114話 振り回す人③
谷に向かった私とノイン。
何もなく魔物にも出会う事は無かった。
「行きの荒野に魔物は出無いわね。」
「環境が厳しく、生物が生きるには厳しいですしね。」
「ふーん。そうなんだ。」
「ノインは遠征とかはしないのですか?」
「ん?いずれするとは思うけど。まだできて間もないからね。」
「そうですか。」
東西はよく王国騎士が出入りをするから、ノインもそうだろうと思ったけど違うらしい。
9番隊が出来て3ヶ月程で、部隊編成やら訓練がメインで遠征の命令はまだ出た事がないとの事。
本人は出たら向かうけど、王都に妹がいるから本音は行きたくないとも言っていた。
そんな事を私に言っても良いのだろうか?
「この山は地面が硬いから、馬を本気で走らせないようにな。」
「了解よ。」
「敵の気配は今の所ないわね。」
「ん〜…そうね。まだ遠いから大丈夫ね。」
ノインは、そう言って馬を歩かせた。
私もそれに続く。
まだ遠いから大丈夫ね……あれはどう言う事かしら?
後ろをついて行く事数分。
馬を降りて止まるノイン。
「どうかした?」
「戦闘になりそうだから、馬をここに置いて行こうかと。」
「戦闘って?」
「もうすぐで底が見えない谷があるんだけど。」
「あぁ、ソラヤ達の報告していた所か。」
「そうそう。そこの谷に1体いるから。」
「谷に……。」
少し谷に意識を集中させる。
………分かんない。
「そんな気配しないんだけど?」
「結構下にいるからね。気づかれないとは思うんだけど…念の為ね。」
「どんだけ遠くの気配なんだ…。」
「言っても100mくらいよ?」
「……ノインって凄いんだな。」
「ちょっと!いきなり何よ。照れるじゃない!」
肩をバシバシ叩かれる。
力加減はしているのか、痛いが骨が折れるほどではない。
それにしても100mって化物の類?これが王国騎士団の隊長なのか。
「ここが例の現場か。」
「広くて戦いやすいわね!」
「しかし大技使い足元を崩すと、危ないじゃ済まなそうだぞ。」
「……そんな大技しないわ!」
「今間はなんだ?」
気配を下の方を探ってみる。
「………私には分からない。ノインはどう?」
「ん…同じ所にいるし、こっちには来ないかな。」
「それなら良かった。」
「そうね。大きい音やここから岩でも投げ込まない限り平気かもね。」
「やけに具体的に言うな。なんか嫌な予感がしてきたんだが。」
………チュゥン!
「「ん?」」
…バキ!…ドォン!…ドォン!……。
「大きな岩が落ちるって言ったのノインだからね。」
「いやいや、それを言うならレイランだって嫌な予感とか。」
『………ピィーゥ…。』
「どうなのノイン?」
「……レイラン、あなたは戦えるのかしら?」
「そうなるだろうと準備はいつでもしているわ。」
アイテムから杖を出し構える。
「その魔力は、魔導師なのかな?」
「風と水をメインで氷が得意。ノインは…前衛の戦士よね。」
「魔法2属性に混合魔法まで…うちの隊に欲しいくらいだわ。私はこの相棒に…。」
ノインに簡単に出来る事を伝えておく。
王国の騎士でしかも隊長となれば、このくらいの情報で分かってくれると思っていた。
案の定、氷の魔法を聞いて混合魔法と言えるくらい知っていた。
さすがと思っている所に、剣を抜き構えるノイン。
剣にもやが見える?違う…これは
「光?」
「さすが魔導師ね。私の武器はこの剣技に光属性の攻撃と探知能力よ。」
「ノインってやっぱり隊長なのね。」
「あれ、始めに言ったじゃん。あれ?言ったっけ?」
「まぁいいじゃない。」
私はノインの言葉を遮る。
私の気配でも分かる距離に接近していたから。
「さてと、行くわよレイラン!」
「ノイン了解よ。私達の力見せてあげましょう!
『ピィーゥ!!!』
現れた大きい鳥に私達は、自分の武器を握り立ち向かう。




