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異世界大使館の楽しみ方  作者: 久条 巧
5/9

5th 現代人はキカイが好き

久し振りの更新です。

異世界ライフの楽しみ方と同じ内容でありますが、こちらは赤城湊視点です。

 この間に様々な出来事があった。


 カナン魔導連邦からは一週間に一度、語学研修として異世界の魔術師がやって来るようになった。

 これは異世界政策局は全員参加で、それ以外にも時間のある議員は積極的に参加している。

 ひと月ほどてカタコトの挨拶ができるようにはなったものの、まだまだ複雑な部分で頭を悩ませている。


 それ以外にも、カナン魔導連邦の使節団が各県を訪れて、例の魔力感知球を県知事に貸与している。

 どの県でも、自分の県に転移門ゲートを設置したいと申請しているらしいが、今の所は北海道以外に開く予定はないと断られている模様。

 日本国でも早急に異世界に対しての窓口を開いているのだが、先手を切った北海道知事の受けが良かったのか、転移門ゲートを通って異世界の人々が来た場合は先に異世界政策局に連絡が来るようになった。

 そして、ミナセ女王と土方知事との話し合いの結果、赤レンガ庁舎敷地内に、『赤煉瓦ゲート』という小さな建物が建築された。

 その入り口に転移門ゲートが移設されたのである。


 魔力がなければ何もできないので、現在は連絡用の警備員が付いているものの、観光客などは誰でも触れるようになってしまった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 そしてとある月曜日。

