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五つの塔の頂へ  作者: 夜々里 春
【番外編】第三章
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◆第四話『イクスネビュラ戦①』

 ふっと暗転したのも一瞬。

 再び開けた視界は先ほどまでとは打って変わっていた。


 建物は見当たらない。

 広がるのは澄んだ青い空のみ。


 ──いや、5か所だけ縦に貫く異物が混ざっている。

 あれは紛れもなく島の塔だ。


 慌てて下に目を向けた瞬間、目を疑った。

 浮いている、と思わず錯覚してしまったのだ。


 しかし、実際は硝子のような足場に立っているだけだった。うっすらと透けた足場の先には中央広場が見える。距離は人の姿をなんとか捉えられる程度だ。


 アイティエルが舞台について『このすぐ上だ』と言っていたが……まさか本当に言葉どおりだとは思いもしなかった。


「面白い舞台、か。やってくれるじゃねえか」

「この場合は観客にとって面白い、だな」


 長剣の腹を肩に乗せながら、楽し気にそうこぼすディバル。その傍らではベイマンズが「つまり俺らは見世物ってことかよ」と悪態をついている。


「いいじゃないか、ほかの奴らにとっちゃ、〝いま〟もっとも高いところにいる奴らの戦いを見られるまたとない機会だろうしね」

「たしかに。これはほかの挑戦者たちにとっていい刺激になるだろう」


 ヴァネッサとシビラがこちらを見ながら言った。


 彼女たちの言うような思惑はあるのかもしれない。

 だが、この舞台を創りあげたのはアイティエルだ。

 単純に面白そうだからという理由の可能性も大いに考えられた。


「これ、あのときと似てるわ」

「たしかに、このガラスっぽいところとか」

「でも、こんなに近くで見られるとか。っていうかこれ、下着とか見られるんじゃっ」

「それなりに距離はあるし、大丈夫じゃないの」

「ボクは下からでも見えると思うけど」

「うー、なんか落ちつかない~……」


 スカートを両手で押さえてもじもじするクララを仕方ないなといった風に笑うラピスとルナ。そんな彼女たちのやり取りを見ながら、レオが隣までやってきた。


「我らが女性陣は本当にたくましいね。こんなときでもいつも通りなんて」

「レオほどじゃないけどな」

「あいたっ」


 レオの手をいつも通り叩き落した。

 隣に立つやいなや、しれっと伸ばしてくるので本当に油断も隙も無い。


 敵がまだ姿を見せない中、呑気に談笑する挑戦者たち。そんな空気が気に食わなかったのか、アイリスが呆れたように息をついていた。


「……挑戦者というのはこうも呑気なものなのですか」

「いつも張り詰めてたらいざってときに疲れちまうし、こんなもんでいいんだよ」


 そう返した、直後。

 辺りの空気が一変した。


 どうやらほかの参加者たちも感じ取ったようだ。

 先ほどまでの緩い空気はどこへやら、一瞬にして戦闘態勢へと移行している。その姿を見てアイリスも「なるほど」とこぼしていた。


 全員が数えきれないほどの戦闘を塔で経験してきている。この程度の切り替えはいつものことだった。


 全員の視線が少し離れた先へと集中した。

 そこに小さな黒い靄が生まれていたのだ。


 ただ、それはまるで破裂でもするかのように一気に膨張。視界に収まらないほどに巨大化すると、はっきりとした輪郭を持った。


 下半身は大小様々な半球体が幾つも重なったような形状をしている。小さな穴が無数にあいていることもあってまるで蟻塚の集合体にも見える。


