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異世界大使館の楽しみ方  作者: 久条 巧
3/9

3rd 魂の護符を手に入れる

 赤城湊が異世界政策局に勤務して数日後。

 いつものように庁舎に出勤して、電話応対を続けている。

 大体かかってくるのは異世界からくる女王に逢いたいとか、テレビ出演交渉、雑誌や新聞社の取材などの申込みが殺到している。

 いまの地球が嫌になったので異世界に移住したいという人や、自分は実は異世界の人間で、こっちの世界にやってきたのだが買えるすべがなかったので帰らせてほしいという、何処かこじらせてしまった方の対応もしなくてはならない。


 もっとも、一番多いのは。

「はい、誠に申し訳ありません。ミナセ女王がいつくるのかなどまったくわかりません。ですので取材については全てお断りしているのです」

 丁寧に説明するが、それをなんとかするのが仕事だろうとどなってくる新聞社。

 そんな時は、静かに頭を下げてこっちから電話を切る。

 取材にしろ何にしろ、イニシアティブはこっちが持っている。

 それゆえ、高圧的な態度の報道は全て取材お断りを入れるようにとの指示が出ている。


――カツカツ

「あ、いいところに皆揃っているかな?」

 知事室に呼び出されていた三笠部長が、にこやかに戻ってくる。

 このような機嫌の時は、必ず裏がある。

 悪い意味での裏ではなく、こっちにもおすそ分けがくるパターンの裏。

 部長が居ない時は、このような笑顔を『三笠スマイル』と呼んでいる。 

「ええ、全員揃っていますが。何かあったのですか?」

 局員の高畑みのりが丁寧に説明している。

 いま残っているのは赤城湊、高畑みのり、吉成翔子、十六夜要(いざよい・かなめ)、高島隆、古屋龍一の六名。

 池田章とベネット・桜木の二人は、今日は午前中で仕事は定時である。

「なら全員で知事室に。電話は観光課に受け取ってもらうように話をしてあるので」

 それだけを説明すると、全員が三笠に着いて本庁舎のち自室へと向かった。


――ガチャッ 

 軽くノックをしてから知事室に入る一行。

 部屋に入った瞬間、まず目についたのが金髪の双子のようなエルフ。

 その二人が土方知事と話をしている所であった。

「紹介しましょう。異世界ギルドの職員のツヴァイさんと、ミナセ女王の騎士の一人、アルフィンさんです」

 土方が立ち上がってツヴァイ達を紹介したので、エルフの二人も慌てて立ち上がると丁寧に頭を下げた。

「異世界ギルドのツヴァイです。本日は宜しくお願いします」

「カナン魔導騎士団所属、アルフィンです。よろしくおねがいしますね」

 その挨拶に丁寧に頭を下げると、職員達も一人ずつ自己紹介した。

 そして全員が席に着くと、早速土方知事が全員に一言。

「異世界に行きたい人」

 咄嗟に全員が手を挙げると、お互いを見て苦笑している。

「では、行き方について説明をお願いします」

 そう話を振られたので、ツヴァイが先程までの土方知事と三笠部長に説明したことをもう一度告げる。

 そして人数分のカードを取り出すと、今度はナイフをテーブルに置いた。

「チクッと刺すだけですよ」

 そうアルフィンが説明するが、みんな信用していないようでお互いに譲り合っている。


――ヒュンッ

 すると、土方知事が手の中にパスポートを作り出す。

 続いて三笠部長、アルフィンも。

「土方知事も、三笠部長も、登録したのですか?」

「ええ。私達も登録は終わらせてある。これで帰りに飲みに行く場所が増えたからなあ」

「家族サービスにも使いたい所ですが、登録したものしか行けませんし、偽造もできません。その代わり、本人の魂を登録するので最高の身分証明になりますよ」

 土方知事と三笠部長の言葉で、一人がナイフではなくヘアピンを抜いてチクッと親指を指す。


――ポタッ

 そして言われた通りに血を垂らして登録する。

 フウゥッと自分の名前が浮かび上がると、同僚達に見せびらかし始めた。

 そこからは早い。

 次々と登録しては、友達同士で交換して見せあう。

「さて。これで早番の二人以外は登録完了と。異世界政策局に今度カナンからもギルド職員が出向してくるので、仲良くやってください」