 翌日の火曜日朝10時に、赤城は異世界に向かう事になった。

 その打ち合わせも全て終えると、局内で三笠部長が赤城と話しをしていた。

「赤城君。明日の準備は大丈夫かな?」

「はい。期間は5日間、録音機材などの持ち込みは不可なので大量のメモも持っています。検疫はカナンの検疫所で魔法処理を受ける事。まあなんとかなるのでは?」

「そうだねぇ。また持ち込み可能なものと不可能なものの区分が決まっていないので、今回はそれらの調査と打ち合わせを異世界ギルドで行う事。仕事という事はお忘れなく」

「しっかりと朝9時から夕方5時までは仕事します。そのあとは観光です」

「勤務時間以外の行動には制限はないけど、あまり無茶しないようにね」

「はぁ。無茶と言いますと?」

「事故と怪我。あちこち問い合わせてみたけど、異世界での事故や病気は保険の適応外という話らしいから」

「成る程。まあ、怪我しても魔法で治るのではないでしょうか?」

「それもいいねぇ。赤城君魔法覚えて来てよ」

 突然凄いことをいう三笠部長。

 しかし、いずれは何処かで冒険者保険みたいのが作られそうな気もする。

 どの保険会社が一番乗りするか楽しみである。


「確か3日目のスケジュールが冒険者ギルドの視察と体験会ですね。その時に話をしてみますよ」

 机の上のタイムスケジュール表を眺めて、そう話している赤城。

「あ、赤城さん。そのスケジュール表、多分無駄になるから。その時の行動は午前と午後で何するか現地で考えてね」

「はぁ、でもしっかりとしたスケジュールを組んでおかないと駄目ですよね?」

「日本ならね。異世界では、向こうの常識に従って行動してくださいね」

 笑顔で説明する三笠部長。

 なにか腑に落ちないのだが、まあ、何かあるのだろうと心構えだけはしておく。


「今回の視察団も、随分と偏ってますねぇ」

 赤城は、同行メンバー表を見ながらしみじみと呟いている。

 今回は与党議員から二人、野党議員から一人。

 それ以外にも報道枠には新聞社一人と放送局から二人。

 そして民間から一人という合計八名の視察である。

「報道関係者と国会議員は分かります。この民間からの方は誰ですか?」

「筑摩大学の教授だよ。学術調査らしいよ」

「へぇ。まあ、私はこのスケジュール通りに動きますから良いですけれど。あんまり頭の固い方とはご一緒したくないですね」

 きっぱりと思ったことを口にする赤城。

 これには三笠部長も苦笑するしかない。

「まあまあ。頭が固いのが議員。真実を隠すのが報道。学術のためなら無茶をするのが学者だ。怪我しても保険効かないから、無茶はしないだろうさ」

「なら良いですけれど‥‥」

 そんな話をしていると、入り口の机に大量の箱が置かれた。

「赤城君、これ、明日持って行って」

「あの〜、どうやって持って行くのですか?」

「台車があるでしょ?お菓子ばかりだから重くないよ」

 箱の中には、局内の女性職員が厳選したさまざまな菓子が詰められている。

「ああ、そういう事ですか。私が選んだお土産も入れて良いですか?」

「構わないよ。他にも色々と入れてあるから、検疫通ったか報告してね」

「はい。では明日はそれ持って出勤しますので」

 そう話すと、丁度定時となったので赤城は退社した。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 翌日。

