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転生勇者は異世界で少女たちと戯れたい。  作者: 上城ダンケ
第三章 古代魔法遺跡のヴァルヒルダ
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隣のリリカ

 翌朝、俺はフレイアとともにブリッジにいた。ブリッジの大きな窓から、魔法障壁に守られた、王都ヴェイグンが見えていた。


 天空要塞は王都の低空をゆっくり飛んだ。やがて、軍の空港のようなところに着陸した。


「なんとか無事に帰ってこれたわね。とりあえず、皆自宅で待機よ。リリカ、あなたも自宅へ帰っていいわ」

「おっけー、久しぶりの実家だー!」

「……あなたって、ほんと、敬語使えないのね」

「はは、だってフレイアはフレイアだろ? 幼馴染なんだからさー、別にいいじゃん。二人っきりの時はフレイアだって『ねぇロファール、チューしてん』とか言ってんだろ? 隠すなよ!」


 フレイアの顔が真っ赤になった。


「リリカ、怒るわよ!」

「もー冗談だって。おーい、みんな、家に帰るぞ! ほらほら早く! ロファール様とフレイアがブリッジで二人っきりになりたがってるんだ、急ごうぜ!」

「だから、そうじゃなくて!」

「いいから、いいから」

 リリカは笑いながら廊下に出ていった。

「ごゆっくりー」

 ばたん、と扉が閉まった。


「もう、リリカったら冗談ばっかり」

「リリカって、君の幼馴染なのか?」

「ええ。そして、ロファール様の幼馴染でもあるわよ。リリカとロファール様の家は隣同士だからね」


 そういや、ロファールの家族ってどうなってんだろう。

 ブリッジを出て出口へ歩きながら、俺はそのことを聞いてみることにした。

「なあ、フレイア。俺の家族って、どういう感じなんだ?」


 フレイアが立ち止まった。

「……そっか、知らないよね。本物ロファールじゃないから」

 再びフレイアが歩き出した。

「ロファールのご両親はね、二人とも王立魔法研究所の研究員だったんだけど、魔法実験の事故で亡くなったの。ロファールが十歳の時よ。それから、ロファールは、大人になるまでの間、お隣のリリカの家で育てられたの。今は自分の家に戻ったけどね」

「なるほど」


 だから、あいつ、俺に馴れ馴れしいんだ。


「ロファールもリリカのことは実の妹のように可愛がっていたからね。リリカには甘かったの、ロファール。さ、船を降りましょ」

 フレイアが言った。


 船を下りてフレイアと別れた。俺も自宅に戻ることになった。

「記憶喪失」の俺のために、隣に住んでいるというリリカが家まで案内してくれることになった。


「よー、ロファール。フレイアとのお話はもういいのか?」

「ああ、終わった」

「そっか、じゃあ、帰るぞ」

「歩いていける距離なのかな?」

「うん」

 俺はリリカについて行った。


「ロファールさあ、本当に何も記憶がないわけ?」

「ああ」

「ふーん。そうなんだ。じゃあさ……」

 リリカが歩きながら考え込んだ。

「……自分の職業とかも、忘れているんだよね?」

「軍人ではないのか?」

「軍人じゃないよ。臨時に国王陛下から天空要塞の司令官に任命されているだけさ。なんていっても、王国一の超魔道士だからね」

「じゃあ、もともとは俺は何をやっていたんだ?」

「あー、それ全部私が説明するのかー。いいか、よく聞けよ」


 家に着くまでの間、リリカはロファールのことを話してくれた。


 フレイアも言ったとおり、ロファールの両親は魔法実験の事故で亡くなった。


 リリカの家に引き取られてからのロファールは、リリカと実の兄妹のようにして育った。リリカは幼なじみのフレイアとともに魔法軍に入隊。ロファールは王立魔法研究所付属高等学院、通称魔法学院に進学した。


 ロファールの家系は代々魔法研究家だった。ロファールは、魔法学院を首席で卒業し、両親と同じ王立魔法研究所に入所した。そして、ロファール家の使命である「魔石の研究」に没頭した。


「魔石って何だ」

 俺はリリカに聞いた。

「うん、魔石っていうのはね、自然界に存在する魔法力を閉じ込めた石なんだ。すんげーパワーもってんだけどね、通常の人間は触れないんだよ。触ると死ぬことすらあるんだ」

「それを俺が研究していた?」

「そう。ていうか、ロファール家は代々、国王陛下の命令で魔石を研究してきたんだ。なんでかって言うと、魔石はロファール家の男子と、マルムスティル家の男子のみ、触れるんだよね。だから、もう何百年もロファール家の男子、だからおまえの父ちゃん、爺ちゃん、みんな魔石の研究やってたんだ」

