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転生勇者は異世界で少女たちと戯れたい。  作者: 上城ダンケ
第一章 天空要塞のフレイア
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『魔法全書』から始める黒魔法

 フレイアが俺に渡した本は全部で五冊だった。

 うち一冊がマルムスティル王国の歴史。残りの四冊が魔法に関する本だ。


 歴史書の方は寝る前にでも読むことにして、まずは魔法関係から読むとしよう。

 彼女が置いていった魔法の本は次の四冊。


 まず一冊め。『古代魔法理論序説』。

 全くわからん。古代魔法をこの世界の物理法則で説明しようとしているようだが、ちんぷんかんぷんだ。

 著者は……マルムスティル王立魔法研究所所長ヴォルーガ……はあ、そうですか。


 これ、素人には無理だよ。


 二冊め。『ヴォルーガ理論による現代魔法考察』。

 またヴォルーガさん。はい次。とりあえずヴォルーガさんがすごいってことは理解した。


 三冊め。『時空跳躍試論・ヴォルーガ理論の最前線』。 

 ヴォルーガってすごい人なんですね(棒)。はい次。


 四冊め。『魔法全書』。

 王立魔法研究所が数百年かけて完成させた魔法の理論書にして百科事典。攻撃魔法・治癒魔法から召喚魔法・変身魔法まで、ありとあらゆる魔法を調べ、まとめてある。

 この一冊でマルムスティル王国の全魔法が網羅されている。魔法学最良の入門書にして最高の理論書。魔法学を志すもの必携の書。


 と、冒頭の推薦文に書いてあった。

 推薦文を書いたのは……「マルムスティル王立魔法研究所所長ヴォルーガ」。ヴォルーガ、またお前か。


 結論から言うと、この『魔法全書』は非常に有能であった。まず、文章が平易だった。「簡にして要を得る」とはまさにこの本のためにあるような言葉だ。

 ヴォルーガとかいうクソじじい(たぶん)の書いた他の三冊とは雲泥の差だ。


 特に「序章 魔法生成の基礎理論」が素晴らしい。一切数式や小難しい用語を使わず、普通の言葉で魔法理論を書いているのだ。くどいようだが、他の三冊とは雲泥の差だ。


 ソシャゲ、それも中世風味RPGソシャゲの開発に携わっていた俺にとって、この世界の魔法システムは非常にわかりやすかった。異世界といえど、基本的なことは、元の世界とそんなに変わらない。


 まず、魔法は大きく三つに分類される。攻撃・破壊などを行う黒魔法、治療・再生などを行う白魔法、そのいずれにも属さない雑魔法。


 男は黒魔法しか使えない。なかでも強力な魔法力を持つ男子は魔道士と呼ばれる。


 女は多くの場合白魔法しか使えないが、黒魔法が使えることもある。黒魔法しか使えない女は存在しない。


 黒でも白でもない雑魔法は鍛錬次第で使えるようになる。


 最後に魔法の使い方だ。


 黒魔法は呪文が必要である。白魔法は、心に念じるだけで使うことができる。

 そのほかの魔法は呪文だったり、何かしらの道具が必要だったり色々だ。


 呪文の基本は二つだけ。


 一つ目は組成呪文。これは欲しいもの、例えば武器などを強くイメージし、名前を呼ぶことによって、魔法力でそれを具体化する呪文だ。

 フレイアが「フレイムソード」「アイススピア」を出したのはこの呪文。フレイアは「魔法使いは言葉より先に呪文を覚える」と言ってたが、それはこの種の呪文のことだろう。言葉より先ってことはないにしても、そう言われるのも納得できる単純な呪文だ。


 二つ目は詠唱呪文。古代語で作られた呪文を唱えることで魔法を使う。詠唱にかかる時間は短いもので数秒程度、長いものは数時間だ。修練を積んだ魔法使い・魔道士は指や杖で呪文を空中に書くだけで魔法を使えるらしい。さらに鍛えれば、呪文を脳裏にイメージするだけで魔法が使えるようになるという。