 朝一で買い物を終えた赤城は買い物袋を抱えて出社した。

 そして購入した荷物を纏めて箱に詰めると、それを台車に乗せて準備する。

「チェックリストオッケー。着替え荷物オッケー。私物オッケー。スマホと時計はデスクの中と‥‥」

 持ち込み禁止リストのトップにある記録媒体。

 スマホなどもカメラ機能があるので禁止である。

「おや、まだ居たのか」

 奥のデスクから三笠部長が声を掛ける。

「まだ30分ありますので」

「でも、転移門ゲート前にはみんな集まっているぞ?」


──ガバッ

 机から飛びずさると、赤城は窓から外を見る。

 すると、赤煉瓦ゲートの前には、すでに使節団が集まっていた。

「い、行ってきます‼︎」

「お気をつけてね〜」

 荷物の載っている台車をガラガラと押しながら、赤城はすぐに小屋へと走った。


「お、お待たせしました。遅れて申し訳ありません」

 集まっている人々に頭を下げる赤城。

 だが、予定以上も早くやって来たのはここにいる面々なので、特にお咎めなどない。

 寧ろどこで話をききつけたのか、あちこちにテレビ局や新聞社がやって来ている。

「胸から取材許可証を下げていない方はカメラを下げてください。無許可での報道撮影は後ほど社の方に抗議文を送らせていただきますので」

 周囲の報道陣にそう説明すると、近くの観光客が赤城に話しかける。


「あ、あの、スマホの撮影は‥‥」

「個人で楽しむ程度なら構いませんけれど。出来れば綺麗に撮ってくださいね」

 笑いながらそう話すと、観光客もホッとしたらしくスマホやカメラを用意した。

「さて、そろそろ時間なのに誰も来ないではないか。私たちを待たせるとはいい身分ですね」

 どこかの議員が笑いながら話しているが、こちらは連れて行ってもらう立場。

 どの口が言うのかと突っ込みたくなる。


──キィィィィィィン

 突然、転移門ゲートが銀色に輝く。

 すると中からは金髪の女性騎士が姿を現した。

「初めまして。カナン魔導連邦より皆様をお迎えに参りましたジョセフィーヌと申します。本日は宜しくお願いします」

 丁寧に頭を下げるジョセフィーヌに、周囲の男性は思わず顔を赤らめる。

「ご丁寧にありがとうございます。異世界政策局の赤城です。どうぞ宜しくお願いします」

 丁寧に挨拶を返すと、ジョセフィーヌは手の中に8枚の赤いカードを取り出した。

「これが転移門ゲートを通るための許可証です。一人一枚お持ちください。帰りには回収しますのでご協力お願いします」

 そう説明してから全員に許可証を配布する。

 それを配り終わると、ジョセフィーヌは転移門ゲートに手を触れた。

「それでは、私のやる通りにしてください」

 スッと転移門ゲートに手をかざすジョセフィーヌ。

 すると、全身が光り輝いて消えた。


──ザワザワッ

 その場がざわつくのも無理はない。

 だが、赤城はぐっと拳を握って前に出る。

「では行きます」

 おおおおおお

 周囲から歓声が上がる。

 そして赤城も台車を引きずりながら手をかざすと、そのまま光になって扉に吸い込まれた。


 意識が飛んだらしい。

 ほんの僅か、時間にして3秒ほど。

 そして気がつくと、赤城は白亜の空間に立っていた。

 目の前には押していた台車もしっかりとある。

「これが異世界。何もないのですね」

 ボソッと呟くと、前に立っているジョセフィーヌがクスクスと笑っている。

「カリス・マレスはこの先の扉。ここは世界の狭間の空間です」

 すると。


「ちょっと質問をいいかな?この空間はどうやって維持しているのだ?我々の世界以外にも繋がるのかな?」

 大学教授がジョセフィーヌに問いかけている。

 だが、ジョセフィーヌは頭を捻って一言。

「さあ?私にはわかりませんね。魔法としか説明できませんので」

「その魔法の原理について教えて欲しいのだ。それが解明できれば、私たちの世界でも魔法が使えるかもしれないのだからな」

「成る程。それでしたら、カナンにいる魔術師にでも弟子入りするといいでしょう‥‥」

 必死に教えを乞う大学教授を軽くあしらうと、ジョセフィーヌはもう一つの扉に近づく。


「この先がカナン魔導連邦の異世界ギルドです。では先程と同じ方法で‥‥」

 再び手をかざすと、ジョセフィーヌがまた消えた。

「それにしても‥‥弟子入りなどする時間が勿体無い。何故、文章で説明してくれないのか理解できない」

「教授は焦りすぎなのですよ。こういうのはじっくりと学ばなくてはなりませんよ」

「他の誰かに先に研究されて、それが学会で発表されたらどうするのだ?」

 やれやれ。

 この教授はどこまでも自分本位の考え方しか持っていないようである。

「そんなくだらない事、私には理解できませんね」

「何っ、くだらないだと?」

 声を荒げる教授など放置して、赤城は転移門ゲートに手をかざす。


──スッ

 そのまま光になり、赤城は扉の向こうにやってきた。

「こ、ここが異世界?」

 足元には巨大な魔法陣。

 右側に扉があり、上には『税関・検疫』という漢字で書かれたプレートが貼り付けてある。

 その手前にいる背の低い騎士が、赤城に向かって一言。

「ようこそカナン魔導連邦へ。地球から来た者よ、この先で検疫を受けて欲しい」

「は。はい。これはほんの手土産です。どうかお納めください」

 慌てて台車から荷物を降ろそうとするが。

「先に検疫を。その荷物も全て、魔法で浄化しなくてはならない」

 淡々と説明する騎士。

「ありがとう御座います。そうですよね、では失礼します」


──ガチャッ

 扉を開けて室内に入ると、またしても魔法陣が床に記されている。

 そして部屋には、猫族のミヌエットが待機していた。

「ではこれから検疫しますねー。荷物も全てそこにおいてくださいね」

「はい。先日はありがとう御座います、赤城です」

「ありゃ。この前はごちそうさまでした。また美味しい料理を食べさせてくださいね」

 そうミヌエットが話しかけると、魔法陣がゆっくりと輝く。

 そして光が収まると、ミヌエットはニコニコと笑ってる。

「検疫終わりです。こちらの扉から次の部屋へどうぞ。手荷物検査です」

「そんなものまであるのですか。まあ、危険薬物や武器などを持ち込まれても困りますからね」

「そうそう。ではどうぞ。次の方、魔法陣に乗ってくださいね〜」

 赤城は次の部屋に入る。


 今度はカウンターといくつかの仕切りのある巨大なテーブルが置いてある部屋。

 女性職員が赤城を手招きすると、早速説明を始める。

「ここでは手荷物の検査を行います。機械類は一切持ち込めませんので、ここで預かることになります。預けなくて壊れても、私たちは一切責任は負えませんので」

 説明書をガン見しながらそう説明すると、簡単に手荷物を確認する。

「あまりマジマジと見られると恥ずかしいですね」

「ですから仕切りで男性と女性に分けられてます。まあ、女性の場合は‥‥ね。はい問題ありません。こちらの荷車?」

「台車ですね」

「へぇ。台車と言うのですね。こらはどうするのですか?」

「女王様に贈り物です。あと、この世界にはない珍しいものもご用意しましたので、我が日本国との国交が正式に結ばれた際には輸出することができます。それらの打ち合わせに使う見本品と思ってください」

「‥‥はい、分かりました。では台車の荷物はここでお預かりしますね。そちらの部屋からお通りください」

 最後の出口は扉が解放されている。

 台車ごと荷物を預けてから建物の外に出ると、目の前には小説や漫画で見た中世ファンタジーの風景が広がっていた。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 異世界ギルドの検疫を終えて建物の外に出た赤城。