 蟻塚の上部には美しい女性体が生えていた。ただし覗くのは腰から上のみ。長い黒髪に赤い瞳。両手からは蟻塚の周囲をすべて薙ぎ払えるほどの巨大な鎌が1本ずつ生えている。


 その女性体が耳をつんざかんばかりの奇声をあげた。

 いつでもかかってこいとばかりに鎌を勢いよく振り回しはじめる。


「またおかしな形をしてるねぇ」

「クモのようにも見えるが……」


 冷静に敵を見定めるヴァネッサとシビラ。

 2人ともさすがといったところだ。


 それに比べてクララときたら「うげぇ、気色悪ぅ~」と顔を歪めている。塔の最高到達者とは思えない反応だ。もっとも、クララらしいと言えばらしいが。


「──イクスネビュラ。それがこの敵の名前です」


 そう言ったのはアイリスだ。

 すでに両手に結晶の剣を持ち、臨戦態勢に入っている。


「特性までは言わなくていいからな」

「そもそも名前しか知らされていません」

「あくまで俺らと一緒ってことか」


 戦闘能力だけでなく知識までも挑戦者と同じ状態にしてくれたらしい。アイリスが自ら願ったことなのか。あるいはアイティエルのはからいか。どちらにせよ、こちらが求めることを理解してくれているようでなによりだ。


 と、敵が咆哮をあげるやいなや、両手の鎌を交差する形で薙いだ。先ほどの威嚇とはまるで別物だった。その証拠に軌跡から衝撃波が生成。暴れ狂う風を纏ってこちらに向かってきている。


 当たれば頭部が吹っ飛ぶ高さだ。

 障壁で防げるかはわからない。


 そう判断して前方へ身を投げ、転がって躱した。すぐさま立ち上がり、周囲を見回す。と、全員が平然と立っていた。レオは盾で受け、クララは《テレポート》で回避。ほかは全員がこちらと同じように転がって回避したようだ。


 ただ、敵の攻撃はその一度で止むことなく以降も続いた。薙ぐだけでなく、振り下ろしから縦の衝撃波を混ぜてくる。いまのところ脅威ではないが、このままではキリがない。


「敵さんは待ってくれねえみたいだなっ」

「お前が集めたんだろ、アッシュ。指示頼むぜ!」


 ディバルに続いてベイマンズがそう叫んだ。


 ここに集まった挑戦者は間違いなく世界でも有数の戦士たちだ。しかし、気後れすることはいっさいなかった。これまでも大型レア種の討伐で指示を出すことは少なくなかったし、なによりいまは昔よりもずっと強固な〝自信〟がある。


 とはいえ──。


 当然のことだが、相手の動きがまだつかめていない。基本的には大型レア種と同様に対応しながら敵の動きを把握。攻略の糸口を見つけるしかない。


「レオ、まずは敵正面から接近して攻撃! 注意を引いてくれ!」

「了解。それじゃ1番乗りいかせてもらうよ!」

「ほかは散開して攻撃を開始! ただし、攻撃は敵の前面から側面までだ! 背面は遠すぎてカバーできない! 少しでも異変を感じたらレオよりも下がってくれ!」


 了解の意を返すなり、前衛組が即座に動きだした。


 切り替えの早さもさることながら、思いきりのよさもさすがだ。あれだけの攻撃が来る中、躊躇もなく距離を詰めていっている。ただ、アイリスだけは別格だ。あのラピスをも上回る速度で先頭に立ち、すでに肉迫寸前だった。


「よーし、あたしもっ」

「待った! クララだけは様子見だ!」

「えぇっ、じゃ、じゃあ《サンクチュアリ》だけかけときまーす……」


 クララはこの中で唯一の魔導師だ。

 圧倒的な火力を持つこともあって敵の注意をひく可能性が高い。そうでなくても魔法というだけで執拗に狙ってくる敵は多い。


 ただでさえレア種系の相手は耐久力が高いせいで持久戦となりがちだ。検証するにしても蓄積することでクララから注意がはがれなくなる危険性もある。今回、クララによる攻撃は必要最低限にとどめたほうがいいだろう。


