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転生勇者は異世界で少女たちと戯れたい。  作者: 上城ダンケ
第三章 古代魔法遺跡のヴァルヒルダ
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ロファール先生とヴァルちゃん

「……すまない」

「ちょー、マジ、あり得ないんですけどー! 飛べないの? どうするのよ?」

「マルル、おまえは飛べるのか?」

「んーん。飛べないよ。だからドラちゃんに乗ってくの。ドラちゃんちっちゃいから、私しか乗れないし。もー、どーすんのよー」


 俺は考えた。たぶん、組成呪文を使えば、短時間なら空を飛べるはずだ。とはいえ、ジェット系は魔法力の消費が激しいし……。


 そのとき、俺の上空から、声がした。

「ロファール! ロファール! 会いたかったの!」

 ヴァルヒルダだった。背中に翼をはやしている。空から降りてきた。

「あれ、ヴァルヒルダ様、来たんですか?」

「そ、待ちきれなくて、きちゃったのー!」

 ヴァルヒルダは着地するやいなや、いきなり、おれに抱きついてきた。


「あ、ロファール、いつもと違うね!」

「え?」

「いつもだったら、子供じゃないんだから、抱きついたりしたらだめ、って怖い顔で言うもん」

 いえ、むしろ子供じゃないから抱きついてください。


「ねぇねぇ、昔みたいに、先生って呼んでもいい?」

「……そう呼んでいたのか?」

「うん。でもね、お父様と戦うことになってからはね、ロファールね、『もうおまえなんか俺の生徒じゃない、師弟の縁を切る、俺は全力でおまえと戦う』って言ってね、私のこと嫌いになったの」


 まるで親子喧嘩のようにしゃべっているが、この場合お父様は国王であり、お父様との戦いとは戦争のことである。つまり、ヴァルヒルダは王国に戦争を仕掛けたのである。そりゃ、ロファールもこれくらい言うだろうね。


「……ああ、いいぞ。先生と呼んで」

「わーい。ロファール先生、あたしね、たくさん古代魔法、それも究極魔法を発見したの。褒めて褒めて!」


 ああああ、たまらん。先生プレイ。 

 おっと、興奮している場合ではない。とりあえず、褒めよう。

「すごいな、ヴァルヒルダは」

 俺なりに先生ぽい雰囲気で言ってみたが、ヴァルヒルダはむすっとしている。

「ちーがーうー! ロファール先生は、あたしのこと、ヴァル、って呼んでたの! ヴァルヒルダなんて呼ばないの! もう一回!」

「す、すまない……えーっと、す、すごいな、ヴァルは」

「すごい? あたしすごい?」

「すごいよ、ヴァル」

「だったら、あたまナデナデしてなの!」

 言われるがままに頭をナデナデした。おお、髪の毛細くて、さらさらで、妙に興奮する。


「ちゅーは? ちゅー。ちゅー!」

「ちゅー? キスのことか?」

「そう! いつも、ご褒美に、おでこにちゅー、してくれてたでしょ!」


 く……くそう、ロファールめ、ただのロリコン教師じゃねーか!

 淫行教師じゃないか! 相次ぐ教師の不祥事じゃねーかよ!

 元の世界だったら新聞沙汰で懲戒免職だぜ! 


「こ、こうか?」

 俺はヴァルヒルダのおでこに、軽くキスをした。

「へへ。懐かしい! わーいわーい」


 無邪気にはしゃぐヴァルヒルダを見ていると、とてもこの娘が戦争を起こし、九つもの天空要塞を破壊したとは思えない。


 死者、負傷者の数は聞いてないが、多くの犠牲も出ていることだろう。こんな戦争、無意味だ。ヴァルヒルダにとっても、王国にとっても不幸なだけだ。


 俺は、心の底から、ヴァルヒルダを救いたいと思った。そして、王国に平和をもたらしたいと思った。こんな、無邪気な少女が父親と戦争だなんて……。戦争反対。ノーモア戦争。


 ということで、ヴァルヒルダのために、一刻も早く「和平交渉」だ。ヴァルヒルダと≪契り≫を交わし、子作りをせねば。俺の下半身はすでにいろんな意味で準備オッケーだ。

 世界平和のためなら仕方ない。下半身がすり切れるまで、俺は、子作りを行う! 


