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異世界大使館の楽しみ方  作者: 久条 巧
4/9

4th 冒険者になってみた

暫くは不定期掲載になりますので、ご了承下さい。

 それは巨大な建物であった。

 高さにして4階建て、木造と石造りによって補強された頑丈な作り。

 そしていかにもといった感じの無骨な外観。

 まさに冒険者ギルドとしての威厳を保っているといっても過言ではない建物である。

 その一階の受付に、ゼクスたちはまっすぐに歩いて行く。


「ここが冒険者ギルドですか」

「アニメで見ましたけれど、あまり変わらないのですねぇ」

 高畑と赤城がウンウンと頷きながら呟いている。

 吉成はというと、壁に貼ってある依頼書を眺めている冒険者の方に興味があったのだろう。

 じっとそっちだけを見ていた。

「はっはっ。それはイメージが一致して良かった。ではこちらに」

 そう告げてから初期登録カウンターに向う。

 いつにもまして元気そうな受付のサーリァが、ゼクスたちがくるのに合わせてカウンターに近づく。

「ようこそ、そして初めまして。この冒険者ギルドの総合受付を管理していますサーリァと申します。ゼクス様、それではさっそく魂の資質の鑑定、そして冒険者ギルドの登録を行いますか?」

 丁寧にそう告げる巨乳のお姉さんサーリァ。

「ええ。本日登録するのはこちらの三名です。地球という異世界の方ですので‥‥」

 そう告げた刹那、ゼクスは併設している酒場から走ってくる冒険者に対して牽制した。


「さて、こちらの方は異世界からの来訪者。異世界ギルドでも働いて貰う方です。まさかチームにスカウトしようとか考えていませんよね?」

「い、いや、そんなことなぁ」

「そうよ。異世界から来たって言うから、てっきり伝説の勇者かと思っただけよ」

「そうだぜ。おいらたちはどんな可愛い子が来たのか興味があっただけだ」

 口々に弁明する冒険者だが。

 全員、目が泳いでいる。 

「全く。せめて冒険者訓練施設(カレッジ)を卒業してからにして下さい。では、ここからはサーリァさんの指示になりますので、横で通訳しますね」

 そう話してから、ゼクスは一人ひとりにサーリァの言葉を伝える。

 そして指示通りに冒険者ギルドに登録したのだが‥‥。


 高畑みのり‥‥クラス『幽体騎士(アストラルナイト)』ランクD

 吉成翔子‥‥‥クラス『聖戦士(ホーリィウォリアー)』ランクD

 赤城湊‥‥‥‥クラス『高位魔導師(ハイキャスター)』ランクD


 という結果が出た。

「ふぁ」

 ゼクスが声にもならない声で驚いている。

 それどころか、受付のサーリァですら絶句している。

「ゼクス様、これはどういうことでしょうか?」

「う――ん。つまりです、三人共聞いて下さい。高畑さんのクラスは幽体騎士(アストラルナイト)』と言いまして、自分の心力と魔力でもう一つの自分の分身である騎士を作り出し、それを使役して戦う召喚しのようなものです」

「つまりは‥‥スタンド使い?」

 ギリギリかな?

 その問いかけは多分大丈夫だな?

「まあ、私にはわかりませんが、なんとなく理解しましたか?」

「はい」

 まずは一人。


「次の吉成さんは『聖戦士(ホーリィウォリアー)』。聖なる武具を身に纏うことの出来る数少ないクラスです。対となるのは防御特化の聖騎士、聖戦士は攻撃型の騎士ですね」

「あ、あらら。私は魔法使いが良かったのですが」

 そう呟く吉成。

「いえいえ、いまの適性がという事で、このあとの修業や訓練などで何にでもなれますよ」

 その説明でほっとする。

 そして最後が赤城。


「赤城さんのクラスである高位魔導師(ハイキャスター)ですが、簡単に説明すると『賢者の卵』です。如何なる魔術の才覚も持ち合わせている、この世界でもほんの一握りのクラスです」

「へぇ。そんなすごい力があったのですか」

「まあ、数少ないクラスゆえ、そこから賢者の道を進むのはかなり険しいですよ。みなさんはこんな感じのクラスになりました。もし冒険者として生計を立てられるようになりたいとお考えでしたら、その時は訓練施設も紹介しますよ」

