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転生勇者は異世界で少女たちと戯れたい。  作者: 上城ダンケ
第二章 ヴァルヒルダとの邂逅
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ドラゴン来襲

 ドラゴンからの火球が頻度を増して来た。

 魔人の攻撃でダメージを受けた魔法障壁は、残った部分でなんとかドラゴンの火球を防いでいる。


 ドラゴンの姿がはっきりと見えた。ティラノサウルスに翼をつけたような形のドラゴンだ。両肩のところに魔法大砲が装備されている。頭部には手綱があり、魔法使いらしき少女が乗っている。


「おい、フレイア、このままでは要塞が落ちるぞ」

「大丈夫よーロファール様がいるから。あ、でもパチモンかー、きゃはは」

「おい、酔っ払っている場合じゃないって。俺は黒魔法しか使えないんだ。白魔法で防御できない。それに黒魔法だって組成呪文しか唱えられない。詠唱呪文はまだ覚えてないんだ!」

「えー、そーなの?」


 ええい、なんだこの酔っ払い!


 とりあえず俺は火には水という単純発想で、巨大な水鉄砲を出すことにした。

「水鉄砲!」

 消防士のホースのような水鉄砲が出て来た。まあ、これくらいなら魔法力とのバランスも大丈夫かな。


「はははー、なにそれー?」


 酔っ払いは黙っていなさい。


 俺は巨大水鉄砲で火球を撃った。


 が、これは大失敗だった。激しい水蒸気が発生し、周囲が何も見えない。おまけに火球は無傷だ。火球が魔法障壁に直撃。障壁にヒビが入った。


「ちょっとー、何も見えなーい。なんかー、湯気だらけー。あ、お風呂かな? 脱がなきゃねー。ぬぎぬぎ」

 フレイアはドレスのボタンをはずし始めた。


 もう、好きにしてくれ!


 水はダメか。どうすればいいだろう。


「あの……ロファール様」

「ルラル? まだそこにいたのか?」

「ロファール様は……魔法力と組成魔法のバランスに悩んでいますか?」

「ああ、そうだ、よく分かったね」

「ま、魔法に迷いが見えたから……あ、ご、ごめんなさい、偉そうなこと言って……」

「大丈夫だよルラル。そうなんだ、どれくらい魔法力使っているかいまひとつ分からなくて」

「……私が、魔法力を見ながら、お伝えします。でも……ロファール様の魔法力、なんだかとても奥深いとこにあって……こうしていいですか?」

 

 ルラルが後ろから俺にしがみつき、腰に手を回した。


 ヘソのあたりを両手でまさぐっている。


「魔眼の応用なんです。こうやって、……手のひらに魔眼能力を移動させて、直接触ると……よく見えます……」

 ちょっとちょっと、ルラルちゃん、それ、当たってる! 先っぽに当たってる!

「ん? これ、なんだろ……」

 あ、こら、だめだ、握っちゃ!

「だめだ、そこは握る……じゃなくて、しがみつくところじゃない!」

「……ロファール様にしがみつくなんて……ごめんなさい、ご無礼をお許しください」

「かまわん、非常事態だ」


 とりあえず、俺の下半身が非常事態宣言だ。


「ロファール様、組成呪文をお願いします。魔法力を過度に使用していたら、私、そう、言いますからね……」

「わかった」


 俺は巨大なバットをイメージした。

  真っ黒で、太くて、固くて……。

 それをルラルちゃんの、上のお口と、下のお口に……。


 いかん、邪念が入る。俺の下半身の比喩表現じゃない、本当のバットだ。

 落ち着け俺。ここで負けたらダメなんだ。組成呪文失敗したら俺たちは終わる。ドラゴンに勝てない。


 ここで終わるわけにはいかねぇ。


 さきっちょだけと触りっこしているルラルちゃんと、子作りするためには、ここで終わるわけにはいかねーんだよ!