「ヴァルヒルダ様、はやく行こーよー。マルル、超疲れたー」

 マルルがボートを木杭に結びつけながら言った。

「そうね。えっと、ロファール先生、飛翔魔法は使えないんだよね? 私が翼をつけてあげるっ!」

 ヴァルヒルダが呪文を唱えると、俺の背中に翼が生えた。

 マルルも呪文を唱えた。例のミニドラゴンが現れる。


「あ、マルルだ。おはよう」

「ドラちゃん、寝てたの?」

「うん」

「あのね、ドラちゃん、また私を乗っけてほしいの。超近距離だから、いいよね?」

「えーやだよー。疲れるよー」

「お菓子あげるから」

「一個じゃやだよー」

「二個あげるから」

「わーい」

 マルルはミニドラゴンにまたがって、空に舞い上がった。俺とヴァルヒルダもそれに続いた。


「……あのミニドラゴンはドラゴンの子供なのかな?」

 俺はヴァルヒルダに聞いた。

「違うよ。あれ以上大きくならないよ。本当に何もかも忘れたのね、ロファール先生。もう先生無理なんじゃない? 大丈夫? 無職になるよ」

 ヴァルヒルダが俺の顔を覗き込んだ。

「あ、でも、あたしの旦那様になるから、関係ないね。あ・た・しが、養ってあげる! きゃー! 新婚さん!」

 何が新婚さんなんだろう……。


「で、何の話だっけ?」

「だから、ミニドラゴンは……」

「あ、そうそう、おっきなドラゴンは古代に滅んでいるんだけど、なんと、このちっちゃなドラゴンは、滅んでなかったの! 古代魔法遺跡であたしとロファール先生が発見したんだよ! あ、おっきなドラゴンは私が復活させたよ! えっへん!」


 そういえば日誌に書いてあったな。古代魔獣のドラゴンをヴァルヒルダが復活させたと。


「んとね、ちっちゃいドラゴンちゃんは、特殊な魔法障壁の中で暮らしていてね、そこね、遺跡の一室なんだけど、中に入ると、なんか違うの。すごーい広い野原なの。そこでね、ドラゴンちゃんがたくさんいるの」

 うーむ、一種の亜空間だろうか。

「このドラゴンちゃんはね、これ以上大きくならないし、魔力もそんなにないんだけど、こうやってお話しできるんだよ。ね、マルル」

 マルルが「そーだよー」と返事した。

「でね、ドラゴンちゃんとお友達になると、呪文でどこでもやってきてくれるようになるんだよ。その呪文を発見したのも、あたしとロファール先生だよ!」

 いわゆる召喚魔法か。


「あ、着いたよ」

 ヴァルヒルダがストーンヘンジのような石柱列を指さした。

「あんなに小さいのか?」

「もーセンセー、そんなわけないでしょ! あれは入り口なの!」


 円形に並んで立っている石柱の真ん中に俺たちは着地した。

「ドラちゃんまたね」

 マルルが言った。ミニドラゴンはお菓子をもらって帰って行った。


 ヴァルヒルダがしゃがみ込んで、地面を指さした。

「ここに、ほら、紋章があるでしょ?」

 石で出来たマンホールみたいな蓋の中央に、紋章が刻まれている。

「ここに、かるーく魔法弾を……ぽん、とやるの」


 ヴァルヒルダがぽん、と魔法弾を紋章に撃った。すると、一番大きな石柱が割れ、入り口が出現した。地下へ続く階段が見えた。

「行くわよ」


 俺たちは地下へ降りていった。

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