 三笠がそう話すと全員が返事を返す。

 ならばと、三笠は駄目押しの一言。


「それに伴ってうちからも複数人ずつ、交代で出向してもらうことにもなるのでよろしくお願いしますね」

「え、えええええ?」

「私達はまだ異世界語覚えてませんよ?」

「そうです。会話が成立しないと」

 そう不安がる一同。

「それでですね。まず私達ギルド員から日本語が話せるものを送ります。そこで語学研修をして簡単な日常会話をマスターしましょう」

 アルフィンがそう説明すると、取り敢えずは納得したようだ。

「勤務時間に語学研修ですか?」

「ええ。そもそも今現在の仕事といっても、各政党や議員の魔力係数のまとめとかしかやってませんよね?」

「それと異世界に行きたいという方々の電話応対です」

「関係各省と、あと外国からの問い合わせもあります」

 意外と忙しい毎日のようである。

 話によると、近々政府の異世界対策委員会からも数名こちらにやって来るらしい。

 異世界の窓口を、北海道ではなく政府主導にしたいのであろう。

「あと二名分のパスポートについては、後日私たちが直接手渡すとしますね。そののちの追加分なども、出向した職員に管理させますので。取り敢えず本日分の登録者のリストを後日渡してください」

「了解しました。それでですが、本日このあと定刻になりましたら、一時間ほどで構いませんので異世界を案内してほしいのですが」

 三笠がツヴァイにそう話す。

 するとツヴァイとアルフィンはあと互いの顔を見てから、ゆっくりと頷いた。

「では、定刻までは私達もその辺を散歩してきます。定刻あたりに戻ってきますので、それから皆さんで移動しましょう」


――キャァァァァァッ

 室内に黄色い悲鳴が湧き上がる。

 そして職員達が仕事に戻ると、土方知事がある提案をした。

「現在の転移門ゲートですが、場所をずらすことは出来ますか?あのように広場のど真ん中ですと、緊急時の対応が遅れてしまいます」

「ふむふむ。では、敷地の中で問題のないところに小さい建物を設置して下さい。そこに移すことは可能ですので、その手続きはお願いします」

 事務的にツヴァイが話をすると、すぐにでも移動する準備をしてくれる方向で話も進む。

 そこで会談のようなものは終了する。

「では、定刻とやらになったらまた来ますので」

「それは構いませんが、どちらまで? 護衛を付けるには手続きがかかりますので」

 三笠部長がツヴァイたちに問いかける。

 まだあちこちで歩かれても困るらしい。

「この敷地内なら構いませんね?」

「庁舎敷地内でしたら。まあ、何かありましたら警備のものに声をかけてください」

「ありがとうございます。ではまた後ほど」

 ツヴァイとアルフィンは軽く会釈すると、赤レンガ庁舎から出ていった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「さて。異世界ギルドへの出向についてですが、二人一組でシフトを組みましょう」

 三笠部長が政策局員に淡々と説明を始める。

「業務内容は?」

 高畑が手を上げて問いかける。

「そうですねぇ。当面は観光ルートも何もないので、カナンの調査がメインとなります。彼らの視点と私たちの視点では、見えるものが違って来ます。私たちの文化や常識ををまず考えた上で、あちらの世界で足りないものなどを調べてください」

「記録媒体は持ち込みできませんが、どうすれば?」

「メモでも取って、こちらで清書ですね。後日話し合って記録媒体の局員の持ち込みは検討して貰いますが‥‥電源がないのですよ」

 ああ。

 納得する一行。

 すると、階下から報道関係者が何名も駆け上がってくる。

「異世界政策局で取材予約とかはできないのか?」

「こちとら仕事できてまして。手ぶらで帰るわけにはいかないのですよ」

「頼むから取材を受け付けるように説得してくれませんか?」

 あちこちの報道関係者が泣き言を入れてくる。

 赤城や十六夜がそれは無理と説明しても、中々納得してくれない。

「さて。勘違いされても困りますが、私たち異世界政策局は取材申し込み受付ではありません。異世界との繋がりを第一と考え、必要な情報の相互交換や査察団の派遣手続きなどを行う機関です」