「なぜロファール家と王家の男子のみ触れるんだろう?」

「だーかーらー、それをおまえが研究してたんだって。わかるわけないだろ、私なんかに」

 確かにそうだ。


 さらにリリカは、俺が魔法研究所のマイスターになっていたと教えてくれた。マイスターとは簡単に言えば教授である。研究しながら、王立魔法研究所付属高等学院で教育にも当たるそうだ。つまり先生だ。


「でさ、国王陛下の娘が魔法学院に入学したときにさ、陛下はおまえに娘の教育を命じたんだよ。その娘ってのがヴァルヒルダなんだな、これが」

「ヴァルヒルダ?」

「そう、ヴァルヒルダ。国王陛下はおまえに娘の教育を任せたんだ。ヴァルヒルダはおまえに一目惚れでさ、こっちが見てて恥ずかしくなるほど、おまえに猛烈にアタックしていたんだぜ。なのに、お前全然気がつかなくってさ。ていうか、そもそも陛下がヴァルヒルダとお前をくっつけようとしていたっぽいんだけどな。お前、陛下のお気に入りだったから。そういうこと、全部覚えてないんだろ?」

「……ああ、もちろん」


 なんと。ヴァルヒルダが俺の生徒。

 教え子からの猛烈アタック。くそ、俺だったら毎日禁断のラブ、放課後の校舎でいけない行為だったのに! ロファール、うらやまけしからん!


「ヴァルヒルダは古代魔法文字の解読に成功してさ、それで古代魔法遺跡の場所がわかったんだよ。おまえとヴァルヒルダは、毎日遺跡へデートさ。あ、これはフレイアがそう言ってたんだけどな。あのころのフレイアすごかたったぜ、嫉妬の嵐で」

「その頃から俺とフレイアは婚約していたのか?」

 リリカが首を振った。


「ううん。してなかった。ていうか、あまりにもヴァルヒルダがロファールを誘惑するもんだから、焦ったフレイアがおまえに正妻としての≪契り≫を申し込んだんだよ。そしたらロファールあっさりオッケーしてさ。ただ、自分はまだまだ半人前だからとかいって、婚約しかしなかったんだけどね」


 なんだそのモテっぷりは。


「女から男にプロポーズ? それって普通なのか?」

「普通じゃないさー。普通は男からプロポーズ、だぞ! 掟破りだって、ヴァルヒルダが激怒したんだけど、婚約したもの勝ちだからなあ、こればっかは」

「ヴァルヒルダとも≪契り≫交わせばいいじゃないか、側室として」

「おいおい、国王陛下の娘が側室? それはありえないぜ?」

「……まあ、そうだな」


 そういう経緯があって、ヴァルヒルダは和平条件に婚約破棄と自分との≪契り≫を申し出たのか?


 ……って、あまりにも幼稚では? 『マルムスティル王国の真実』に書いてあった国家構想とのギャップが激しすぎるのだが。男のために、そんな理想を簡単に捨てるだろうか。


 俺なら女、というか女体をとるだろうが。


「お、ついたぞ。おまえの家。……鍵持ってる?」

「……いや、持ってない」

 しまった。家の鍵のことなんか念頭になかった。

 俺の頭にあるのはヴァルヒルダちゃんとの子作りのことだけだったからな。


「だろうな。じゃあ、開けてやるぞ。私の家におまえの家の合い鍵があるからな。同じように、おまえの家にも私んちの合い鍵があるんだぞ」

 リリカが自分の家にから合い鍵をとってきて、俺に手渡した。

「仲いいだろ、私たち。まあ、兄妹みたいなもんだからな」

「助かったよ、リリカ」

「はは、いいのいいの。私とロファールの仲だからさ」


 リリカが俺の横に来て、肘で俺をつつきだした。


「私さ、おまえとさ、その……≪契り≫交わしても……いいんだぞ」

 リリカは冗談ぽく笑ったが、顔は真っ赤だ。

「私、ロファールの子供だったらさ……産んでもいいかな……なんてさ。私は十九歳だからな、その……知ってるんだ、子作りのこと。ロファールとだったら、そ……そういうこと、やっても、いいんだぞ」

 そう言って、リリカは自分の家に入っていった。中から「ただいまー」というリリカの声と、「おかえり」という両親の声が聞こえた。


 俺は合い鍵を使って家に入り、ソファに座った。窓から見えるリリカの家をぼーっと見つめながら、俺はリリカの先ほどの台詞、「そういうこと、やっても、いいんだぞ」を反芻していた。


 兄妹のようにして育った幼なじみからの、突然の告白。ボーイッシュな少女の意外な一面。


 たまりません。やりましょう。ぜひ「そういうこと」!

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