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少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜  作者: みけな
第四章 人間と天使と神様と。
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最終話 僕達は……

1年と少し書き続けてきましたが、これが最終話です。

読んでくれた皆様に感謝です。

 氷漬けにされたミカエル。すると皆んなが集まってくる。


「ミカエル……。」

「あ、ごめん。ちょっとやり過ぎちゃったかな?」


 サリエルさんが口を押さえて、顔を伏せる。街を任せたとか言ってたし、もしかしたら怖いがっていたのか……


「二度も氷漬け……ふふ。」

「え?」

「不憫で面白すぎます。ふふふ。」


 笑っていた。どうやら僕の思い過ごしだったみたいだ。少し安心した。


「なんか逆に可哀想になってきたね。私直してあげた方がいいかな?」

「栄理が気を使う事はないだろう。それに氷が溶けてまた攻撃してくるかもしれん。」

「そうかな?HPとか大丈夫なのかな?」


 母さんが心配そうに氷漬けのミカエルを観る……龍眼を使ったのか、一瞬ミカエルが驚いた様な見える。目も反らせないし、これって……。


「氷塊と衰弱に……恐怖?」

「「「「…………。」」」」


 その能力を知っている僕とシー、父さんとクロイが目を伏せる。哀れミカエル……。とりあえずHP的に問題ないから放って置く事にした。


「これからどうする?」

「どうするって、ミカエルが襲いに行くのを阻止しに来たわけだし。本人これじゃ確認できないよね?」

「シーの言う通りか。これ溶かす?」

「その前に確認する事があるかと。」


 クロイが咳払い一つして、周りを見始める。


 その目を追って周りを見渡す。


「こんなに街が壊れてたんだ。」

「「「…………。」」」


 皆んなが僕に視線を集める。え?何?


「これミカエルもそうだけど、ソラヤも半分とまではいかないけど壊してるよね?」

「流石にそれは言い過ぎだよシー。」

「ではわたくしが説明しましょう。」


 そしてクロイが語る僕とミカエルの激戦を……。


「まずは飛んでいく斬撃です。」

「そんなアニメやゲームじゃないんだから……。」


 指差された方向を見る。ちょっと遠いけどよーく見ると、建物が鋭利な何かによって切断された感じに。


「あれ?何かに斬られたみたいに。」

「それはソラヤです。そして次に剣と剣が合わさる衝撃波。それは今立っている足元と周りを見れば説明は要りませんね。」


 おう。まさかこんな事になっているとは。


「戦いが面白くなって、仲間以外の周りなんて気にしてなかった。」

「わたくし達も巻き込まれぬ様、あそこまで離れていましたから。」

「……遠いね。」

「飛ぶ斬撃を見た時は焦りましたな。サリエルさんとリナさんが先頭で守ると言ってくれましたので、そこまで大事には至りませんでしたが。」

「え?こっちに攻撃来た?」


 迷惑かけたか気になり、サリエルさんとリナに聞く。


『我らの所にはミカエルの攻撃すら届かなかったぞ。』

「ソラヤは斬り落とすか、跳ね返すしかしてませんよ。なのでソラヤの後方は綺麗なものです。後方は。」


 大事な事なので2回言いました的なあれ?……ごめんなさい。


「まぁ街は放っておいていいので。」

「そういう訳には……。」

「そうですね……ミカエルが壊した人間の建物は誰が直しているのですか?」

「え?人間だと思うけど。」

「では魔界の方は?」

「魔族だね。」

「ですので。これを直すのは天使の役目です。」

「あ、はい。」


 言い負かされた?気にしない様にサリエルさんが気を遣ってくれたんだろう。そしたら素直に受け取るとしよう。


 そしてこのままここにミカエル置いておけば、いずれ氷は溶ける。だけど僕に負けたからと言って、侵略を止めるか分からない。しばらくは街を修復したりするから、大丈夫だと思うけど。


