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五つの塔の頂へ  作者: 夜々里 春
【天の往還】第一章

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◆第九話『初入手』

 頭上から降り注ぐ幾つもの鉄球。

 地面に落下するなり轟くような音を鳴らし、爆ぜていく。


 まともに当たれば肉片と化すのではないか。

 そんな恐怖感に苛まれる中、アッシュは巻き上がった爆煙と土埃から脱出。その先で待ち構えていた鉄の人形――オートマトンの四肢を切断し、破壊した。


「そろそろ時間だ! 次、倒したら一旦撤退するぞ!」


 本日はペポン収穫祭が行われることになっている。

 ただ、開催時刻が夜とあって時間があり余っていたため、今日も今日とて緑の塔91階で魔物を狩りに来たというわけだった。


 新たに現れたオートマトンが拳を飛ばしてきた。


 レオが盾で1つの拳を受け止める中、アッシュはラピスとともにもう片方を迎撃。その間にクララが《フレイムバースト》、ルナが属性矢を敵に命中させ、爆発を引き起こした。


 けたたましい音が響き、巻き上がる黒煙。

 それが晴れたとき、弱々しいオートマトンの姿があらわになった。


 最近、狩りつづけてわかったことだが、オートマトンは物理攻撃には強い反面、魔法や属性攻撃に比較的弱いようだった。


 ただ、相手は10等級階層の魔物だ。

 それだけで倒しきれるほど甘くはない。


 きぃんと音をたてながら、オートマトンは自身を覆うよう緑に光る膜を張った。あれは魔法や属性攻撃である一定まで損傷した場合、決まって展開されるものだ。


 クララとルナの攻撃が続けて放たれていたが、緑の光膜によってすべて完璧に防がれてしまう。


「もうっ、またそれ!?」

「あれを出されたらなにもできないね……っ」


 クララが嫌気が差したように叫び、ルナが苦々しくこぼす。


 ただ2人のおかげで敵へと接近する時間を稼げた。

 拳を回収したばかりの敵の胸元へと、ラピスが穂先をぶつけた。勢いの乗った一撃とあって敵が後方へと弾かれ、わずかに体勢を崩す。


 仕留める好機だ。

 アッシュは即座に敵の首を切断せんと剣を繰りだす。が、敵頭上の虚空を斬ってしまった。手元が狂ったわけではない。単純に地面が隆起したのだ。


 気づいたときには視界がぶれ、上空へと打ち上げられていた。


 これは《アースクエイク》。

 となればあの敵が近くにいることは間違いない。


 褐色の人型――シヴァが音もなくそばに現れた。


 すでに振りあげられた三叉の槍を勢いよく振り下ろしてくる。


 体勢を崩したうえに空中でシヴァの攻撃を受ければただではすまない。覚悟を決めて長剣で迎え撃とうとするが、互いの得物が接触することはなかった。


 ルナがとっさに《レイジングアロー》を放ち、シヴァの腕を弾いてくれたのだ。


「助かった!」


 アッシュは着地と同時に転がりつつ駆け出し、少し離れたところに下り立ったシヴァとの距離を詰めにいく。敵は先ほどルナの攻撃で右腕がもげかけていたが、接近中に元通りになっていた。相変わらず恐ろしい再生力だ。


「ラピス、レオ! オートマトンを頼む!」


 アッシュはそう指示を出しつつ、シヴァに肉迫。得物を勢いのまま繰り出すが、しかし三叉槍で受け止められてしまう。人間でないとはいえ、こうもあっさり受け止められるのはさすがにくるものがある。