 にこやかに説明したものの。

 どうも三人共もじもじとしている。

「あ、あの‥‥」

「装備って、どんなものがよいのですか?」

「武具屋に行きたいのですけれど」

 ははぁ。

 ここまで来ると、外見からだけでも冒険者になってみたいらしい。

「ま、いいでしょう。初級冒険者装備程度でしたら、私が皆さんにプレゼントしますよ」

――キャァァァァァァァァァァァ

 冒険者ギルドに響く黄色い声。

 隠してゼクス一行は、武具と言えばのアルバート商会・カナン支店に向うことにした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 一方、ツヴァイの班はというと。

「これが全て本物‥‥」

 ゴクリと生唾を飲んでいるのは、ツヴァイと共に観光している十六夜要(いざよい・かなめ)と高島隆、古屋龍一の三名。

 十六夜は同性である赤城達とはあえて別のチームに入り、観光を楽しんでいる。

 まず最初にやってきたのは、アルバート商会の武具店。

 大量に並んでいる本物の武具を目の前に、一行は感動に震えている。

「ツヴァイさん、これって買ったらどれぐらいでしょうか?」

「もし買えるのでしたら、買って帰りたいですよ」

 高島と古屋がチェインメイルやプレートアーマーを手に取りながら問いかけているが。

「はて?ちょっと待ってくださいね。『カレン、これ買ったらいくらになる?』」

 最初は日本語、後半は大陸語で話しているツヴァイ。

 ちょうどカレンも観光客相手に色々と聞きたかったらしく、店内で待機していた。

 傍らには、マチュアに教えて貰った異世界の言葉、特に商売に使う部分を重点的にまとめた本が置いてある。

「そうですねぇ。それはサムソンの鍛冶ギルド製量産品なので金貨15枚かな?プレートは金貨35枚で大丈夫ですよ」


 まだ金額の感覚がつかめないらしく、ふぅんと話しながら武器を見る一同。

 十六夜はというと、カウンターの奥に掲げられている一振りのロングソードをじっと眺めていた。

「あら、お目が高いですね。こちらはサムソンの刀匠ストームの鍛えたダマスカスソードです。ミスリルとアイアン、メテオライトなど様々な金属で打ち出した逸品ですよ」

 手元の日本語マニュアルを眺めつつ、片言ではあるがしっかりと説明している。

「魔法の武器ですか?」

「ええ。理論上はドラゴンの丈夫な鱗と分厚い皮膚でさえ紙のように切断しますわ」

「お、おいくらですか?」

「こちらは非売品ですが、どうしてもとおっしゃるのでしたら白金貨で200枚でお譲りします」

 その金額は、知る人が聞いたら破格な値段である。

「うーん。浪漫ですわねぇ」

「ロマニですか? どちら様ですか?」

「いえ、カルディアの‥‥ではなくて、浪漫溢れる武器ですわ」

 十六夜が言い直したのでやっと理解したカレン。

「これって、私たちが買っても使えるものですか?」

「まず冒険者登録をしてからの方が宜しいですよ。適性が魔法使いなのに剣を持って戦うのは得策ではありませんわ」

 その説明にはごもっともである。

 そのまま暫くは武器屋で見学をしていたのだが、ふと気がつくと武器屋に赤城達もやってきた。


「おや、赤城さん達も見学ですか?」

 十六夜が楽しそうな赤城に話しかけると、吉成と赤城、高畑の三人が手の中から冒険者ギルドカードを取り出した。

――ヒュンッ

「な、なんだそれは?」

「汚い、君たち汚すぎるよ」

「あー、わ、私も登録したいですわ」

 高島達三人が悔しそうにそう話している横で、ゼクスがカレンに一言。

「一人金貨50枚で装備を見てあげてください」

――ジャラッ

 カウンターに金貨袋から金貨150枚を取り出して置くゼクス。

「あらあらあら。では早速。皆さんのギルドカードを拝見しますね」

 商売モードになったカレンが三人のクラスを確認してから、何名かの店員に指示を出し始めた。


――ポカーン

 その光景を見ていた十六夜達も、すぐさまツヴァイの方を振り向くと涙ながらに一言。

「ツヴァイさん、私達も冒険者になりたいですわ」

「ゼクスさんの方で認められたのでしたら」

「おねがぃじまずぅ〜」

 古屋に至っては涙声である。

「ふう。ではまず先に皆さんの魂の護符プレートの登録に向かいましょうか。まずはこの世界の住人になってからですね」

