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転生勇者は異世界で少女たちと戯れたい。  作者: 上城ダンケ
第四章 王都ヴェイグン
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全く、俺のチョモランマ級アダルト知識は、宝の持ち腐れ

 空飛ぶ馬車はひたすら王都目指して突き進んだ。


 童貞のまま一児の父(予定)となるという、ある意味聖母マリアに等しき存在となった俺はであったが、心は聖母マリアとほど遠かった。

 

 さっきまで、夢のハーレム状態だ、わーい、と浮かれていた俺だったが、よーく考えると、結局、なにもアダルティーなことをやってないことに気がついた。ヴァルヒルダと女王の野望を打ち砕かねば、結局誰とも本当の意味での子作りができない羽目に陥っている。


 唯一、銀髪ロリフェイスのルラルちゃんと三回キスしただけだ。キスくらい高校生カップルでもやっとるわい! そんなの、全然アダルティーではない! 気持ちよかったけど。


 全く、俺のチョモランマ級アダルト知識は、宝の持ち腐れだ。


 だが、真に俺を悩ませているのはこのことではない。ヴァルヒルダのことだ。


 ヴァルヒルダは俺が古代魔法遺跡に来た本当の理由、すなわち「和平交渉」に来たということを知っている。


 理由だけならまだよかった。「和平交渉」を受け入れるふりをして、不意打ち狙ったとか言えるからな。フレイアとの婚約解消も、口先だけのことだと言えたろう。


 問題は、俺とヴァルヒルダが「子作りの儀」をやったことだ。実際には、仲良く二つのドラゴン像にお祈りしただけだが、そんなことは関係ない。フレイアとの婚約を解消してヴァルヒルダとえっちなことをしようとしたことは事実だ。そのことがばれた日には、せっかく俺のことを好きになってくれたフレイアが、再び俺から離れ、軽蔑するだろう。


 いや、それどころか、怒り狂ったフレイアに、フレイムソードで真っ二つにされるかもしれない。


 そんなことを考えているうちに、リリカの操縦で空飛ぶ馬車は無事に王都へ着いた。


「まだヴァルヒルダは王都に着いていないようですね」

 ヴォルーガによれば、幻影ドラゴンを失ったヴァルヒルダは例のミニドラゴンに乗って、王都に向かった可能性が高いという。


 ヴォルーガが仕掛けた魔法トラップとは、そのミニドラゴンに幻覚を見せ、道に迷わせるものだそうだ。ヴォルーガの指示のもと、王立魔法軍が王都の周辺で仕掛けているらしい。


 王都が見えて来た。この前と同じように魔法障壁に穴が空き、空飛ぶ馬車は王都に着陸した。


 空飛ぶ馬車から降りたヴォルーガが、王宮を指差した。

「トラップはそんなに長い間効果は期待できません。ヴァルヒルダより先に王宮地下に行きましょう」

「王都の外、せめて王宮の外でヴァルヒルダを撃退するのはダメなんですか?」

 俺は聞いてみた。

「完全体となった女王の杖の力は、未知数です。どんな方法で我々を出し抜くかわかりません。女神像に到達されたら最後です。ですから、女神像の手前で、待ち伏せる方が賢明です」


 それから俺たちは、王宮へ行き、国王陛下の許可をもらって地下へ降りて行った。


 地下への道は細い階段だった。メンバーは、そのまま、俺、ヴォルーガ、フレイア、ルラル、リリカだ。


 俺はこの中では最強の黒魔法が使える超魔道士だ。下賤な魂とロファールの身体のコラボで、元のロファールより魔法力の強いスーパーロファール様である。ただ、残念なことに、組成呪文しか使えない。まだ詠唱呪文覚えてないからな。


 ヴォルーガは、黒魔法も白魔法も普通だが、その他の魔法、いわゆる雑魔法にめっぽう強い。魔眼の威力もフレイア以上。


 フレイアは、女性の中では最強クラスの黒魔法使いだ。俺の使えない詠唱呪文が使えるので、俺のサポートにもってこいだ。あと、当然白魔法も使える。


 ルラルちゃんは、強力な治癒魔法を持っている。治癒のことを「手当て」ということからもわかるように、治癒魔法は身体接触を伴うものが多いそうだ。ぜひとも下半身を積極的に治療してほしい。


 リリカは雑魔法の一つ、念力魔法が得意なんだそうだ。馬鹿力らしい。あと、メカに詳しい。この世界では蒸気機関に魔法テイストが加味された魔気機関というものがあるようで、その仕組みに精通しているそうだ。詳しいことは、俺にはわからん。


