ビキニちゃん
「フレイア! ドラゴンを倒したぞ!」
甲板を走りながら、俺は叫んだ。
先に反応したのはビキニちゃんだった。
「えー? どゆことー? ドラゴンを倒した? なんでなんで、どうやって?」
ビキニちゃんがこっちを見て驚愕の表情をした。
「そんなの、ロファール以外、無理だもん……って、え? ロ、ロファール? 生きてたの?」
まるで幽霊を見るような顔をして俺を見ている。
「……? あ、ああ、生きてたぜ?」
よく事情はわからないが、とりあえず、そう答えた。この前の戦闘で戦ったのだろうか?
「どういうことよ、フレイア! ロファール、生きてるじゃないのよぉ! はーなーしーがーちーがーうー!」
ビキニちゃんは「もーなんでー」「えー聞いてないんですけどー」「ありえなーい、マジしんじられなーい」などと、騒ぎ出した。
フレイアがビキニちゃんに向かって語りかけた。
「少しは落ち着いたら、マルル。……見た通り、ロファール様は健在よ!」
勝ち誇ったようにフレイアが言う。
「ね、ロファール様」
だから俺に振るなって。事情わかってねーんだから。
マルルが俺とフレイアの顔を交互に見た。
「はじめにロファールは生きている、って教えてくれたらいいじゃないのよー! なんで教えてくれないのよー! いい、フレイア? ロファール様が生きているなら、話は別なの! ヴァルヒルダ様にこのこと報告するの! ロファール様を殺したりなんかしたら、私、ヴァルヒルダ様に怒られちゃう!」
え? 俺を殺したらヴァルヒルダが怒る? なんで?
「ロファールが死んだと思ったから、ヴァルヒルダ様もやけになって、天空要塞壊してしまえー、皆殺しだー、ってなってたのに。話が違うじゃないのよー!」
マルルが呪文を唱えた。すると、大型犬ほどの大きさの、小さなドラゴンが現れた
マルルはそのミニドラゴンにまたがった。
「マルル-、重いよー」
「もー、失礼ね、ドラちゃん。レディに『重い』は禁句なんだよ!」
「だって、重いものは重いんだもん。僕、重いの嫌い」
「だって幻影ドラゴンが壊れたから仕方ないの! ドラちゃんに乗って帰るの!」
「えー、やだー」
ドラちゃんというミニドラゴンは、「やだやだ」とだだをこねていたが、マルルが「あとでお菓子あげるからね」というと、「わーい」と言って、おとなしくマルルを乗せて空へ飛び立っていった。
「どういうことだ? さっぱりわからない……」
フレイアが俺に近づいてきた。
「そうね、何から話せばいいのかな……。とりあえず、中に入りましょ」
俺、フレイア、そのほか大勢の魔法使いと一緒に、ハッチの中に入った。
まずは、怪我の治療、そして魔法力と体力の回復が先決ということで、治療が必要なものは医務室へ向かった。
そのほかの者は風呂で汗と泥を落とそうということになった。大浴場に薬草風呂が用意されているという。
俺はフレイアに男湯はどこか聞いた。
「オコトユ? 何それ?」
「男湯は男湯だよ。男性用の風呂のことだよ」
「男性用? お風呂に男性用とか女性用とかあるの?」
「あるだろ、普通……」
フレイアはまじめに考え込んでいる。
「なぜ? どんなメリットがあるのかしら?」
メリットって……。
「いや、常識で考えて、男女が一緒に風呂に入るわけにはいかないだろう?」
「……どうして?」
まさか……まさか……。
この世界には「男湯」というものがないのでは。
いや、あり得る。
なにせ、男女比が1:99だ。百人に一人しか男子が生まれないのだ。わざわざ「男湯」を作るのは無駄というわけではなかろうか!
ああ、神様。なんて素晴らしい世界なんですか!
死んでよかった!
「とにかく、大浴場はこの通路の奥よ。あと、これがこの天空要塞の地図。渡すの忘れていたわ、ごめんね」
地図を受け取ると、俺は一目散に大浴場へ向かった。通路の奥……通路の奥……、あった。「大浴場」と書いてある。どことなく和風だ。
さ、さっそく、入ってみよう。扉の前で俺は深呼吸した。
落ち着け俺。何を見ても興奮するな。特に将軍様。
紳士たれ。
俺はゆっくりと、重厚なドアを開け、大浴場に入った。
すると、そこにはあられもない姿の少女たちがあった。
尻、尻、そして尻。もちろん胸だって。
まさに天国。至福。俺が入ってくるやいなや、少女たちの視線が集まる。
「ロファール様よ!」
きゃーきゃー言いながら少女たちが俺に群がる。俺の将軍様が急速に膨張を始める。
まずい。このままでは……。とりあえず、湯船につかろう。
魔法使いちゃんたちにとって「ロファール様」はあこがれの存在らしく、入浴時、やたら握手を求められた。
全裸の少女たちが無邪気に接近。
今まで見たこともない、幼い乳首の数々。まだ毛の生えていない股間。
俺の将軍様はスカイツリー並に巨大化してしまったが、なんとか湯船の中でごまかした。
「あ、握手してください」
胸の大きな魔法使いちゃんが握手を求める。
「あ、ありがとうございます! わーい!」
感激のあまり飛び跳ねる巨乳ちゃん。ぷるんぷるんゆれて……もう俺は限界だ。
そんな至福の時を限界まで堪能したため、俺は少々のぼせてしまった。
真っ赤な顔で部屋に戻ると、扉の前にリリカがいた。
「おう、ロファール。風呂どうだった?」
……元の世界では違法だろうロリ乳首を堪能できた、とは言えないので、
「ああ、いい湯だった」
と答える。
「フレイアがさ、夕食を一緒したいって」
とリリカ。
「時間と場所は?」
俺はリリカに聞いた。
「おっと、そうだったな。場所は、えーと、司令官室だ。時間は今から三十分後、午後七時だな」
あと三十分か。本でも読んで待っとくか。
「ありがとう。じゃあ、時間になったら司令官室に行くよ」
「おう。じゃーな。」
私は仕事に戻るから、と言って、リリカは去って行った。
俺は扉を開け、部屋の中に入り、ベッドに寝転がり、転生してから、今までのことを思い出していた。
ルラルちゃんのチューまではよかった。フレイアがフィアンセということろも、まあ、よかった。
その後がよくない。いきなりバトルだ。無我夢中でドラゴンと戦ったが、正直、こんなしんどいバトルが続くのであればやってられない。
はっきり言って、逃げ出したい。ここから。天空要塞から。
もちろん、ルラルちゃんの唇とか、太ももとか、名残惜しくはある。フレイアの胸だって、まだ触ってない。さっき風呂で猛烈に劣情を刺激された俺は、すでにルラルちゃんに挿入したくてどうにかなりそうだ。
そう。俺の目的は挿入。こんな戦いを繰り返していたらいつか死ぬ。実際、本物の「ルファール様」は死んだじゃないか。挿入など夢のまた夢。
夢をあきらめるな。そう、俺は夢追い人。
とりあえず、フレイアとのディナーで情報を集めよう。ヴァルヒルダのこと、戦争のこと、マルムスティル王国のこと、いろいろ聞いた上で、とりあえず挿入しよう。ルラルちゃんに。
俺は適当な服に着替え、司令官室へ向かった。