 その説明の直後、十六夜たちは店から飛び出していく。

 それをツヴァイは苦笑しながら眺めていた。



 ○ ○ ○ ○ ○


 宴もたけなわ、異世界政策局一行は無事に魂の護符(プレート)と冒険者ギルドカードをケット、さらに初期装備も一通り揃えることが出来た。

 あとは実践あるのみなのだが。

「このあとは依頼を受けてレベルを上げるのですよね?」

 高嶋がツヴァイの横で拳を鳴らしているのだが、ツヴァイは頭を左右に振る。

「いえ、今日はここまでですね」

「えええええ。せっかく俺の華麗なデビューを見せてやりたかったのに」

「少しぐらい遅れても大丈夫ですよ。依頼、うけませんか?」

 高嶋古屋組はそうツヴァイに提案しているが、女性陣はすでに帰宅する気満々である。

「高嶋くんと古屋くんのランクは?」

 十六夜が問いかけてみると、ふたりとも自信満々に一言。


「「Eランクだ」」


――プッ

 誰と無く吹き出す。

「そのランクですと、受けれる依頼はどんなに難しくても薬草採取や、肉屋からノッキングバードを一頭取ってきてほしいとか、そんな感じですよ。それも二人となると、ほぼ死にます」

「死にますか?」

 高嶋が恐る恐る問い掛けるが。

「死にますね。蘇生は期待しない方がいいですよ? ゲームとは違って現実ですので」

――ゴクッ

 息を飲む高嶋と古屋。

「ということで、私たちは日本に帰りたいのですが、この装備はどうしたらいいですか?」

 赤城の問いかけには女性陣一同が頷いている。

「持って帰ると‥‥武器は駄目ですから‥‥では、預かりますか。ギルドの更衣室で着替えることにしましょう。そこで預り証を発行しますので、あとは次に来たときにでもお渡ししますよ」

 それがもっともベストな選択。

 ならばと、女性陣は異世界ギルドの更衣室で着替える事にした。


「ううーーーん。やっぱりレベルは上げられないかぁ」

「どうやったら上がるんだろう。ツヴァイさん、経験値の多いモンスターはどれですか?」

 素っ頓狂な質門をする二人。

「無いですよ、経験値なんて」

「え? な、なら、レベル‥‥いや、ランクはどうやって上げるのですか?」

「功績ですね。そもそもランクなんて数値で図れるものではありませんよ。様々な経験をして、どれだけの功績を残すか。それは世界が決めること。ランク上げに効率など存在しませんよ」

「はぐれメタルとか、メタルスライムとかは?」

「そのはぐれなんとかは知りませんがEランクの冒険者がスライムとあったら、捕食されて消化されますから」

 予想外の答え。

 現代ではスライム=雑魚認定だが、現実はそんなにあまくない。


「げ、ゲームではスライムは常に雑魚で」

「毒攻撃、捕食、魔法物品と炎以外の耐性、再生能力。Cランク冒険者が一対一でも、装備が足りないと即死させられますよ」

 ゾクッ

 その説明に寒気を感じる。

「なら、ゴブリンやコボルトは?」

「武器の扱い方を知っている、統率の取れた小さい軍隊みたいなものですよ。シャーマン系なら魔法を飛ばしてきますからやっかいですね。まあ、これもCランクならなんとでもなりますが、Dなら一対一、Eランクならパーティー戦になると思いますが。ちなみに二人のクラスはなんでしたか?」


そう問い掛けると、高嶋と古屋はギルドカードを取り出して見せる。


十六夜要‥‥クラス『暗殺者(アサシン)』ランクD

高島隆‥‥‥クラス『盗賊(シーフ)』ランクE

古屋龍一‥‥クラス『戦士(フェイター)』ランクD


 十六夜は先程ツヴァイが装備を買うときに教えて貰ったクラスとランク。

 こう見てみると、こっちの三人はスタンダードなクラス。

 高嶋が低いのはわからないが、まだまだ実践に出すには早すぎる。


「うん、無理ですね。治療師が足りませんし、まずは冒険者関連施設で世界を学ぶことから始めましょう」

そのように説明すると、ツヴァイは赤城たちと合流して日本へと帰るように促す。

ならばと高嶋たちも、こんどは冒険者になってやるぞと誓いを立てて、一度日本へと帰還した。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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