「うわぁ。空気が美味しいっていうのはこういう事かぁ」

 思いっきり深呼吸をする。

 新鮮な空気が肺の中を駆け巡る。

 身体中が浄化されるようないい気持ちであるが。


──パンパンパパパパンッ

 ギルドの入り口で小さい爆発音が響き渡る。

「うわ、なんだこれ」

「俺もだ。一体どういう事だ?」

 ギルドから外に出るとき、報道で参加していた新聞記者とカメラマンが騒いでいる。

「どうなさいましたか?」

 ギルド職員が二人にそう問いかけたが。

「いや、服のボタンが爆発して」

「俺もだよ。ボールペンや手帳が爆発したんだ。どういう事だよ」

 そう叫んでいるが、職員はにこやかに一言。

「先程説明しましたが、機械的なものの持ち込みはご遠慮願っています。先日も査察団の方が羽ペンや本に何かを隠して持ち込もうとしましたが、残念ですがそれらは全て壊れてしまったそうですよ」

「そ、そうか。わかった気をつける‥‥」

 がっくりと肩を落とす二人。

 その姿を見て、残った記者や議員達も隠していたカメラや録音機材を次々と提出していた。

 そして30分後には、全員が全てのチェックを終えて二階にある異世界ギルドの事務室に向かうことができた。


「ようこそカナン魔導連邦へ。私はマチュアと申します。この異世界ギルドのギルドマスターを務めていますので、どうかよろしくお願いします」

 丁寧に挨拶をするミナセ女王そっくりの女性。

 慌てて赤城は、カナンにやって来た時の注意事項の書かれている書類を取り出す。

 そこには、この国には二人のマチュアがいるという説明が書き記されている。外見も女王とそっくりなので注意するようにと書き記されていた。


「済まないが、私は地球では学者をやっていてね。この世界のことを色々と研究報告する義務がある。記録媒体の使用許可を求めたい」

「な、なら我々もだ。この世界の者達には分からないかもしれないが、我々には報道する自由がある。その権限を使わせてもらいたい」

 大学教授に続いて報道記者達も主張するが。

「成る程。ですが、あなた達の頭はなんのためにあるのですか?文字は書けますよね?それで間に合わないのですか?」

 ニコニコと笑顔で告げるマチュア。

「それだと映像に残さないではないか」

「えーっと‥‥あなたは大学教授の‥‥で、そちらの報道の方々は‥‥と‥‥、‥‥さんですね。こちらに来るときに説明はしてありましたが、それを納得していらしたのではないのですか?」

「ふん。我々には権利があるのだよ」

「では、その権利とやらはあなた達の世界の他国でも通用するのでしょうか。もう一度よく考えてくださいね。それでも主張するというのでしたらどうぞ勝手に使いなさい。その時点で私たちは日本国から転移門ゲートを撤退しましょう」

