻した。
「それじゃ、砕こう。」
「ミカエルごと割りそうね。」
シーが拳を構えて、ナイトがすかさずツッコむ。割れた先の未来を想像して…………やめよう。
「僕が剣で斬り落としていくのは?」
「こんな大きい氷をどうやって?」
「こうやって。」
―タン。シュン……。
僕は軽くジャンプして、ミカエルに当たらない高さの氷に向かって、メイクが作ったナイフで横薙ぎに斬る。
―スパ……
「こうやって斬る……。」
―ズドォォン!
「ずどん?」
そして皆んなが音のする方へ顔を向ける。屋根のない家の地上に何かが落ちた土煙が上がる。
「……。」
「ソラヤ……メイクにナイフを返しなさい。」
「はい、すいませんでした。」
出来る気がしたから調子に乗りました。天使の皆様ごめんなさい。
『全くソラヤは加減を知らんのだな。見ておれ……龍破掌!振!』
―ズグゥゥン!ピシ……パリィィン!
「師匠!今のは!?」
『今のは龍破掌の派生で、物に波長を流し振動によって破壊する技よ。』
「凄い!氷だけ砕いて、中の人に全くダ……」
「がふぅ!!!」
「「「ダメージいってるー!!??」」」
『ん?加減間違ったか?』
急ぎ母さんが治療した事で大事に至らなかった。危うく真相が闇に葬られる所だった。
「し、死ぬ……。」
「はいはい。生きてますよ〜。」
「え?あ、すまぬ。助かった。」
「どう致しまして。一応HPは……大丈夫だね。消えてない異常があるけど、直し方分からないからごめんね。」
「いえ!直して頂けただけでも有難いです!」
元気に立ち上がり敬礼するミカエル。あれは無理に立ってでも母さんの目を逸らす為。それを知っているのはごく一部の仲間だけ……。
「ミカエルに聞きたいんだけど。」
「先の戦いでも気になったが、人間が私を呼び捨てに……。」
「……ミカエルはもう人間界に攻めたりしない?」
「無視か……。」
呆れた様子だけど、どこか本気で怒ってないから。このまま突き通す事にした。
「この街の状態、同族も消耗しているこの状況。これで攻める程の愚策はやらん。」
「そう。なら良いか。」
「それに貴様を倒す算段を考えねばならんのでな。今の私では制圧する事も出来んだろう。」
「僕を倒すね……。」
それを僕に言っていいのか?まぁいいから僕に言っているのか。
「ソラヤ。私にいい方法があります。」
「いい方法?」
「はい。ミカエルを倒しましょう。そうすればもう襲う事を考える者もいません。」
「サリエル、貴様……。」
「サリエルさんはきつい事言うね。でもとりあえずはこのままで。」
「ソラヤが言うのであれば仕方がありませんね。良かったですねミカエル。」
「ああ…………これ喜ぶところか?」
確かに原因を経てば解決する可能性もある。だけど僕を倒す算段が無い限り、攻めたりしないと言ってる訳だし。とりあえず僕が死んじゃうまでは安全って事で、ミカエルはそのままにする。
「僕を倒すまで攻めないって考えるなら、もっと強く慣ればしばらくは平気でしょうし。」
「貴様はまだ強くなろうとするのか?」
「だって全力出すと体に頭が全然追いつかないし。速さを落としてさっきのが精一杯だし。」
「全力を出してないであの動き……。」
「ソラヤも結構酷いと私は思うのですが。」
「そんな事ないでしょサリエルさん。」
しかし皆んなは首を振る。あれ?
