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転生勇者は異世界で少女たちと戯れたい。  作者: 上城ダンケ
第二章 ヴァルヒルダとの邂逅
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飛翔魔法

 フレイアと俺はドラゴンよりかなり上空まで一気に上昇した。

 はっきりとドラゴンの角が見えた。

「あれか! よし、まかせろ!」

「ちょっと待って!」


 フレイアが俺を制止する。

「見て……角の後ろに魔法使いがいる。あの魔法使い、かなり強力な魔法障壁を角の周りに張り巡らしているわ」

「それがどうしたんだ?」

「あの魔法障壁が魔法弾の威力を削いでしまうわ。フルパワーでない魔法弾を角にぶつけても、遮蔽装置は破壊できない」

「じゃあどうするんだ?」

「まず、私があの魔法障壁をなんとかする」

 フレイアが言った。


 フレイアはすーっと、息を吸い、ゆっくりと組成呪文を唱えた。

「ドラゴン・ランス!」

 長さ五メートルはある巨大な槍が出現した。かなり重いらしく、フレイアの姿勢が歪んでいる。


「なんでそんなに重いんだ? 組成魔法なら重量がコントロールできるんじゃないのか?」

「わ、ざと、よ……」

 フレイアが苦しそうに答えた。腕が震えている。

「わざと?」

「……ま魔法障壁はね、ぶ、物理攻撃に……一番……弱いのよ……」

 フレイアが態勢を整え、ドラゴンランスを構える。


「今から、……この……ドラゴンランスをこの高さから落として……魔法障壁に穴を開けるわ。……そ、その穴から……あなたが、角に向かって魔法弾を……撃つのよ!」


 フレイアは重量級のランスに加速エネルギーを加え、一点集中で魔法障壁に穴を開ける気だ。


「さあ……、来て。一緒にドラゴン倒すわよ」


 フレイアが俺の手を握った。次の瞬間、俺たちはドラゴンに向かって急降下を始めた。


 ものすごい風圧だ。まともに目が開けられない。俺は組成魔法でゴーグルを作り、装着した。よく見ると、フレイアもゴーグルっぽいものをつけている。あれも組成魔法だろうか。


 数秒後、眼下に天空要塞の魔法障壁に取りついているドラゴンが見えてきた。

 ドラゴンは俺たちに気がつくと、こっちを向いた。角が見えなくなった。


「しまった、気づかれたわ!」

 まずい、このままでは、角を守る魔法障壁をフレイアが破壊できないし、俺も角を攻撃できない。

 フレイアが俺の方を見ていった。

「お願い、なんとかしてドラゴンの頭を下げさせて!」

 うーん、なんとかしてと言われてもだな……。どうしたらいいんだろう。俺のフルパワー魔法弾なら障壁を突破できるようだが、それをやってしまうと、今度は角に十分な攻撃ができない。


 俺は脳内コンピュータをフル稼働させる。

 

 魔法障壁は、物理攻撃も魔法攻撃も防ぐ。だが、空気は通す。

 でないと、そのうち窒息するからな。

 また、さっき水鉄砲で火球に水をぶつけたとき、水蒸気だけでなく、水も天空要塞の魔法障壁をくぐり抜けて侵入してきた。


 つまり、気体と液体は魔法障壁をくぐり抜けることが可能だ。


 硫酸でもかけるか? いや、飛び散ってこっちも火傷する。却下だ。


 とにかく、ドラゴンに下を向かせればいいんだろ。角の真上がこっちを向けばいいんだ。

 そしたら、魔法使いが展開する魔法障壁をフレイアが破ることができる。


 液体を使ってドラゴンに下を向かせる……。


 あ。


 すんごい、しょうもない作戦を思いついてしまった。

 水風船にタバスコ入れてドラゴンの目に投げつけたらいいんじゃね?

 水風船そのものは固形物だから、魔法障壁で破壊される。

 でもタバスコは魔法障壁をくぐり抜ける。タバスコが魔法使いとドラゴンの目直撃。思わず下を向く。

 その瞬間を狙って、フレイアがランスをズバーン!


 これだ!

 タバスコは調味料だから、飛び散って俺たちに付着しても問題ない。服のシミにはなるけど。

 あとはフレイアの飛行能力を信じるしかない。


「フレイア、俺が先に行く! 俺の翼を消してくれ!」

「え? そんなことしたら、墜落するわよ!」

「空気抵抗を減らし、君より先にドラゴンに到達する必要があるんだ!」

「どうして? なんのために? 角に魔法弾撃てないじゃん!」

「説明は後だ! 早く消してくれ!」

「わかったわ」


 一瞬フレイアが目をつぶった。俺の翼が消える。俺は両腕・両手を身体に密着させ、空気抵抗を最小限にし、フレイアより先にドラゴンに向かって降下した。

 

 降下しながら、俺はタバスコ入り水風船をイメージした。

 数はそうだな、百個くらいか? この程度だったらあんまり魔法力使わないだろう。


 ……よし、いい感じにイメージできた! 後はドラゴンの頭上で組成させ、一気に投下だ!


 ドラゴンの頭上にいる魔法使いが俺に向かって魔法弾を撃ってきた。だが、急速で下降する俺には当たらない。


 おまけに俺は「ロファール様」なんだ。俺の魂が覚えてなくても「ロファール様」の身体は、戦いを覚えている。魔法弾なんか、いくらでも避けてやる!


 ドラゴンの頭が急に大きく見えだした。魔法使いの姿も見える。

 あれ……けっこう可愛い……おまけにビキニ……上からなので胸の谷間がすんごい見える……。


 は! いかん! 集中!


「タバスコ入り水風船百個!」

 タバスコ入り水風船百個が出現した。ビキニの魔法使いちゃんが魔法弾で水風船を撃った。水風船は破裂、タバスコが魔法使いちゃんの頭を直撃した。


「なにこれー! 痛い! 目が痛い! くそー! きゃー口に入った! ひー! なんか辛いー!」


 残りの水風船も次々に魔法障壁に直撃、破裂、ドラゴンの顔面に大量のタバスコが流れた。


「ンギャース!」


 ドラゴンが悲痛な声を出し、手で目を押さえる。自然、頭が下を向いた。

「よし!」

 全身にタバスコを浴びながら、俺は歓喜の声を上げた。


 続いてフレイアがランスをドラゴンの頭上に突きつけた。激しい火花が飛び、ビキニ魔法使いちゃんの魔法障壁が砕け散るのが見えた。


 すごいぞ、フレイア。穴が開くどころではない、完璧に破壊したな!


 そのままフレイアは魔法障壁を展開したらしい。ビキニ魔法使いちゃんと魔法障壁ごと激突し、二人一緒に、天空要塞の魔法障壁を滑り落ち、魔法障壁の隙間から要塞の甲板に落ちていった。二人は甲板上で立ち上がり、さらに戦いを始めた。


 よし、そっちは任せたぞ。


 ということで、今度は俺がドラゴンの上空に上昇し、全魔法魔法弾を撃つ番だ。


 で、どうやって空を飛ぼうかな。俺は地面に向かって真っ逆さまに落ちながら、わりと焦っていた。

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