「ですから、繋がりをお願いしたいのですよ」

――フゥ

 溜息をつく三笠部長。

「そこの箱に名刺を入れてお帰りください。話はしておきますが、直接連絡が行くかどうかは責任が持てませんので。それ以上しつこく言いますと‥‥カナンに直接取材の申し込みをして見ては?」

 最後の方はどすの利いた声になっている三笠。

「では!今外にいる異世界の人に取材しても良いのか?」

「ここが札幌市の庁舎敷地であるのを理解しているのでしたらお好きにどうぞ。私たちは皆さんが何処の報道関係なのか、全て報告しなくてはなりませんから。さて、おかえりはそちらですが?」

 スーツと階段を指差す三笠。

 すると文句を言いながらも報道関係者は階段を降りていった。


「あの、大丈夫でしょうか?」

 赤城が恐る恐る問いかけるが、三笠はカラッと笑っている。

「まあ大丈夫じゃないですか?そちらの関係者扉の鍵は外してくださいね。多分ここにくると思いますから」

 そう話をすると、三笠は席に戻る。

 そしてまた暫くは電話応対が続いて居たが、階下が少し騒がしくなると、関係者扉の手前に局員が待機した。

 階下からアルフィンが上がって来ると、すぐに階段横にある関係者扉から中に入ってもらう。

 すると取材陣がカウンターにやってきて取材させろと話して来るが。

「本日の窓口受付は終了しめしたので、また後日宜しくお願いします」

 そう説明をして『本日の窓口受付は終了しました』と書かれているプレートをカウンターに置いた。

「そこの影にいるのでしょう?三分でいいのでお願いしますよ」

 しつこくカウンターに詰め寄ってくる報道記者。

 気持ちはわかるが、例外は作れない。

 やがてツバイも戻ってくると、奥にいるアルフィンの元に合流した。


「どうやら戻ってきたようですね」

「さて、それじゃあ、仕事を終わらせますか」

 気合を入れてデスクワークを始める赤城達だが、ふとツヴァイとアルフィンの言葉が耳に届いてしまう。 

『申し訳ありません』

『いや、そうではなくて。指先集中法は魔力感覚を導く初歩なので、それは教えても構わないと思うけれど。それであっさりと魔力が上がるって、潜在魔力はかなり高そうかな?』