…。
……。
…………。
「さて、問題も一つ片付いたし。どこ行こうか。サリエルさんは行きたい所ある?」
「え?私もですか?」
「うん。問題が片付いたら、迎えに行くつもりだったけど。いるからこのまま行こうかと。」
「迎えに……ちょっと考えます!えーっと、うーん。行った事無い所であれば?」
サリエルさんが行った事無い所か。そうなると天界以外?あ、聞けばいいか。
「行った事ある場所は?」
「原初の森と天界の所々ですかね。」
「そうなると、ここだと被るとこが出てくるか。」
「ソラヤ……私も一つ意見があるのだが。」
おずおずと手を挙げるナイト。あまり積極的に意見なんて珍しい。
「魔界は止めないか?私達はかなり行った事あるし。それにマレットは住んでいた訳だし。」
「そう?僕も少ししか回ってないから行っても良いかなって思ってたけど。魔界は広いでしょ?」
「そうなのだが、そうじゃ無いのだ!」
「ソラヤくん。フリージュ姉さんはただ家から少しでも離れたいだけだよ。」
「マレットぉ!?」
慌てるナイト。そんなナイトを余所に話を続ける。
「家を飛び出して、ソラヤくんの仲間って見逃した感じだし。家に帰れば連れ戻されなくても少し怒られるだろうから。」
「ぐぬぬ。マレットだって今魔界に行けば英雄として持て囃されるわよ!」
「そ、そんな事は……無いですよね?」
「それは確かにあるだろうね。分かったから、そんな顔しないの2人共。」
とりあえず魔界は無くなった。まぁ落ち着いたら行けばいいし。そうなると人間界か龍の郷の方か。
「それなら人間界も、今はやめた方がいいかもな。」
「なんで?」
「王都があの状況だ。しばらく観光などは難しいだろう。」
「ローゼの言う通りかもね。でもその復旧を手伝うって選択もあるんだけど……。」
そうなると皆んな自分の国を直すのが道理な訳で。それだとこのパーティバラバラになる気がするし。
「これは僕のわがままなんだけど。冒険者であるからには旅はしたいんだよね。」
「ほほ。わたくしもそれには賛成ですぞ。」
「私は空ちゃんと入れれば何処でもいいよ。」
「私も栄理と同じ意見だ。」
「ソラヤの好きにして良いと思いますぞ。わたくし達に帰る家は無いですし。ソラヤが居るところが家みたいなものです。」
僕の好きにして良いか。クロイの言う家は家族がいる所であり、今はこのパーティが僕の仲間であり家族だ。
「リナはどうしたい?」
『我はソラヤに着いて行くだけ。クロイの言葉を借りると、何処ではなく誰が重要だと思っている。』
「そっか……。」
メイクと目が合う。何も言わずに笑って返してくれる。
シーと目が合う。何も言わずに頷いてくれる。
2人に何も聞かないのは、僕の中で決まった答えが来るから。2人もきっと同じ事を思ってくれている。
「決めた。」
もう一度パーティの仲間を、いや……家族を見る。
「龍の郷に行こう。理由は一つ。僕が行った事無いから!」
「ほほ。それで良いのですよ。」
クロイが優しく微笑む。向こうの世界でいつも向けてくれた温かくて、くすぐったい顔で。
「いつでもいけるよ!」
「そんなにはしゃぐなよ。転ぶぞ。」
いつも優しい栄姉は元気一杯だ。その横で豪兄ははしゃぐ栄姉を心配しながら笑いかけている。
「ついに龍の郷か。そう言えば出会った頃に、そこに行きたいとか言ってた気がするな。懐かしい。」
ローゼと出会ってそんなに経ってないけど、懐かしいと僕も思った。
「私は魔界じゃなきゃ何処でも良いわ。」
「僕はソラヤくんと……違うかな、ここにいる皆んなと一緒なら。」
ナイトはクロイが作った闇魔法で出てきた。それから僕らの良きお姉さんとして一緒に色々手伝ってくれる。
『早く行こうぞ。人間の寿命は少ないのであろう?』
急かしてくるリナ。そんなリナちは魔界で戦って以来僕に着いてきてくれる。
「「ソラヤ。」」
皆んな歩き始めていて、シーとメイクに手を差し伸べられる。
その手を掴み歩き出す。
これから先何があるのだろうか。
いざ冒険の世界へ!?
そう僕達は……永遠の旅人である。
お話はこれで完結です。
時間ができた時、もしかしたら後日談の様なものを書くかもです。
最後まで読んでくれてありがとうございました(=´∀`)人(´∀`=)
次回作は年号変わった後に!平成最後の投稿でしたw