「凍って喋れないと話し進まないね。」

「ほほ。溶かしましょうか?」


 この規模の氷を溶かすとなると、それなりの炎が必要だな。まぁクロイなら問題ないか。


「待て待て。そんなものここで使うな。街まで燃やす気か?」

「大丈夫ですぞ、ローゼ。」

「何がだ?」

「水魔法も用意しますので。」

「燃やす気満々だな!却下だ。」


 手に赤い炎を纏っていたが無くなった。


「全くこの兄弟は壊すことばかり得意で……父の様に直す事は覚えなかったのか?」

「「…………あ、父さんの事か。」」

「ゴウ以外に誰の事だと思ったのだ?」

「む?直すのは俺の仕事だ。」

「はぁゴウさんが優しいのは分かりましたよ。」


 ローゼが肩を落とす。


「2人とも親の手伝いとかしないの?」

「そう言えば僕はした事ないな。」

「わたくしはお茶を淹れたり、金銭の管理をしていましたな。」

「クロイはそんな感じがするわね。ソラヤは伸び伸び育ったから、こんな破天荒…暴れん坊…素直になったのね。」

「ローゼ、全部口に出てるよ。」


 前の環境だと学校行って、家に帰ってゲームだったからな。後は友達と遊んだり。家の仕事なんて一つもした記憶がない。


「ソラヤは学生なのでそれで良かったのです。身の回りの世話は執事の仕事ですぞ。」

「うん。でも少しは自分でも出来るように頑張るよ。」


 考えている事がバレたか、クロイがフォローしてくれる。でもこのまま甘えるのもいけないよね。皆んなに少しでも恩返しが出来るよう少しずつ覚えていこう。


「執事?クロイは執事なのか?」

「「「……。」」」

「……ほほ。将来執事になりたいのです。」

「え?そんな魔法が使えて執事とかダメだろう。」

「そんなものですかね?先の事ですし、今はこれからの事を話しましょうか。」


 流石はクロイ。脱線してきた話を元に戻した。


「それじゃ、砕こう。」

「ミカエルごと割りそうね。」


 シーが拳を構えて、ナイトがすかさずツッコむ。割れた先の未来を想像して…………やめよう。


「僕が剣で斬り落としていくのは?」

「こんな大きい氷をどうやって?」

「こうやって。」


―タン。シュン……。


 僕は軽くジャンプして、ミカエルに当たらない高さの氷に向かって、メイクが作ったナイフで横薙ぎに斬る。


―スパ……


「こうやって斬る……。」


―ズドォォン!


「ずどん?」


 そして皆んなが音のする方へ顔を向ける。屋根のない家の地上に何かが落ちた土煙が上がる。


「……。」

「ソラヤ……メイクにナイフを返しなさい。」

「はい、すいませんでした。」


 出来る気がしたから調子に乗りました。天使の皆様ごめんなさい。


『全くソラヤは加減を知らんのだな。見ておれ……龍破掌!振!』


―ズグゥゥン!ピシ……パリィィン!


「師匠!今のは!?」

『今のは龍破掌の派生で、物に波長を流し振動によって破壊する技よ。』

「凄い!氷だけ砕いて、中の人に全くダ……」

「がふぅ!!!」

「「「ダメージいってるー!!??」」」

『ん?加減間違ったか?』


 急ぎ母さんが治療した事で大事に至らなかった。危うく真相が闇に葬られる所だった。


「し、死ぬ……。」

「はいはい。生きてますよ〜。」

「え?あ、すまぬ。助かった。」

「どう致しまして。一応HPは……大丈夫だね。消えてない異常があるけど、直し方分からないからごめんね。」

「いえ!直して頂けただけでも有難いです!」


 元気に立ち上がり敬礼するミカエル。あれは無理に立ってでも母さんの目を逸らす為。それを知っているのはごく一部の仲間だけ……。


「ミカエルに聞きたいんだけど。」

「先の戦いでも気になったが、人間が私を呼び捨てに……。」

「……ミカエルはもう人間界に攻めたりしない?」

「無視か……。」


 呆れた様子だけど、どこか本気で怒ってないから。このまま突き通す事にした。


「この街の状態、同族も消耗しているこの状況。これで攻める程の愚策はやらん。」

「そう。なら良いか。」

「それに貴様を倒す算段を考えねばならんのでな。今の私では制圧する事も出来んだろう。」

「僕を倒すね……。」


 それを僕に言っていいのか?まぁいいから僕に言っているのか。


「ソラヤ。私にいい方法があります。」

「いい方法?」

「はい。ミカエルを倒しましょう。そうすればもう襲う事を考える者もいません。」

「サリエル、貴様……。」

「サリエルさんはきつい事言うね。でもとりあえずはこのままで。」

「ソラヤが言うのであれば仕方がありませんね。良かったですねミカエル。」

「ああ…………これ喜ぶところか?」


 確かに原因を経てば解決する可能性もある。だけど僕を倒す算段が無い限り、攻めたりしないと言ってる訳だし。とりあえず僕が死んじゃうまでは安全って事で、ミカエルはそのままにする。


「僕を倒すまで攻めないって考えるなら、もっと強く慣ればしばらくは平気でしょうし。」

「貴様はまだ強くなろうとするのか?」

「だって全力出すと体に頭が全然追いつかないし。速さを落としてさっきのが精一杯だし。」

「全力を出してないであの動き……。」

「ソラヤも結構酷いと私は思うのですが。」

「そんな事ないでしょサリエルさん。」


 しかし皆んなは首を振る。あれ?