 俺は目を閉じ、精神を集中した。


「超長い金属バット!」


 ボン、とやたら長い金属バットが出て来た。長さ五十メートルはある。

 こんなの、さすがに重いだろうし空気抵抗とかあるし、無理かな、と思ったが、バドミントンのラケット程度の重さしかない。


「ルラル、どうだ? 魔法力は? 使いすぎか?」


 ルラルが俺のヘソのあたりをもみもみした。

 あと、先っちょに当たっている。

 たまらんです。


「……だ、大丈夫です。これなら……えっと……一時間くらいは、余裕で持ちます」

「よし、わかった。俺はしばらく暴れるから、離れて安全な場所に隠れろ!」

「はい」


 ルラルは俺から離れ、ハッチの方へ走って行った。

 ではさっそく、この超ロング金属バット試してみるか。

 火球めがけて、俺はバットを振った。

 カキーン。真夏の甲子園のごとき音がして、火球は遠くへ弾かれた。

 これはいい。俺はロングバットを右に左にぶんぶん振り回して火球を弾いた。

 ドラゴンの頭部にいる魔法使いの顔が引きつっているのがわかる。天空要塞の上空を旋回しながらムキになって火球を撃って来た。

 俺はそれをカキーン、カキーンと弾く。あ、カキーンと課金てなんか似てるな。


 ドラゴンの飛行速度が落ちて来た。ドラゴンの息遣いが荒い。明らかに疲労している。


 ドラゴンの両肩にあった魔法大砲そのものが消滅していく。魔法大砲はドラゴンの魔法力を使っていたようだな。ドラゴンも組成魔法できるのか。呪文とかどうしてるんだろ。フレイアなら、わかるかな。聞いてみるか。


 そういえば、フレイア、何しているんだろう。俺はあたりを見回した。


「くかーくかー」

 寝てるやんけ!

「おい、起きろ、フレイア!」

 俺は超ロング金属バットを消去し、フレイアを揺さぶりながら怒鳴った。

「ん? ロファール? ロファールだ! よかった、あのパチモン、どっか消えた?」

「残念ながら、俺はそのパチモンだ。おい、起きろフレイア! ドラゴンが目の前だ!」

 フレイアがよろよろっと立ち上がった。

「おい、しっかりしろ、ドラゴンが魔法障壁に取り付いた!」

 魔法大砲を失ったドラゴンは、天空要塞の魔法障壁にしがみつき、鋭い爪と牙で、魔法障壁を突き破ろうとしている。

「あ、ほんとにドラゴンだー。やばいよねー。あれ? ボタンが外れてるよ。なんでかな……」

 それは、あんたがさっき風呂と勘違いして自分ではずしたんだよ! あと、やばいよねー、じゃない!

「フレイア、戦うんだ!」

「うーん、大声出さないで……頭痛い」


 だめだ、フレイアはあてにできない。俺がやるしかない。

「ゴスロリ様専用バズーカ!」

 ハイパーガトリング砲よりかなり破壊力に劣るが、一発一発の威力はこっちの方が上だ。

 構造が簡単なので、魔法力的に問題ないだろう。


 俺はバズーカを肩に乗せ、トリガーを引いた。

 バシュ! という音とともにロケット弾が発射される。

「よし、いけ!」

 しかし、ロケット弾はドラゴンの直前で、透明なゴムのようなもので、もわん、と弾かれ、空の彼方へ消えて行った。

 天空要塞の魔法障壁は、内側からの攻撃は通すはず。だから、天空要塞の魔法障壁のせいではない。


「だから、ドラゴンの遮蔽装置を破壊しないと。さっき言ったでしょ? 角に全魔法力をぶつけるの。そうすれば、遮蔽装置はオーバヒート、破壊されるわ」

「全魔法力をぶつけるって……どうやって?」

 フレイアが「はーっ」とため息をついた。


「本当に、何も知らないのね。魔法弾よ。魔法弾に全魔法力を込めるの。魔法弾の呪文は簡単よ」


 フレイアが呪文を教えてくれた。古代語だったが、すぐに理解できた。

 現代語に訳すと「魔法弾発射」だ。本当にすげー簡単だった。


「魔法弾の撃ち方はわかった。で、角はどこだ?」

「頭に決まっているじゃない!」


 俺はドラゴンを見上げた。長い首の先っちょにこじんまりとした頭部がある。角は見えない。


「なあ、フレイア、下から角を狙うのは無理っぽいぞ?」

「空から狙えば簡単よ」

 フレイアは杖で空中に呪文を描いた。すると、フレイアの背中に天使のような翼が生えた。


「す、すごい、フレイア、翼が生えているよ!」

「私は飛翔魔法が使えるのよ」

 自慢げにフレイアが笑った。

「あなたにも、翼が生えているわよ」


 え? マジ? 俺は背中を触ってみる。

 本当だ。翼が生えている。


「私の飛翔魔法のすごいところはね、自分だけでなく他人にも翼を生やすことができるってことなの」

 フレイアは空を飛んだ。


「あなたも飛びなさい。翼を動かすイメージを思い受かべるの」

 フレイアの言う通り、イメージした。

 すると、背中の翼がバサバサと音を立て、足がふわりと浮いた。


 こうして、ドラゴンとの戦いが始まった。

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