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転生勇者は異世界で少女たちと戯れたい。  作者: 上城ダンケ
第四章 王都ヴェイグン
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皇軍工廠鍛造軍刀試製甲はいとも簡単に魔法障壁を破る

 フレイアが俺の胸ぐらをつかんだ。

「今ここであなたを問い詰めたいところだけど、ヴァルヒルダ排除が先よ。あとで、ゆっくり、話を聞かせてもらうわ」

 フレイアは俺の胸ぐらをつかんだまま、俺を地面に放り投げた。

「事と次第では、私、あなたを殺すわよ……」

 そう言うと、フレイアはヴァルヒルダとの戦闘に戻った。


 完全に目が本気だ。


 俺は立ち上がろうとした。

「くそう……力が……」

 皇軍工廠鍛造軍刀試製甲の組成と維持にはかなり魔法力を使うようだ。通常の組成魔法とは異なり一時間も持たないだろう。


 魔法力が減っている上に、フレイアにぶん投げられて、思うように力が入らない。

「あ、あの……ポーション……」

 ルラルが、俺に魔法力回復ポーションを差し出してくれた。俺と目を合わせてくれない。

「……あ、ありがとう」

 数本のポーションを一気に飲む。魔法力が回復した。これなら、十分程度は全力で戦えそうだ。

「……わたしの胸……ち、小さいし……形も……よくないの……」

 それだけ言って、ルラルはポーションを確保しに行った。


 あー! 違う! ルラルちゃんは微乳かつ美乳だよ!


 などど言ってる場合ではない。戦いに復帰せねば。


 マルルはヴォルーガと戦っていたが、負けたようで、鳥かごのようなものの中に閉じ込められている。中で騒いでいるようだが、マルルの声は全く聞こえてこない。

 これでマルルと子作りしたことは、しばらくバレないですむ。


 ヴァルヒルダはまだ泣いていた。泣きじゃくっていてもさすが世界一の超魔道士だ、ヴォルーガ一とフレイア二人相手に、全く負けていない。魔法力も余裕があるようだ。

 徐々に女神像を守っているリリカに接近してきている。何回か瞬間移動を行って接近するが、瞬間移動ではリリカの魔法障壁は破れないようだ。


 手にした水晶玉でわかるのだろう、ヴォルーガが瞬間移動して現れたヴァルヒルダに、的確に魔法弾を撃ち込む。それにヴァルヒルダが応戦している間に、リリカがマジックハンドで女神像と自分を持って逃げる。

 瞬間移動は魔法力を消費するようだ。ヴァルヒルダは肩で息をしている。時々ポーションを飲んでいる。


「今のが最後のポーションです! ロファール、攻撃してください!」

 ヴォルーガが俺に向かって叫んだ。


 俺は皇軍工廠鍛造軍刀試製甲を両手で持ち、ヴァルヒルダに右上段から斬りかかった。ヴァルヒルダが魔法障壁で避ける。軍刀が魔法障壁に当たる。当たった場所から細かいヒビが発生し、魔法障壁が右側中心に三分の一ほどはじけ飛んだ。


 ヴァルヒルダはあわてて魔法障壁を修復しはじめる。俺は左真横から水平に切りつける。左側に大きな亀裂が走り、またもや三分の一がはじけ飛んだ。

「さすが皇軍工廠鍛造、まじ強え」


 ちょっと息が上がってきたが、まだまだ魔法力には余裕がある。次の一撃で、確実に魔法障壁が破壊できるはずだ。


 俺はヴォルーガとフレイアを横目で見た。二人は俺が魔法障壁を破壊するところを待っている。魔法障壁が破壊されたところで、一斉に攻撃をするためだ。


「悪く思うなよ、ヴァル! 皇軍工廠鍛造軍刀試製甲、突撃モード!」

 日本刀のような形であった軍刀が変形し、両刃の突撃剣へ変形した。両手から軍刀にへ、かなりの魔法力が流れ込む。

 ヴァルヒルダが魔法を唱えだした。しまった、瞬間移動か?