「俺も行ってくる。ルナも最初は様子を見ながら頼む」

「りょーかい。ま、この顔ぶれならボクが標的にされるなんてことはそうそうないだろうけどね」


 そう苦笑するルナをよそに、アッシュは駆け出した。ほかの前衛組はすでに全員が肉迫し、無造作に広がった敵の下半身──蟻塚に各々の得物で攻撃をしかけている。が、誰一人として有効な一撃を加えられていなかった。甲高い接触音が響いてくるばかりだ。


「なんて硬さだよ……っ」

「まるで斬れる気がしない……っ」


 幾度も弾かれ、顔を歪めるヴァネッサとシビラ。


 彼女らを横目にしながら、こちらもようやく敵に肉迫。蟻塚に攻撃をしかけてみたが、がきんと鈍い衝撃音を響かせるだけに終わった。仕掛けた箇所には傷一つついていない。どうやら破壊できないのは等級の問題ではないようだ。


「この蟻塚に攻撃は徹らねえんじゃねえか!?」

「だったら、アレにいくしかねえよな……っ!」


 ベイマンズとディバルが標的を女性体へと変更し、蟻塚に登らんとしていた。その考えには賛成だが、蟻塚の上はあまりにもでこぼこしている。迂闊に足を踏み込むべきではない。


「2人とも少し待ってくれ! ルナ!」


 こちらの意図を汲んだか、ルナから矢が放たれた。火炎をまとったそれは虚空を一直線に突き進み、女性体へと激突。腹に響くほどの音を鳴らして爆発する。


 黒煙が噴出する中、聞こえてくる女性体の悲鳴のごとく苦しむ声。どうやら女性体には問題なく攻撃は徹るようだ。となれば、危険ではあるが蟻塚を登って女性体まで前衛組を進めて一気に攻撃をしかけるか。


 そう判断しかけたとき──。


 女性体の奇声に応じて蟻塚にあいた無数の穴がぐにゃっと広がった。そこから人の上半身ほどもある卵型のナニカが噴出。外側を覆っていた膜がぬちゃりとはがれると、中から本体(イクスネビュラ)とほぼ同様の形状を持った雑魚が現れた。


 違うのは大きさ。それから蟻塚部分の下に刃物のような足がついている点だ。一見して蜘蛛にも見える。ざっと数えただけでも雑魚は50体以上はいるだろうか。それらはカサカサと足を細かく動かしながら蟻塚の上を器用に移動。一斉にこちらへと向かってくる。


「おいおい、なんて数だい……っ」

「……もし突っ込んでいたら囲まれていたな。さすがアッシュだ」

「当然よ」


 わずかながら動揺を見せたヴァネッサとシビラに、ラピスがなぜか勝ち誇っていた。


 さすがにこの展開を読んでいたわけではない。

 あの五つの塔を創ったアイティエルが〝特別〟とつけたクエストとあって、厄介な仕掛けを用意しているに違いないと単純に警戒しただけだ。


 アッシュは前衛組と敵を視界に収めんと一旦後退する。


 いまもレオは女性体──本体の注意を引いてくれている。本体の攻撃は初め両腕の鎌を振るのみだったが、いまではその口から《フレイムバースト》を吐き出しはじめていた。


 威力からしてクララが持つ11等級のものより高い。1撃1撃がレオの盾に当たるなり、凄まじい轟音を響かせている。いまのところ耐えられてはいるが、なにかの拍子で崩れかねない状態だ。雑魚の対応までさせるわけにはいかない。


「前衛組は蟻塚から一旦後退! レオから少し距離を取りつつ、その周囲を守る形で雑魚に対応してくれ!」


 味方が指示に従って配置につく間にも、大量に生まれた小さな敵──雑魚たちは距離を詰めてきていた。迫るなり、無造作に飛び掛かってくる。その奇妙な形状からは想像もつかないほどの跳躍だ。肉迫と同時に振るわれる両腕の鎌も鋭く、当たれば簡単に肉を削られるだろう。


