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少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜  作者: みけな
第三章 敵と魔族と人間と。
153/203

153話 視線の先に。

 黒い渦の先は綺麗な公園だった。


「ソラヤ君、えっとメイクさん?」

「うん。メイクだよ。」

「えっとリナさんは。」

『よっと。』


 最後に黒い渦から出てきたリナ。そしてメイクの翼によって視界を遮られる。


「どうして裸なの?」

『人になり服を着る余裕がなかったのだ。今着るから、そんなに怒るでない。』

「きゃぁー!」


 どうやら裸だったらしい。龍から人になるのに服はそのままとかないのか。そしてきゃーと言う声はマレット君か?


「マレット君のエッチ。」

「そ、そんな!不可抗力ですよ。」

『はっはっは!龍の時も裸だ。何も恥じることは無いぞ。』

「リナ?」

『……今度は早着替えを練習しよう。』


 随分と努力家のリナであった。喋るのもそうだけど、こう言う事が出来るからリナは凄い。そして羽根で見えないけど、メイクの圧力を感じる。


「ん。まずは急なお誘いをすいません。」

「マレット君、鼻血。」

「……。」

「若。こちらに。」

「……ありがとう。」


 バトラスさんいたんだね。鼻には何か詰め物が見える。


「おじさんもエッチ。」

「ほほ。眼福でございました。」


 バトラスさんは正直者だな。見られた本人は自信満々に胸を張り、メイクに睨まれている。


「ん!話しを戻します。突然の誘いすいません。」

「僕らは入口から入ろうとしたので、呼んでもらえて助かりました。」

「来てくれるつもりだった?」

「ほほ。だから言いましたでしょう。ソラヤ様達なら来てくれると。」

「……だね。ありがとう。」

「いえ。僕らはまだ何もしていないので。」

「状況は歩きながら話します。ソラヤ君に合った欲しい人がいるので案内します。」


 状況はいたってシンプル。魔王城が外部から攻撃を受けた事で、マレット君の防衛魔法が発動した。あの時に地面が揺れていた理由は、外部からの衝撃を地面に逃がす魔法だからとの事。

 では、誰からの攻撃なのか?偵察に出た味方部隊も龍にやられたと言っていたらしい。


『ん?我か?』

「リナさんが上空で龍が他に居なければ……。」

『居なかったな!はたき落した人のどれかが魔族の部隊だったのか。』

「……。」


 銃で撃ち落とさなくて良かった〜もう少し数が増えたら危なかったよ。いや、待てよ?


「そうなるとあのブレスの中に……。」

『吹き飛ばすつもりで放ったブレスだぞ?死にはしないだろう。』

「あの威力で?」

『加減をしなければ、吹き飛ぶ前にバラバラぞ?』

「そんな自信満々に言われても。」


 妙にドヤるリナ。あの威力は普通に天災レベルだと思う。まぁ街に被害が出ていないから、良しとしよう。


 バトラスさんを先頭に、中庭を抜け長い通路を歩くこと数分。

 大きな扉の前まで来る。


―コンコン。


「……入れ。」

「失礼致します。」


 扉を開けると、空から光が差し込む広い部屋に出た。天井がないのは、まぁそう言うことだ。


「其方らが不思議な人間と肩翼の天使。そして尻尾に翼……噂の龍族か。」

『あら?どんな噂が?』

「他愛も無い事よ。空では部下の礼義がなってなくて、すまなかった。」

『ふふふ。いいのよ。軽く撫でておいたから。』

「くっくっく。あれくらいにしてくれて感謝している龍殿。」


 玉座であろう椅子に座り、怪しく微笑み合う2人……。おそらくあの人がマレット君のお父さんで、現在の魔王。普通はラスボス的な人だけど、何故か戦う気にはならない雰囲気がある。


「ん?我に何かあるか?」

「あ、いえ。そのような事は。」

「そんなに畏まる必要もない。息子の友に会っておきたかっただけだ。」


 今度は優しく微笑む。マレット君はどことなく照れた感じもする。


「ソラヤと言ったか?私の事はブラッドと気軽に呼んでくれ。」

「でも魔王様にそんな。」

「別に忠義を誓いに来たり、倒しに来た訳ではなかろう?」

「それはそうですけど。」

「では、ここへは何をしに?」

「僕はただマレット君が困ってないか、気になってここまで来たので。」

「そうか。」


 そう言うと玉座を立ち上がり、階段を1つずつ降りてくる。


―パチン。


 指を鳴らすと壁に黒い雲が集まり、何かの映像を映しだす。


「人間?いや、羽根があるから別の種族か。天使?」

『だな。人型にあの羽根は天使族だ。』

「これが天使族。自分以外の人っていたんだ。」

「理由は何も分からんが、突然攻撃をしてきてな。息子の防衛魔法が無かったら危なかった。」


 マレット君の頭に手を乗せ、撫でるブラッドさん。特に慌てる様子もなく様子見で軍を展開したら、リナに叩き落とされたみたいだ。


「正直な〜このままここに居てもいいんだよ。でも、魔王がそうだと示しつかないじゃん?」

「では倒しに行くんですか?」

「俺が倒しに行けば早いんだけど。それだと息子達活躍できないじゃん?」

「早く解決した方が良いのでは?」

「そうなんだよ。だからこそ息子に先人切らせたんだけど……。」


 少し困った様子のブラッドさん。一体何があったのか。


「リナ殿にやられちゃった。あはは。」

「「……。」」

『何故に我を見る?あれはしょうがないであろう?そうだよな?え?』

「力ばっかり鍛えて、礼儀を欠いた結果があれだ。それは良いんだけどな……ちら。」


 わざとらしく目線をマレット君に向けるブラッドさん。そして僕とメイク、リナと視線を動かす。


「と言うわけだ!」

「いやいや、お父様。何にも説明してませんよ?」

「マレット君に手伝ってあの天使達を撃破、もしくは撤退させればいいと?」

「さすがソラヤ君!その通りだよ。」


 まぁ会話の流れやこの場にいる状況を考えると、それしか無いだろう。


「ほら。分かるじゃん。」

「分かるじゃんって……ちゃんと話さないとさ。」

「それはマレットが話す事だ。俺はここで待つから、外のなんとかしてくれ。頼んだぞ〜。」

「そんなお使いみたいに頼む内容でしょうか。」


 大きい息を吐き、僕らに向き合ったマレット君。


「ソラヤ君、メイクさん、リナさん。僕を助けて下さい。」

「「『…………。』」」


 頭を下げてお願いしてくるマレット君。僕らの答えは聞かなくても分かると思うけど。一応形は作るって事かな?


「良いよ。その為に来たんだ。」

「私もソラヤがやるなら。」

『もとよりそのつもりだ!』


 僕ら3人の答えはもちろんYES。

 マレット君は頭を上げて、ありがとうと一言お礼をする。そして僕らの前に一枚の大きな地図が現れた。


「時間はあまりありません。早速作戦を決めましょう。」


 初めて会った時のおどおどしていた姿のマレット君は、ここにはもういなかった。

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