 その言葉で、議員達が慌てて教授や報道記者を止めに入る。

「では、改めてご案内します」


──ガラガラガラガラ

 ゆっくりと馬車がやってくると、赤城達はそれでまずは王城へと案内された。


‥‥‥

‥‥


 綺麗な町並みを眺めながら、馬車は都市を縦横無尽に走る街道を進む。

 途中で子供達が手を振っているのに気がつくと、赤城もすぐに手を振り返して‥‥。

「箒に乗って空飛んでますよ?流石はファンタジーの世界ですね」

 すぐさま手帳にメモを取る赤城。

 これには報道関係者もメモを取っていた。

 やがて王城前にやってくると、一行は馬車から降りる。


「それでは、まずは皆さんが宿泊する部屋にご案内しますね。まだ外の宿は危険ですので、この地にいる間は王城に宿泊して頂きます」

 イングランドクラッシックに似たメイド服を身につけている女性が赤城達を案内する。

 一人一部屋与えられると、全員が荷物を置いて少しだけくつろぐ。

 広さは20畳はあるであろう。

 さまざまな調度品に囲まれた部屋に荷物を置くと、赤城は窓辺に向かうと勢いよく扉を開く。


──ガチャッ

 ベランダに出て外を眺めると、眼下には綺麗な町並みが広がっていた。

「本当に異世界なんだ。これは感動ですよ‥‥と、この後の日程はなんだったかしら?」

 バックから日程表を取り出して確認する。

 日本人らしく分刻みのスケジュールを組んでいたはずだが、ここに来て全てが無駄になる。

「そっか、時計ないんだ。どうりで部長が楽しそうだった訳か」

 備え付けの机に向かうと、バックから便箋を取り出してスケジュールを書き直す。

 時間指定だったものは全て排除し、午前と午後の二つの時間区分に書き直した。

「こんな適当なスケジュールでいいのかな?まあ時計がないからどれだけ細いスケジュール組んでも全く無意味なんだよね」

 部屋の中をグルリと見渡しても、何処にも時計らしいものはない。


──コンコン

 誰かがドアをノックしている。

「はいはい。今行きますよ」

 扉に手をかけて開くと、議員達と大学教授がそこには立っていた。

「明日からのスケジュールなんだが、時間が全くわからない。一体どうすればいいんだ?」

「せめて時計ぐらいはないと困るだろう」

「このあとはどうすればいいんだ?予定では女王と謁見のはずだが時間がわからない」

 口々にそう攻め立てるのだが。


「まあ、そうですねぇ。明日からのスケジュールはこれでお願いします。あとで食事の時にでも説明しますから」

 先程仕上げた手書きのスケジュール。

 それを回し読みしてもらったが、その場の全員が顔を真っ赤にする。

「なんだこの適当なスケジュールは。こんなのが許されると思うのか?」

「時計ぐらい使えるように交渉したまえ。異世界政策局の怠慢ではないのかね?」

「全くだ。こんな事で先が思いやられるではないか」

 口々に文句を言うが、そんなこと知らない。

「無礼を承知で。大の大人が時間時間と‥‥郷にいれば郷に従え、臨機応変という言葉を何処に置いて来たのですか?」

「時間を守る事こそ美徳ではないか。君はそれでも社会人か?」

「ですから。この世界のやり方を学びましょう。考えても見てください。この世界に来る時に機械関係の持ち込みは禁止されていました。それを今更ぐちぐちと。そんな無茶なこと言うのでしたら、ご自分で交渉して見ては?」

 そう議員に話を振ってみるが、いざそう言われると尻込みする。


「それは私の仕事ではない。いいかね?この件が国に報告されると、不利になるのは君達異世界政策局では?」

 とうとう脅しに入る。

 自分達は手を汚したくない。

 万が一交渉に失敗したら誰が責任を取るのかと、保守的なことを考えているのだろう。

「何故ですか?私は元の調理師に戻るだけですし。そうなったらなったで、私、ここの王城勤務してもいいと思っていますから」

「ほ。ほう。君がここで働くと?」

「私は直接ミナセ女王にスカウトされていますからね。年収六千万で。とりあえず明日からのスケジュールはこれで行きますので、以外論がありましたら、それこそみなさんお得意の書面で提示してください」


──コンコン

 すると、部屋の外から誰ががノックしている。

「あれ?皆さんいますよね?」

 すると、侍女の一人が扉を開いて室内に入ってくる。

「そろそろ謁見の時間ですので、こちらへどうぞ」

 丁寧に頭を下げる侍女。

 すると議員の一人が、侍女に詰め寄る。

「それだよ。時間。君、私たちは時間を大切に使いたい。時計がこの世界にもあるのかね?」

「はぁ。時を告げる魔道具ならありますけど。教会や王城、各種ギルドでは使っていますけれど、一般の人は持っていませんね?」

「なら、それを貸して欲しい」

「無理ですよぉ〜。あれ高いんですよ?壊したり無くされたら弁償ものですからぁ」

 にこやかに笑う侍女。

「金で済むのなら構わない。もう沢山だ」

「では、後ほど女王陛下とご相談ください。時を告げる制御球オーブは、女王しか作れませんから」

 そう説明されて、一行はそのまま謁見の間へと案内された。

「全く。時間時間記録記録。なんでのんびりとできないのでしょうかねぇ」

 もう面倒になったので、赤城は査察団の一番後ろを歩いてついていった。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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