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転生勇者は異世界で少女たちと戯れたい。  作者: 上城ダンケ
第二章 ヴァルヒルダとの邂逅
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ドラゴンとの対決

 せっかくフレイアがビキニ魔法使いの魔法障壁を破壊してくれたというのに、俺は地面に向かって、真っ逆さまに落ちていっていた。


 俺はゲームの仕様書を思い出しながら、シルバーのランドセルのようなロケットブースターをイメージし、「ロケットブースター」と組成呪文を唱えた。

 一瞬空間がゆがみ、俺の目の前の空間にロケットブースターが現れた。俺はそれを装備し、エンジンをオンにした。ロケットエンジンが火を吹いて、一気に上昇していく。


 数秒でドラゴンの少し上まで上昇した。ロケットの出力を弱め、ホバリングした。

 下を見ると、ドラゴンが目をかきむしりながら、激しく頭を振っていた。よほどタバスコが目にしみるのだろう。ハバネロ入りタバスコにしておいてよかった。そんなことしてもタバスコは落ちないぞ。水で洗わないとな。


 と、余裕をかましている場合ではない。あんなに頭を左右に振られていたのでは、角を魔法弾で狙い撃ちできない。


 ロケットブースターは構造が複雑だ。魔法力をかなり消費している実感がある。あまり時間がない。予備でもらったポーションは三本。

「これで足りるのか?」

 足りなかった場合、角は破壊できない。


 とうとうロケットブースターが消滅した。魔法力の枯渇だ。

 俺は真っ逆さまに落ちて行く。ポーション使うか? でも、そうなると魔法弾のための魔法力が……。


 その時、天空要塞から一人の魔法使いが飛んできた。

 フレイア?

 敵を倒して俺の方へ来た?


 違う。胸が小さい。


 ルラルだ。ルラルが背中に羽を生やし、俺のところに飛んで来たのだ。

 ルラルは真っ直ぐに俺の方へやって来て、おれをがっしり捕まえた。

 ルラルも飛翔魔法使えるんだ。


「ロ、ロファール様! ち、血だらけ……。だ、大丈夫ですか!」

 ああ、これね、血ではなく、タバスコなんだよね。

 説明めんどくさいから、血ということでいいや。

「ああ、これくらいの血や怪我、なんともないさ」

 あー、俺かっこいいなあ。俺は「血」をぺろっとなめた。

 か、辛い!


「……私が、ロファール様を……支えます。私、お姉さまみたいに、他の人に翼をはやすことはできないけど……ロファール様を支えるくらいなら!」

 耳まで真っ赤になった顔を俺の胸に埋め、ルラルは言った。

「あ、こうしたほうが……ロファール様の魔法力、わかる……」


 ぎゅっ、とルラルが俺を抱きしめる。

 ああ、俺もぎゅっと抱きしめ返したい!

 だが、我慢である。今は戦闘中なのだ。本当は、俺もルラルちゃんを抱きしめて、ついでに、いろんなところ、もう、それはいろんなところを、触りまくりたいのに。


 そのためには、一刻も早く、ドラゴンを倒さねばならない! ドラゴンを倒した後のどさくさで、ルラルちゃんのロリスレンダーボディを合法的に楽しまねばならない!


 俺は、ポケットのポーション三本を一気に飲んだ。

「どうだ、ルラル、俺の魔法力は回復したか?」

「いいえ、ロファール様……。魔法力は、回復してません……」

 やはり、ポーション三本では足りなかったか。

「どれくらい足りない?」

「完全復活には……ポーション十本くらい……。もっとかも……」

「いいか、ルラル。俺の魔法キャパシティは以前より大きくなってるんだよな?」

「はい」

「ドラゴンの角は、以前の俺のフルパワーで破壊できる。そうだよな?」

「はい」

「だとしたら、今の俺のフルパワーは必要ない。以前の俺のフルパワーと同程度であればよい。そうだよな?」

「……はい、そうです」

「だったら教えてくれ。以前の俺のフルパワーと同じだけ回復するには、あとどれだけポーションが必要なんだ?」

「み、見てみます……」


 ルラルがさらにぎゅっ、と俺にしがみつく。


「あと……あと、一本……」

「ルラル、ポーション持っているか?」

 ルラルが首を横に振る。

「くそう、ここまで来て……!」

 残念だが、このままでは戦えない。


「ルラル、一度天空要塞の甲板に戻ろう。下からポーションをとってくるしかない」

 俺はルラルに言った。

 しかし、ルラルは首を横に振った。

「だ、大丈夫……こうすれば……大丈夫……」

 ルラルが、体を動かし、自分の顔を俺の胸元から、俺の顔のところまで上げた。

「……目をつぶってください」

 なんでだろう? 言われたとおりに俺は目をつぶった。

「ご、ご無礼を……お許しください……」

 ルラルが、その柔らかい唇を、俺の唇に重ねた。

「!」


 ルラルの唇を通して、俺の口へ、何かが流れ込んでいる。液体だ。

 も、もしかして……だ、唾液? これってディープキス?

 それも唾液って、ちょっと、いきなり高度プレイすぎない?