 とはいえ、1体の強さはそれほどでもない。せいぜい8等級に出てくる天使程度だ。アッシュはすれ違いざまに1体、2体と両断して処理していく。これなら苦にはならない。だが──。


 時折、雑魚は奇妙な攻撃をしかけてきた。口から吐き出す白い糸だ。どう見ても厄介な効果を持っているとしか思えない。


 ほかの前衛組も警戒しているようでいまのところ被害はない。だが、それだけにもし食らったときが心配だ。アッシュは腰裏からソードブレイカーを抜き、蜘蛛がちょうど吐き出した糸を受けた。糸はぬちゃっとくっついただけで大した変化はない。


 ──と思いきや、じゅぅと音を鳴らしながら、瞬く間にソードブレイカーを黒く変色させた。まるで全体がさびついたような恰好だ。いやな予感がして試しに斬撃を放とうとしてみる。が、一向に生成されない。


「この糸にだけは絶対に当たるな! 装備の能力を落とすか失くすかはわからないが、斬撃が出なくなるぞ!」


 アッシュはいまもまた飛んできた白い糸を回避。抜いたスティレットでソードブレイカーに付着した糸をはがそうとする。が、糸にくっついて放れなくなってしまった。2本とも放り投げながら、再び持ち直した剣で雑魚を処理する。


「しかも粘着もちだ! 一度くっついたらもう役に立たないと思え!」

「最悪じゃねえか! ったく相変わらずひん曲がってんな、我らが神様はよっ」


 雑魚を長剣で両断しながら大声で悪態をつくディバル。気持ちはわかるが……いまは味方に神を崇拝する者がいることを忘れないでほしいところだ。アイリスが雑魚を処理しながらディバルにむっとした顔を向けていた。


「いまの言葉、訂正してください……!」

「勘違いするなよ。最高の神様だって言ってんだ」

「そのようには聞こえなかったのですが」

「こんぐらいの軽口、アッシュだっていつも言ってんだろ」


 とんだとばっちりだ。

 アイリスから向けられた鋭い視線から逃れるため──ではないが、アッシュはいま一度現状を把握。後衛に届くようにと声を張り上げる。


「そのままルナは攻撃を続けてくれ! クララも様子を見つつ本体に攻撃を頼む!」


 ルナだけに削らせれば安全なことは間違いない。だが、雑魚がわらわらと湧いてきている状態だ。長引かせることだけは避けなければならない。


「よーし、やっとあたしの出番だねっ!」

「言っとくが、《メテオストライク》は使うなよ! もちろん《スーパーノヴァ》もだ!」

「うぐっ……い、言われなくてもわかってるよ!」


 間違いなく使う気だった。

 釘を刺しておいて正解だったようだ。


 とはいえ、雑魚の処理がいよいよ追いつかなくなったときは、クララの広範囲高火力の魔法を使わざるを得ないだろう。


 依然としてレオが敵本体の注意を引き、ルナとクララで敵本体を攻撃。残りの前衛組で雑魚を処理、と変わり映えのない光景が続く。状況が少し安定してきたか。おかげで圧倒的な働きを見せるアイリスの動きをじっくりと観察できた。


 100階の守護者として戦ったときのような特殊な技は使ってはいないものの、高い身体能力はそのまま。両手に握った剣でまるで踊るように雑魚を処理している。遠距離から飛んでくる白い糸もまるで当たりそうにない。


 ──挑戦者の気分を味わってもらいたい。


 そんな想いもあって今回の特別クエストに誘ってみたが……果たして挑戦者の醍醐味である〝苦難〟を感じる事態に陥るかはかなり怪しいところだ。とはいえ、仲間としてみればこれ以上頼もしいことはない。


「負けてられないな……っ!」


 アイリスの戦いぶりを横目に、こちらもまた雑魚を処理していく。と、こっそり討伐数で張り合っていたことに気づかれたらしい。アイリスが負けじと回転を上げはじめた。まさに風が暴れているような動きだ。触れた敵から順に裂け、消失していく。