…。


……。


…………。


「さて、問題も一つ片付いたし。どこ行こうか。サリエルさんは行きたい所ある?」

「え?私もですか?」

「うん。問題が片付いたら、迎えに行くつもりだったけど。いるからこのまま行こうかと。」

「迎えに……ちょっと考えます!えーっと、うーん。行った事無い所であれば?」


 サリエルさんが行った事無い所か。そうなると天界以外?あ、聞けばいいか。


「行った事ある場所は?」

「原初の森と天界の所々ですかね。」

「そうなると、ここだと被るとこが出てくるか。」

「ソラヤ……私も一つ意見があるのだが。」


 おずおずと手を挙げるナイト。あまり積極的に意見なんて珍しい。


「魔界は止めないか?私達はかなり行った事あるし。それにマレットは住んでいた訳だし。」

「そう?僕も少ししか回ってないから行っても良いかなって思ってたけど。魔界は広いでしょ?」

「そうなのだが、そうじゃ無いのだ!」

「ソラヤくん。フリージュ姉さんはただ家から少しでも離れたいだけだよ。」

「マレットぉ!?」


 慌てるナイト。そんなナイトを余所に話を続ける。


「家を飛び出して、ソラヤくんの仲間って見逃した感じだし。家に帰れば連れ戻されなくても少し怒られるだろうから。」

「ぐぬぬ。マレットだって今魔界に行けば英雄として持て囃されるわよ!」

「そ、そんな事は……無いですよね?」

「それは確かにあるだろうね。分かったから、そんな顔しないの2人共。」


 とりあえず魔界は無くなった。まぁ落ち着いたら行けばいいし。そうなると人間界か龍の郷の方か。


「それなら人間界も、今はやめた方がいいかもな。」

「なんで?」

「王都があの状況だ。しばらく観光などは難しいだろう。」

「ローゼの言う通りかもね。でもその復旧を手伝うって選択もあるんだけど……。」


 そうなると皆んな自分の国を直すのが道理な訳で。それだとこのパーティバラバラになる気がするし。


「これは僕のわがままなんだけど。冒険者であるからには旅はしたいんだよね。」

「ほほ。わたくしもそれには賛成ですぞ。」

「私は空ちゃんと入れれば何処でもいいよ。」

「私も栄理と同じ意見だ。」

「ソラヤの好きにして良いと思いますぞ。わたくし達に帰る家は無いですし。ソラヤが居るところが家みたいなものです。」


 僕の好きにして良いか。クロイの言う家は家族がいる所であり、今はこのパーティが僕の仲間であり家族だ。


「リナはどうしたい?」

『我はソラヤに着いて行くだけ。クロイの言葉を借りると、何処ではなく誰が重要だと思っている。』

「そっか……。」


 メイクと目が合う。何も言わずに笑って返してくれる。


 シーと目が合う。何も言わずに頷いてくれる。


 2人に何も聞かないのは、僕の中で決まった答えが来るから。2人もきっと同じ事を思ってくれている。


「決めた。」


 もう一度パーティの仲間を、いや……家族を見る。


「龍の郷に行こう。理由は一つ。僕が行った事無いから!」

「ほほ。それで良いのですよ。」


 クロイが優しく微笑む。向こうの世界でいつも向けてくれた温かくて、くすぐったい顔で。


「いつでもいけるよ!」

「そんなにはしゃぐなよ。転ぶぞ。」


 いつも優しい栄姉は元気一杯だ。その横で豪兄ははしゃぐ栄姉を心配しながら笑いかけている。


「ついに龍の郷か。そう言えば出会った頃に、そこに行きたいとか言ってた気がするな。懐かしい。」


 ローゼと出会ってそんなに経ってないけど、懐かしいと僕も思った。


「私は魔界じゃなきゃ何処でも良いわ。」

「僕はソラヤくんと……違うかな、ここにいる皆んなと一緒なら。」


 ナイトはクロイが作った闇魔法で出てきた。それから僕らの良きお姉さんとして一緒に色々手伝ってくれる。


『早く行こうぞ。人間の寿命は少ないのであろう?』


 急かしてくるリナ。そんなリナちは魔界で戦って以来僕に着いてきてくれる。


「「ソラヤ。」」


 皆んな歩き始めていて、シーとメイクに手を差し伸べられる。


 その手を掴み歩き出す。


 これから先何があるのだろうか。


 いざ冒険の世界へ!?

 そう僕達は……永遠の旅人である。

お話はこれで完結です。


時間ができた時、もしかしたら後日談の様なものを書くかもです。


最後まで読んでくれてありがとうございました(=´∀`)人(´∀`=)


次回作は年号変わった後に!平成最後の投稿でしたw

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