 次は「魔法力」について。


 魔法力というのは、簡単に言えば「肺活量」みたいなものだ。少しずつ使うこともできるし、一気に使うこともできる。

 魔法力が足りないと使えない魔法もある。また、同じ魔法でも魔法力を一気に使うかどうかで威力が全然違うようだ。


 一気に息を出すと咳き込んでしまったり、深呼吸が必要になるのと同じように、一気に魔法力を使うと、倒れてしまったり、回復に時間がかかったりする。

 少しずつ使う分には回復のことはあまり気にしなくても大丈夫。ロファールは王国一の超魔道士なので、そうとうな魔法力を持っていることだろうから、魔法力が尽きるなんてことは考えなくて良さそうだ。


 基本的な概念がわかったので、とりあえず、簡単な魔法からやってみよう。まず、組成呪文からだ。


 『魔法全書』によれば、組成呪文はどれだけ欲しいものをイメージできるかが大事なんだそうだ。イメージが曖昧だったり雑念が入ると、失敗する。


 よし、やってみよう。フレイアが出していたフレイムソードあたりからいこうか。俺は目をつぶり、炎に包まれた剣のイメージを思い浮かべた。


 むむむ……フレイムソードすなわち炎の剣……火がメラメラ……。

 見えてきたぞ。

 深紅の炎に包まれた剣が! 

「フレイムソード!」

 俺は叫んだ。


 しーん。


 何も起こらない。もう一度叫ぼう。

「フレイムゥ……ソード!」

 やはり何も起こらない。うーん。どうすればいいんだろ。


 俺は『魔法全書』を手に取った。魔法力の使い方、出し方について何かヒントになることはないかな。

 すると、「魔法力喪失からの回復」という項目が目にとまった。なんかヒントありそうだ。読んでみる。すると、ズバリ、答えが書いてあった。


 答えは呼吸にあった。「魔法呼吸」というのがあり、魔法力喪失の大部分は魔法呼吸に原因があるので、魔法力に問題があれば、まずは「魔法力復活呼吸」をすべきだとあった。


 なるほど。ということで、イラスト付きで魔法呼吸のやり方が解説されている。指で魔法印を組みつつ、呪文を唱えながら、独特のリズムで息を吸ったり吐いたりするようだ。


 俺はイラストに従い、指で魔法印を組み、すっすっはー、すっすっはー、すはすはすはすは、すっすっすっすっはー、と複雑なリズムで呼吸し、さらにンガゴギゲダボテとしか聞こえない呪文を唱えた。


 しばらくすると、『魔法全書』を見なくても魔法呼吸ができるようになった。


 俺なかなか優秀じゃん、と思ったその時、まるで竜巻を食べているかのような感覚が俺の口元から感じられた。お、これが「魔法呼吸」じゃね? さすが超魔道士ロファール様だ。身体が覚えていたんだな。


 よし、もう一度、フレイムソードだ。俺は目をつぶり、フレイムソードをイメージする。おお、さっきよりもめちゃリアルなイメージが脳内に浮かんだぞ。

 これも魔法呼吸のおかげか? なんとなく顔が熱い。

 もう目の前にフレイムソードがあるかのようだ。


 それではいくぞ、叫ぶぞ。


「フレイムソード!」


 ゴゴゴゴという音と共に、俺の身長より長いフレイムソードが空中に現れた。

「で、でけぇ……」

 フレイアのフレイムソードの倍以上の長さで、炎に至っては十倍以上だ。

 これがロファールの魔法力なのか。ロファールまじすげー。


 俺はおそるおそる、右手を差し出して柄をつかんでみた。熱くはない。さらに、ほとんど重さを感じない。子供のおもちゃのごとき軽さだ!

 俺は軽く振り回してみた。

 ブオン! と空間を切り裂く音がした。

「これなら魔法の鍵とやらを壊せないかな?」

 俺は扉に方へ歩いて行き、フレイムソードを鍵穴にえい! と突き刺した。


 バァーーン! 


 轟音が鳴り響き、真っ赤な閃光が周囲を照らした。扉とその周囲の壁が真っ赤に燃え上がり、あっという間に灰になって、ボロボロっと崩れ落ちた。


 す、すげぇ……。思わず声が出た。


 かなり派手に壁とか破壊しちゃったんだけど……。

 フレイア怒らないよね? 魔法で破壊しろっていったのフレイアだもんな。


 とりあえず、フレイアに報告しに行こう。

 俺はそう考えて、さっきまで扉があったところに出現した、大きな穴から廊下に出た。

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