「そうはさせないよ!」

 リリカの声がした。何かが俺をつかみ、恐ろしい勢いでヴァルヒルダの方へ放り投げた。

「ちょ! マジかよ!」


 俺は矢のようになって、ヴァルヒルダに向かって行った。彼女の手に光るものが見えたと思った次の瞬間、俺の皇軍工廠鍛造軍刀試製甲はいとも簡単に魔法障壁を破り、ヴァルヒルダの胸を貫通した。俺の顔面に鮮血が降り注いだ。


 え?


 ちょっと?


 おーい! ヴァル! どうしてだ!


 そんなに魔法障壁が弱まっていたのか? 


 俺は組成魔法を解除し、軍刀を消した。とたんに、ヴァルヒルダの胸からさらに血が吹き出す。俺の服が血に染まる。

「おい、ヴァル、ヴァル、死ぬな!」

 し、しまった、どうすればいいんだ!


「どいてください!」

 ドン、と俺を突き飛ばし、ルラルがやって来た。

「私が治療します」

 ルラルの両手からものすごい量の光が放出される。出血が止まり、傷がふさがっていく。

「血液が足りません。造血魔法を行います。お姉さま、ポーションをください」

 両手がふさがっているルラルに代わって、フレイアがポーションを持ってきた。

「彼女にポーションをかけてください」

 フレイアがポーションをヴァルヒルダにかける。ルラルの両手から出る光が赤に変化した。

 ポーションは本来無色透明だが、ルラルの赤い光を受けると真っ赤になって、そのままヴァルヒルダの服の上から身体の中に浸透していった。


「あとは≪命の息吹≫さえすれば……」

 ルラルがヴァルヒルダにキス……じゃなかった、≪命の息吹≫を行った。

 ああ、ルラルちゃん、唇あんな風に動かすんだ……こんな時になんだが、とてもえっちな感じですね、はい。


「これで大丈夫です。意識が戻るまで、しばらく時間はかかりますが」

 ルラルの治癒魔法と≪命の息吹≫で、ヴァルヒルダは助かったようだ。


 ルラルが女王の杖をヴァルヒルダの手から取り上げた。

「これは、私がヴァルヒルダの手の届かないところへ持って行きます」

 ルラルはリリカと女神が像がある方へ、「女王の杖」を持っていった。


 いつものふにふにーとして、ぽわぽわーとしているルラルちゃんもいいけど、治癒魔法を施すきりっとしたルラルちゃんもいいなあ。


 ヴォルーガがヴァルヒルダに鳥かごのようなものをかぶせた。マルルにかぶせたのと同じものだ。

「これは、『ドラゴンの籠』というもので、呪文を封印することが出来るのですよ。短時間ですけどね。中でどんなに叫んでも、声は外に聞こえません。頭の中で呪文を書いてもだめです」

 ヴォルーガはリリカにマルルとヴァルヒルダの「ドラゴンの籠」を念力魔法で、地上まで急いで持って行くように指示を出した。


「はーい。おーし、ヴァルヒルダ様、地上に行って、おとなしく封魔牢に入りましょうねーっと」

 リリカはマジックハンドで二つの「ドラゴンの籠」を持って、階段を上っていった。

 ヴォルーガが俺の方へやって来た。

「ありがとうございました。ヴァルヒルダ……妹は、話せばわかると思います。しばらくは魔法を封じるために、封魔牢生活になると思います。よければ、面会に来てあげてください」