 その言葉に、ロビーのほぼ全員が右手人差し指をじっと睨みつけている。

『どうでしょうね。まあ、この世界の人々にも、私たちの世界の訓練方法が‥‥あれ?』

――プッ

 その光景に思わず吹き出すツヴァイとアルフィン。

「あの、今度、語学研修以外に魔法の座学もしましょうか?カナンの異世界ギルドになりますけれど」

「本当ですか‼︎」

「是非お願いします」

「私たちも魔法が使えますか?」

 などなど、次々と質問が飛んでくるが。


――ゴホン

 三笠部長が軽く咳払い。

 すると、すぐさま職員達は仕事に戻った。

 その後は、ツヴァイとアルフィンは大陸語で真剣に打ち合わせを開始。

 やがて5時のアラームが鳴り響くと、職員たちは全員挨拶をして着替えに出ていった。



 ○ ○ ○ ○ ○



 さて。

 着替え終わって全員がロビーに集まったのだが。

「さて、ツヴァイ、外の転移門ゲートまで歩いて行って、全員で転移門ゲートに触れないとならないけれど‥‥」

「取材とかいう人たちが大勢いますねぇ。どうしますか?」

「ここのロビーに開く。中からすぐ閉じるから問題ないでしょう?」

 そんな会話をしながら、階段を降りて一階ロビーの死角に転移門ゲートを作るアルフィン。

――ヒュゥゥゥゥゥツ

 ロビーにいた職員達は突然の事で驚いている。

 これから何が起こるか、アルフィン達をじっと観察していた。

「まずわたしが見本を見せますので。皆さんはその真似をしてください」

 そう説明すると、掌にパスポートを生み出してかざす。

 すると転移門ゲートに波紋が浮かび上がる。

 そこに手を触れると、アルフィンの姿がスッと消えた。


――ザワザワッ

 予め説明を受けていたとは言え、やはり実践は違うらしい。

「次は誰からですか?」

 そうツヴァイに問いかける子もいたので。

「確か、日本は名前の順番がありますね。ではそれで」

 その言葉と同時に、赤城湊が前に出る。

「昔からそうなんですよ。何かあると名前の順番って。一番赤城行きます‼︎」

 堂々と叫ぶと、手の中にパスポートを生み出す。

 その光景にロビー職員達は顎が外れそうになる。


 異世界の人間でない日本人が魔法を使った。

 もしここに記者がいたら間違いなく英雄であろう。


 スッとパスポートをかざすと、赤城は波紋に手を触れ、そして消えて行った。

 そのあとは次々と職員達が消え、最後にツヴァイがロビー職員に挨拶をして転移門ゲートに消えた。

 このあとはいつも通り、ツヴァイが通った後にアルフィンが転移門ゲートを消すと、反対側の転移門ゲートに一行を案内する。

 そして入る時と同じ方法で転移門ゲートをくぐると、いよいよ職員達にとってははじめての異世界である。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「はあ〜此処か異世界てすかぁ」

「思ったよりも普通ですね」

「もっとこう、自然が多い場所かと思っていました」

 驚いた口調の赤城に続いて、女性局員の高畑みのりと十六夜要(いざよい・かなめ)も続いている。

 口々に感想を話しながら、周囲を見渡していたのだが。

 普通に室内にやってきたので、なにか感動が薄いようである。

 気持ちはわかるよ、気持ちは。

「皆さんの思い描いているファンタジーに合わせますと、転移門ゲートの位置が鬱蒼と茂った森林とかになってしまいまして、安全を確保できないのですよ」

 アルフィンが全員に説明すると、どうやら納得してくれたようだ。


「それじゃぁ、まずは検疫を受けてください。こちらの部屋にどうぞ」

 隣の検疫室に通されると、一行はミヌエットの浄化魔法で検疫を受ける。

 全員の全身が輝いた時はかなり驚いていたが、それが魔法による浄化であると説明すると納得したようである。

「では次は手荷物検査です。隣へどうぞ」

 そのまま隣の部屋に移動すると、いくつかに仕切られた部屋に通される。

 そこで個人別に手荷物の検査を受けるのだが、カウンターの上に日本語で大きく


『機械類持ち込み禁止、必ず預けてください』


 と表記されていた。

 第一回の査察団の時の教訓である。

「あの、ケータイも全てですか?」

「ええ。全てですよ。貴重品は自己管理、機械類と一緒に預けてくれても構いません」

「記念撮影とかは?」

「公式に国交が結ばれていないので駄目です。誤魔化したり隠していたら壊れるので、必ず預けてください」

「壊れますか?」

「壊れます。ボンって言います」

「弁償や保険は?」

「先に持ち込み禁止と説明しているのでありません。直せません。今日は軽く散策したりする感じで楽しんでください」


 そう説明すると、職員達は全員が機械類を預ける。

 そして検査が終わると無事に税関区画からギルドの一階ロビーに出ることができた。

 以前は一度外に出て入り直していたのだが、勝手が悪かったので中を改造して一階ロビーと繋げたのである。

 手荷物預かり証は検査室で受け取るようにし、流れを簡略化したようである。


「ようこそ異世界へ」

 ロビーで職員達を出迎えたのは異世界ギルドの面々。

「ギルドマスターが今不在ですので、わたしが代わりに。異世界ギルドのサブマスターを務めていますフィリップ・アルバートです」

 初老の紳士フィリップが頭を下げる。

 親父スキーには強力なインパクトである。

 異世界ギルド職員にはエルフやドワーフ、ロリエッタ、獣人、そして人間の老若男女が揃っている。

 全てマチュアの策略である。

 そして、受付カウンターのあるロビーでは、聖騎士姿のゼクスが待機していた。

「ぜ、ゼクス様だ、本物ですわ」

「一度直接おあいしたかったのですよ」

 フラフラと十六夜要と吉成翔子の二人もゼクスに近づいていく。

 そしてカウンターでは、男性局員の高島隆と古屋龍一の二人がギルド職員を見て感動していた。

「本物の猫耳少女だ‥‥写真取りたいぃぃぃ」

「預けちまっただろうが。それにおれはケモナーではない。女性はおっぱいだ」

 おまえら、少しはわきまえろ。

「此処からは皆さんが興味あるところに行きましょう。二つのグループに分かれて簡単に方向性を話し合ってください。ゼクスとツヴァイを引率につけますのでよろしくお願いします」

