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五つの塔の頂へ  作者: 夜々里 春
【天の往還】第二章

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◆第二話『天上のいかずち』

 シヴァを誘い込み、待機させていた横並びの属性攻撃3発を一斉に発射。三叉槍で受け止められたものの、たじろがせることに成功した。


 横合いから飛び込んできたラピスが穂先を敵の左腕ごと腹へと刺し込む。敵はみじろいだだけだったが、その場に固定されている。


「アッシュっ!」


 ラピスに促されるがまま、アッシュは距離を詰め、敵の首をはねた。敵の頭部がころころと転がる中、わずかに先行したレオへと叫ぶ。


「レオ、予定どおり頼む!」

「了解っ!」


 まだ余裕と言えるほど安定はしていないが、わずかに処理が早くなったこともあり、試しに少しだけ進んでみることになった。目標地点は入口から見えていた扉なしの巨大なアーチだ。


 レオが先行し、アーチまでの道のりを彩るよう両側に配された支柱の辺りまで到達する。


 アッシュは全身が押し潰されそうなほどの威圧感に苛まれた。

 出所と思われる頭上を見上げた瞬間、思わず目を瞬いてしまう。


「はは……規模がおかしいだろ」


 星々が煌く夜空を遮るように、なにもない空間からとてつもなく巨大な顔がぬっと現れていた。髭を生やし、厳しい顔だちの老齢の男といった顔だ。


「で、でかすぎだよ……っ!」


 クララの悲鳴にも似た声が聞こえてきた、そのとき。

 巨大な顔のそばから相応に大きな腕が出現し、手に持ったハンマーを地上へと叩き落した。


 地面が激しく揺れ、脳が揺さぶられる。

 大げさではなく世界が揺れているかのような凄まじさだ。


 視界が明滅したかと思うや、空から雷が落ちていた。

 それも一度ではなく何度も何度もだ。


 踏み込んだ対象――レオを狙ったわけではないようで広域に渡って散発的に落ちている。ただ、いつ当たってもおかしくないほどに落ちる間隔が短すぎた。


 アッシュはあちこちで轟く雷鳴に負けじと大声で叫ぶ。


「下がれ、レオ! 後ろのは気にするな! 俺が持つ!」


 すでに駆けはじめたレオの後ろから猛然とシヴァが迫っていた。アッシュはレオとすれ違いざまにシヴァの突進を受け止めつつ、さらに指示を飛ばす。


「全員、少しずつ後退して入口まで戻るぞ!」



     ◆◆◆◆◆


 アーチからの撤退に手間取り、疲労困憊となってしまった。

 そのため、本日は早々に狩りを切り上げ、塔から帰還。

 中央広場へと戻ってきた。


 塔内での激しい戦闘のあとだからか。

 中央広場ののどかな空気に触れると、ほっと息をつけた。


 ひとまず塔から帰還したあと、真っ先に交換屋へと向かうのが常だった。ほかの階層よりも装備が損傷しやすいため、ほぼ毎日修理してもらわなくてはすぐ使い物にならなくなってしまうからだ。


「武器が揃えば火力的にも進めるかと思ったが……あれは揃ってもそう簡単には進ませてもらえなさそうだな」

「予想以上に熱い出迎えだったね。あの雷、当たったら僕でもかなり厳しそうだよ」


 そう口にするレオの顔は青ざめていた。

 あれほど高頻度なうえに広範囲に渡って放たれる攻撃だ。今回は運よく当たらなかったものの、次は当たってしまうかもしれない。


 今後、91階を攻略しようとなった場合は早々に落雷のタイミングや法則性などを掴む必要があるだろう。でなければまず間違いなく突破は難しい。それほどの攻撃だった。


「あのでかい顔――《トール》だっけ。レア種だったりしないよね」


 クララがぼそりとこぼした願望にルナが苦笑する。


「また言ってる。正規の道に堂々と出てくるぐらいだし、シヴァ同様に通常の敵なんじゃないかな」

「そもそもあれって倒せる敵なのかな」

「だと思いたいけど、いまのところ倒せるイメージがまるで湧かないね」


 ルナがまなじりを下げながら言った。

 全体像こそ見えなかったが、覗いていた顔や腕からしてこれまで戦った巨人――緑の塔40階の主である樹の巨人やベルグリシよりも圧倒的に大きかった。


 人の手でどうにかできる領域を超えているとしか言いようがない。だが、それでも敵として頂までに立ちはだかっている限り相手にするしかない。


「ほんとこれまでとは規模も強さも段違いだな」

「でもアッシュにしてみれば攻略しがいがあって嬉しいんじゃない?」


 そう問いかけながらラピスが顔を覗き込んでくると、くすりと微笑んだ。


「ほんといつにも増して楽しそうね」

「最近はまだまだ自分が強くなってるってのを実感できてるからな」

「自分に合った武器を使えてるものね」


 ラピスの言うとおりだった。

 相手がおそろしいほどに強いから成長している部分もあるだろう。だが、一番の理由はやはり長剣を使うようになったからだ。


 成熟した肉体だからこそできる動き。

 また多種に渡る武器を使うようになったからこそ思いついた動き。ほかにも幼い頃に長剣を手放してから、いまに至るまで得られた様々な経験。


 それらが戦闘を重ねるたびに長剣をとおして体に染みこんでいくのがわかる。いまだかつてここまで充実した日々はない。


「ねね、あれってシャオちゃんじゃない?」


 ふいにクララが遠くを見ながら言った。

 彼女の視線を辿ると、交換屋の前でひとりの男と対峙するシャオを見つけた。



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書籍版『五つの塔の頂へ』は10月10日に発売です。
もちろん書き下ろしありで随所に補足説明も追加。自信を持ってお届けできる本となりました。
WEB版ともどもどうぞよろしくお願いします!
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