「ええ、もちろん、そのつもりです」

 俺は答えた。


 気がつくと、フレイアが後ろに立っていた。

「誰に会いに行くですって?」

「フ、フレイア、ああ、ヴァルヒルダにそのうち面会にという話であってだな」

「さっきの話の続き、聞きましょうか?」

 目が完全に怒っている。やはり俺は切り刻まれるのだろうか。そうなったら、ルラルちゃんに手当てしてもらえばいいか。


「ちょっと、何か言いなさいよ!」

 フレイアが俺に迫る。うう。どうしよう。

 困った俺は、なんとなくルラルの方を見た。助けを求めたわけではないが、助けて欲しかった。


 ルラルは「女王の杖」を持ってちょこんと座っていた。ポーションを何本か飲んでいる。魔法力を使ったのだろう。

 ポーションを飲み終わったルラルは立ち上がり、女神像へ近づいた。

「ちょっと、ルラルの方なんか見てないで、こっち見なさい!」

 そ、そんなこと言っても……。

 ルラルちゃん、助けて……。


 俺はもう一度、ルラルを見た。ルラルは「女王の杖」を女神像の胸元にあてるところだった。

 え? なんで?


「何をしているのです、ルラル!」

 ヴォルーガが叫び、魔法弾を「女王の杖」に向かって放つ。が、間に合わない。杖は、泥沼に落ちる木の枝のように、女神像の中に入っていった。

「ルラル! 自分が何をやったかわかっているの!」

 フレイアがルラルに駆け寄った。


「あーら、おばさんのフレイアにはわからないの? おっぱいは大きくても、頭は空っぽなのねー!」

 え? 今の声、確かにルラルの声だが、台詞の内容はどう聞いてもヴァルヒルダだぞ?

「もしかして……魂交換……」

 ヴォルーガがつぶやいた。

「そうよ、お姉さま。ルラルだっけ、おばさんフレイアの妹。そいつと、あたしの魂を入れ替えてやったのよ! まさか、誰も気がつかないなんてね!」


 フレイアもヴォルーガも魂を見抜く魔眼を持っているが、魔眼は意識して見ないとその効力を発揮できない。ヴァルヒルダはわざと自分に致命傷を与えて、周囲を混乱させ、ルラルと入れ替わったのだった。


「いつ妹と入れ替わったのよ! 言いなさい!」

「マイダーリンがあたしに剣を突き立てる直前よ。あのとき、ルラルとかいう貧乳娘と魂を入れ替えたの。だから、胸を刺されたときの魂は、貧乳娘のほうね。かわいそうに、痛かったでしょうね。ロファール、あとで貧乳ちゃんに謝った方がいいわよ?」


 ヴァルヒルダがそうやってしゃべっている間に、女神像の表面がはがれ落ち、中から一人の女性が現れた。

「さあ、石の女神像がドラゴンクリスタルに……あれ? ドラゴンクリスタルにならない。どうしたのかな、間違えたのかな?」


 女神から出てきた女性が、ルラル(のなかのヴァルヒルダ)に語りかけた。

「あなたが、ヴァルヒルダね。ありがとう。やっと、元の姿に戻れたわ」

「あの、だれ? 女神様じゃないの?」

 ヴァルヒルダが聞く。

「いいえ、私は女王ヴェイグン。マルムスティルによって、石にされていたのよ。女神像なんて言い伝えはうそよ。私の話もうそ。本当はね、悪魔と契約した私を、石に変えて、魂を杖に閉じ込めたのよ。ごめんね、ヴァルヒルダちゃん。騙して」

「そ、そんな……」

「それにしても、マルムスティルも甘いわね。私を殺せばよかったのに。あ、殺せないから、身体を石にして、魂を杖に閉じ込めたんだったわね。その後、私を殺す方法発見したのかしら? それとも、未練がましく、私が改心するのを待ってたのかしら? 私を解放する魔石を用意していたくらいだから、後者ね、ふふ」


 女王は大広間から地上へ続く階段の方を見た。

「さてと。マルムスティルの子孫を倒さないとね。あ、女の子は殺さないよ。安心してね、ヴァルヒルダちゃん。あいつの息子のそのまた息子の……今何代目だっけ? あなたのパパ。パパ殺すけど、それは許してね」

「……そんなことはさせない!」

 ヴォルーガが女王の前に立った。

「死にたいの?」


 えーっと、えーっと、俺はどうしたらいいんだ?


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