「んっ……ん……ん……」

 あれ? これ唾液じゃない。ポーションに似ているけどポーションとは違う。

「……わ、私の全魔法力を、ロファール様に……差し上げました。ポーション一本分くらいはあります」

 ルラルは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「こ、こうしないと……口移しでないと……魔法力は……分けられないんです……」

 そうだったのか。むしろウエルカムだ!

「……最後にこのポーションを、飲んでくだ……さ……い……」

 ルラルの手からポーションが落ちそうになる。それを俺は受け取り、一気に飲み干した。ほぼ同時に、ルラルは気を失った。俺は左手でルラルを抱え、右手に魔法力を込めた。


 ルラルの翼が消えた。俺たちは落下を始めた。真下にドラゴンの角がある。

 俺は詠唱呪文を唱え、右手から、全魔法力を魔法弾に変えて発射した。


 魔法弾は正確にドラゴンの角にヒットした。角は粉々に砕け、さらに、魔法弾はドラゴンの頭部を貫通。ドラゴンの頭部ははじけ飛んだ。

 俺とルラルは、天空要塞の魔法障壁に着地、かろうじて障壁の亀裂にしがみついて墜落を免れた。。


 頭部を失ってもドラゴンは生きていた。腹だ。腹を攻撃せねばならぬ。


「くそ! 魔法力があれば、一気に破壊できるのに!」

 魔法力を使い果たした俺は、ルラルを抱え、魔法障壁の亀裂から滑り降りないようにするだけで精一杯だった。


 腕が痺れてきた。魔法障壁にしがみつくのもそろそろ限界だ。

 もうだめだ、落ちる……。手の力が抜け、俺とルラルは球形の魔法障壁上を滑り落ちだした。

 あー魔法力ないしどーしよーもねーなー。このまま地面に激突して死ぬなー。

 ごめんなルラルちゃん。

 ルラルちゃんだけでも助けられないかなあ……。


 今までルラルちゃんでえっちな妄想してごめんね。


「はいはいはい、そこのお二人さん、いつまで抱き合ってんの!」


 魔法障壁の上を滑ることなく走ってくる少女がいる。髪は黒で短め、ドレスでなく、ズボンをはいている。


 あれは確か……操舵手の……だれだっけ?


「あらよっと!」

 ズボンの少女が何か呪文を唱えた。俺とルラルの体が空中で止まる。

「おっらー!」

 見えない手でつかまれたかのように、俺たちの体が持ち上げられ、少女の足下まで運ばれた。

「おい、私の周囲だけ、魔法障壁解除だ!」


 ズボンちゃんが大声で指示する。

 すると、足下の魔法障壁がすっと消え、俺たち三人は甲板に激突……しなかった。何かに支えられたかのように、安全にゆっくりと着地した。

「はい、ありがとね、マジックハンド!」

 ズボンの少女が空中に向かって手を振った。


「おい、ロファール、おまえすげーなー、ドラゴンの角壊したんだ。でさ、魔法力使い果たしたんだろ? はいポーション。たっぷりあるからな」

 俺は魔法回復ポーションを飲んだ。


「……ありがとう。ええと……」

「おいおい、まだ記憶喪失直ってないのかよ。リリカだよ、操舵手の」

「リリカ。リリカか。そうか、そうだったな。ありがとう」

 俺はさらにポーションを飲みながら答えた。


「ごめんな、今非常事態でさ、あのビキニのねーちゃん、黒魔法使いはみんな、あいつと戦っているし、私たちパイロットとメカニックはあちこちの修理に走り回っていてさ、おまえが魔法障壁にへばりついているの、誰も気がつかなくってさー、はっはっは。たまたま私が気がついてよかったよ」


「おい、ルラル、おまえもポーション飲めよ。魔法力空っぽだろ?」

 リリカがルラルに膝枕でポーションを飲ませる。

「……あ、あれ、リ、リリカ……なんでリリカが?」

「お、気がついたか? ごめんなー、膝枕しているのがロファールじゃなくてさ」

 ルラルの顔が赤くなる。

「ち、ちがうもん! べ、べつに、私、ロファール様のこと……」

「へー、≪魔力の泉≫までやってあげたのに?」

「い、言わないで!」

 さっきの魔法力口移し、≪魔力の泉≫というのか。


 いや、今はそれどころじゃない。

 まだドラゴンが健在なのだ。倒さないと。

 俺は組成呪文を唱えた。

「ゴスロリ様専用ハイパーガトリング砲・改!」


 ガトリング砲を上空にいるドラゴンに向け、狙いをドラゴンの腹部にセットした。

「これで終わりだ!」

 俺はトリガーを引いた。無数の魔法弾がドラゴンの皮膚と骨を削り、腹部を内部から破壊した。

 ドラゴンが断末魔の叫びをあげる。


「やったな、ロファール!」

 リリカが俺に肩パンチする。こいつ、こんなになれなれしいな。

「よし、私たちは修理が残っているから、機関室に行くぞ。おまえはフレイアのとこへ言って、ビキニちゃん倒す手伝いやってこいよ!」


 そうだった、まだ終わっていなかった。俺はもう何本か魔法回復ポーションを飲んだ後、フレイアとビキニちゃんが戦う甲板前方へ走っていった。

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