 以上、このメンバーで、ヴァルヒルダとマルルを叩くことになる。


 階段を下りきったところに扉があった。この扉の向こうに女神像が安置してある。

 ヴォルーガが水晶玉を出した。

「ヴァルヒルダとマルルは、すでに王都に侵入しました。王都警備隊と王立魔法軍が対応していますが、強力な変身魔法のせいで、ヴァルヒルダを見失っているようです。……王宮の近くまで来ていますね。あと数分でここに来るでしょう」


 ヴォルーガが俺たちに指示を出した。

「ロファールは、組成呪文で地上まで鋼で埋め尽くしてください」

「わかった」

 俺は今きた廊下が鋼鉄でミチミチに埋まる様子をイメージし、呪文を唱えた。バン、と音がして、鋼鉄が廊下を塞いだ。

「これで少しは時間稼げるといいのですが……」

 不安そうにヴォルーガが言う。いや、この鋼鉄、簡単には壊せないよ? 大丈夫でしょ?


「さあ、中に入りますよ」

 扉を開けて中に入った。中は円形のドーム状になっており、広い。体育館くらいはある。中央に高い柱があり、その上に女神像がある。

「リリカ、あの女神像をここへ下ろしてください」

 ヴォルーガが指示を出す。

「あいよ」

 リリカが答える。リリカが「マジックハンド!」と叫ぶと、女神像がふわりと浮き、そのまますーっと下に降りて来た。


 女神像は石、それも本当に普通の石で出来ていた。大きさは普通の女性と同じ大きさだった。


「ヴォルーガ様、この女神像って、本当に元々はドラゴンクリスタルだったのですか?」

 フレイアが聞いた。

「それについては、何もわかっていません。伝説では、女王の杖とこの像には、何の関係もないのです。国の正史に、初代マルムスティル王が、女神像を作り、守り神として安置した、とあるだけです」

「でも、なんで普通の石で作ったんでしょうかね? もうちょっときれいな石で作ればいいのに」

「そこも含めて、謎の多い像なんです。ただ、女王の杖がヴァルヒルダに語った内容……すなわち、ドラゴンクリスタルの女神像を悪魔からもらった魔法で、ただの石に変えた、という話が本当であれば、もともとは、ドラゴンクリスタルだったかもしれませんね」

 ヴォルーガが女神像を見つめながら言った。


 あれ? ヴァルヒルダの話をみんな信じているのかな?

「ヴォルーガさんは、その話、信じているんですか?」

「……女王の杖に関する伝説は、歴史的事実ではないことははっきりしているのです。歴史学者、考古学者の研究により、女王の恋人とは、後の初代マルムスティル王のことだったことが確定しています」


 へー、そーなんだ。


「伝説では、恋人の死を悲しんだ女王が自分の魂を杖に閉じ込めたことになっていますが、女王は恋人、すなわち、マルムスティル王の後に死んだことが証明されています。そして……これは国家機密ですが……女王の墓は見つかっていません」


「まじかよ!」

 いきなりリリカが叫んだ。

「私、小学校の遠足で女王の墓に行ったぞ? みんなで手作りの杖のお供えとかしたんだぞ! あれ、違うのか? ずっと騙されていたのかー?」

「……はい。あれは、古代の住居遺跡を加工したもの。王国民の目を欺くためのものです」


「ど……どうして、そ、そんな嘘を……」

 ルラルが不安そうに聞いた。

 ヴォルーガが、大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐き出し、おもむろに言った。

「ここまであなた達を巻き込んでしまった以上、話をしないわけにはいきませんね……」


 フレイア、ルラル、リリカの目つきが厳しい。女王の墓の話、そんなにショックだったんだだろうか。

 仁徳天皇陵に仁徳天皇は葬られていない、という話を聞いても全然ショックじゃなかった俺にはよくわからん。


「これは……私たち王家の人間しか知らない、歴史の話なのです」


 ふーん、そんな話があるんだねぇ……。


 え? 「私たち王家の人間」?


「す、すみません、あの、私たち王家、って、あの、ヴォルーガさん、もしかして、王家の方なんですか?」

「ああ、そうでした。ロファールは『記憶喪失』でしたね。はい、そうです。私は国王の娘。ヴァルヒルダの姉です。母親も同じ。ヴァルヒルダと同じく、正妻の子です」

「あーそういえば、名前似てますよね、ヴァルヒルダとヴォルーガ……」


 王立魔法研究所所長ってんだから、それなりに高貴な人がなるんだな、と感心しつつ、そんな高貴なお方の丸裸ボディをじっくり鑑賞できた事実に、俺は心の中で感謝したのであった。


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