 と、ぐんっと剣を押しのけられた。

 お返しとばかりに穂先が喉もとへと差し出される。


 総毛立つような感覚に見舞われながら、アッシュは身をよじって回避。敵の右脚を斬り飛ばした。が、再生は瞬時に行われ、敵は体勢を崩すことなく攻撃をしかけてくる。


 本当に規格外の強さだ。

 初撃からずっと首を狙っているが、そう簡単に取らせてはくれない辺りも、ほかの敵にはない危機察知能力を感じられる。


 ただ、このひりつくような感覚がたまらない。


 敵から繰り出された薙ぎを躱しざま、アッシュはしゃがみ込むほどに身を低くした。敵の懐へと潜り、思い切り踏み込む。


 左後ろに流した剣は眩く輝いている。

 先ほど敵の右脚を飛ばした際に《ソードオブブレイブ》の発動条件を満たしたのだ。


 敵が急いで得物を引き戻そうとするが、もう遅い。

 アッシュは敵の脇を駆け抜け、一閃。敵の首を飛ばした。


 シヴァの首がころころと転がったのち、ぐりんと第三の目を開けて睨んでくる。なんともおぞましいが、そのままなにかしてくることもなく消滅していった。


 ラピスの声が飛んでくる。


「アッシュ、こっちも倒したわ!」

「急げ! 撤退だ!」


 すでに奥側から迫ったオートマトンが背中から鉄球をばらまこうとしていた。その少し裏では、シヴァが《メテオストライク》の体勢に入っている。


 本当に進ませる気のない熱烈な出迎えだ。


 アッシュは本格的に攻略する日を楽しみにしつつ、そばに落ちていた煌く宝石を手にとって転移門へと全力で駆け出した。



     ◆◆◆◆◆


「いつも撤退するときは《メテオストライク》に追われてるね」

「そろそろあれ夢に出てきそうだよ~……」


 転移門から撤退するなり、レオとクララがぐったりと座り込む。かつて王女や将軍だったことを微塵も感じさせない姿だ。


 対照的にラピスとルナは淑やかに腰を下ろしているが、疲労具合は変わらないようだ。俯かせた顔にはまるで覇気がない。


 そんな中において、アッシュはひとり元気なままでいられた。体力的にまだ余裕があることもあったが、それ以上にいまも手に握ったものおかげだった。


「みんな、これを見てくれ」


 アッシュは指で摘んで見せつける。

 と、全員が面白いほど目を見開いた。

 クララが飛びあがって覗き込むように確認しにくる。


「しかも武器の交換石じゃん……! いつ出たの!?」

「さっき最後のシヴァを倒したときだ」


 したり顔を見せつつ、答える。

 仲間たちを驚かせるため、こっそりと持ち帰ったかいがあったようだ。


「クエストで入手するのは難しかったから本当に助かるね」


 ルナがほっとしたように言った。


 武器交換石のクエスト入手条件はシヴァの1000体討伐。まだ100体も倒せていない状況とあって途方もない数字に感じられたが……まさか現物を直に入手できるとは思いもしなかった。これは幸運中の幸運だ。


「で、とりあえず誰が最初に変換するかだが……」

「アッシュでしょ」


 ラピスが機先を制するように言い放った。


「いまのところ一番厄介なシヴァとひとりでやりあえるのはアッシュだけだし。たとえいまの状況でわたしが10等級の武器をもらっても宝の持ち腐れになる可能性が高いわ」

「僕もラピスくんと同じかな。天使のときとは違って、あれに慣れるのはまだまだかかりそうだよ」


 レオが肩をすくめながら自嘲する。

 2人はまだシヴァ相手には苦労している。いくら得物の斬れ味が増したところで優位に立てるという段階でないことはたしかだった。


「ボクとクララも後回しかな」

「うんうん、オートマトン相手に防がれちゃうしね……」


 ルナとクララも正統な理由から譲ってくれるようだ。


 効率という点からすでに答えは出ていたが、やはり全員の同意を得られたほうが心置きなく使えるというものだ。アッシュはぐっと交換石を握りしめる。


「わかった。じゃあ、俺がもらうぜ」

「そうと決まったら急いで交換屋に行かないとね」


 そうしてルナとともにラピスとレオがすっくと立ち上がる中、すでに立ち上がっていたクララが塔の外縁へと走りだした。陽が暮れ、赤く染まりだした空へと飛び込む。


「ペポン収穫祭でお披露目だーっ!」



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書籍版『五つの塔の頂へ』は10月10日に発売です。
もちろん書き下ろしありで随所に補足説明も追加。自信を持ってお届けできる本となりました。
WEB版ともどもどうぞよろしくお願いします!
(公式ページは↓の画像クリックでどうぞ)
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