 アルフィンがそう話して、ツヴァイ組とゼクス組に分かれるように促すと、赤城と高畑、吉成はゼクスに、男性局員と十六夜はツヴァイのもとに歩み寄った。

 そしてゼクスとツヴァイ、マチュアは何か打ち合わせをしていたが、それが終わるとさっそく異世界の第一波を踏み出した。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 

「‥‥では、貴方が最後ですね。神の加護がありますように」

 目の前に跪いている女性に声を掛けると、彼女の目の前に魂の護符プレートがスッと現れた。

「こんな時間に申し訳ありません、ケビン枢機卿」

 高司祭の礼服に身を包んだケビン枢機卿に、ゼクスは丁寧に頭を下げる。

 それに合わせて、ゼクスとともに来た赤城湊、高畑みのり、吉成翔子の三名も頭を下げていた。

 ゼクス班の一行がまず来たかった場所は、マチュアがテレビで見せていた身分証明書である魂の護符プレートを発行してくれる所。

 そのために、ゼクスはファナ・スタシア神聖教会に来ているのであった。


「司祭様、いくつか教えて欲しいのですが」

 魂の護符プレートを眺めていた吉成が、ずっと手を上げながらケビンの元に歩み寄る。

「どうぞ。私の知ることで宜しければ」

「私たちもこの世界で冒険者になれるのでしょうか?」

 実に率直な質門である。

「なることはできると思います。ですが、冒険者の道を進むと、貴方たちの世界に戻った時の反動があります」

「反動ですか?それはなんでしょうか?」

 高畑も前に出てそう問いかける。

「そうですねぇ‥‥」

 困った顔でゼクスを見るケビン。

 すると、ゼクスも理解したらしく頷く。

「この世界の冒険者にはランクとクラスが存在します。最近の冒険者はまとめて考えているようですがね。クラスはそのものの適正、ランクは強さと理解してください」

「クラスとランク。ゲームの職業とレベンみたいなものですか?」

「貴方たちの世界のゲームというものが私には分かりませんが」

「クラスと職業は多分同じです。戦士だったり魔法使いだったり」

「それで、ランクとレベルは同じです。敵を倒して経験値を得ると、レベルが上がって新しいスキルや身体能力があがりますから」

 吉成と赤城が続いて説明する。

「ならば、皆さんがこの世界で冒険者となった場合。ランクが上がるとどうなるか理解できますね?」

 言葉が詰まる。

 ケビンの話の真意を理解したのであろう。

 この世界で鍛える事で、簡単なドーピングのような効果を得ることができる。

 それは何もスポーツの世界に始まったことでは無い。

 逆に犯罪者が横行しそうな懸念もあるのである。


「皆さんの世界から私たちの世界に来るということは、皆さんの世界では手に入れることができない力が手に入るということです」

 その言葉にコクリと頷く一行。

「つまり、容易に手に入れてはいけないということですね?」

 吉成がそう話すが、ケビンは頭を左右に振る。

「少しだけ違います。手に入れることは誰も咎めません。この世界に生きる者の権利です。その力を使うときは、自分の心に問いかけてください。それは貴方にとって正しいのかと」

 ふむふむ。

 じっと話を聞いている三人を、ゼクスは穏やかな目で眺めていた。


(この三人は、力の使い方を間違えないだろうな)


「こちらの世界の人たちには日常。なのであまり気にすることなく力を行使しています。けれど皆さんの世界では非日常。使うなではなく、使いどころを考えてみてくださいね。では、これで魂の護符プレートの登録は完了しました。皆さんに神の加護がありますように」

 丁寧に会釈するケビン。


「「「ありがとうございました」」」


 三人も頭を下げると、ゼクスとともに教会を後にした。

 次の目的地は冒険者ギルドである。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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