 そんな彼女の働きぶりに三大ギルドのマスターたちが驚嘆の声をもらしていた。


「あれが100階の守護者……なんて動きだ」

「ははっ、思っていた以上だねぇ……」

「どんだけ強かろうが、いずれ俺が倒してやるぜ!」


 どうやら触発されたようだ。際限なく湧き続ける雑魚たちに一時は押し込まれていたが、一気に盛り返しはじめた。これならもうレオに近づかれる心配はない。あとはルナとクララが本体を削り切るだけだ。


 そう思ったとき、敵本体が慟哭をあげはじめた。耳鳴りを思わせる高い声に全員がもれなく顔を歪める。が、目の前で起こった変化にまたも表情を動かされた。


「消えた……!」


 驚愕したような声を出すラピス。


 先ほどまで視界を埋め尽くすかのごとく湧いていた雑魚たちが、その言葉どおり消えた。ただ、完全な消失とは言い難かった。小さな幾つもの黒点と化し、まるで煙のように舞い上がると、蟻塚の穴に吸い込まれていった。


「おい! あの煙、なんか蟻塚に戻ってんぞ!」

「どうする、アッシュ!」


 叫ぶベイマンズの傍ら、対応を求めてくるディバル。


 ここまでの変化となると、敵が狂騒状態へと移った可能性が高い。とはいえ、敵は叫び続けるばかり。ここは一気に攻勢に出るべきか。

 一瞬の逡巡を経て、アッシュは指示を飛ばす。


「様子を見たい! レオはそのまま! ほかの前衛組は一旦蟻塚から距離をとってくれ! ルナは1発だけ本体に攻撃を頼む!」


 前衛組が敵と対峙した格好で下がる中、ルナの矢が後方から飛翔。敵の本体へと向かっていき、激突──するかと思いきや、すっと音もなく通り過ぎていった。外れたわけでも回避されたわけでもない。単純に通り抜けてしまった形だ。


「矢がすり抜けた……! アッシュ!」

「ああ、構わない!」


 おそらくルナは属性が関係している可能性を考えたのだろう。こちらが首肯すると、ルナがすぐさま弓を持ち換えた。


 大型レア種と対峙する際、ルナは持ち運びに余裕があればどの属性にも対応できるよう全属性の弓を用意してくる。今回も例にもれず、用意した弓を床に置いていた。


「ダメだ! 白の弓でも当たらない!」

「クララも軽いのを!」

「任せて──って、うそぉっ、あたしの魔法も当たらないんだけどっ!」


 ルナの矢だけでなく、クララの《フレイムバースト》もまた敵を捉えられないようだった。よく見れば、敵本体の姿が最初よりもぼやけている。それが攻撃を与えられないことと関係しているのか。


 ただ、あの神が倒せない敵を用意するわけがない。なにかしら敵本体に攻撃を与える〝仕掛け〟があるはずだ。その考えに至ったとき、敵の慟哭が止んだ。かと思えば、さらなる大きな声をあげはじめた。


 全員が苦悶に顔を歪める中、ついに変化が訪れた。蟻塚の穴から煙が噴出したのだ。また先ほどまでの雑魚となって現れるのかと思いきや、それらは人を模った形で滞留。やがてはっきりとした輪郭を持った。


 その外見を端的に表すならば暗黒の騎士以外にない。悠々と舞うマント。艶ややかな立派な鎧。そして足場に突き立てた正統的な長剣。柄に両手を置いた格好もまた物語の中に出てくる騎士のようでさまになっている。


「なんだか親近感を覚える相手だね」


 レオがそんな世迷言を口にする最中、仲間たちが身構えていた。


 全員がわかっているのだろう。これから先の戦い、決して誰一人として楽が出来る者はいない、と。なぜなら──。


 現れた暗黒騎士の数が10、と。

 参加者の数と同じだったからだ。



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