◆第十一話『大海蛇戦・後編』
呑気に見学している暇はなかった。
シーサーペントは頭を揺さぶるような不快な咆哮をあげると、開いた大口から水を噴出した。極太の激流が陸地を無差別に削っていく。さらに地面に当たって散った飛沫がそれぞれ変形し、《フロストアロー》となって四方へと飛びはじめる。
その1本がこちらにも飛んできた。アッシュはロウとともに水面から飛び出す。と、先ほどまで浸かっていた水に氷刃が激突。中の水を勢いよく噴出させた。
遠くからではわからなかったが、凄まじい大きさの《フロストアロー》だった。青の属性石7、8個は強化をしていないと到達できないのではないかと思うほどだ。
シーサーペントの動きは止まらない。水面からさらに胴体を伸ばすと、上半分を陸地に乗り上げてきた。大口を開けながら手前の壁に激突する勢いで顔を突き出してくる。
直線的に動いたかと思うや、うねるように動いたりと読みにくい動きだ。敵の攻撃から逃れるため、アッシュはロウとともに全力で広い陸地を駆けていると、遠くの壁際にベイマンズとヴァンの姿を見つけた。
大きな怪我はしていないように見える。が、2人とも肩で息をしている。あまり良い状態でないのは間違いない。
ロウが叫ぶ。
「ベイマンズ、ヴァン!」
「ロウさん! ってアッシュの兄貴も!?」
気づいたヴァンがひどく驚いていた。
いまもなお繰り出されるシーサーペントの体当たり攻撃を避けながら、アッシュはロウとともに彼らのもとへと向かう。
距離が縮まるにつれ、ベイマンズの顔が険しくなっていく。
「ロウ……どうして来たっ!?」
「助けに来たに決まっている!」
「そうじゃない! 俺はお前を切り捨てたんだぞ!? なのに、どうして来たんだって言ってんだよ!」
シーサーペントが水の奔流を吐き出し、《フロストアロー》が飛び交いはじめる。それらをベイマンズはツインアックスで迎撃しながら話を続ける。
「わかってんのか!? こいつを倒すにはヒーラーが2枚必要なんだぞ! お前が来たって倒せる見込みはない! ただあいつに削られて惨めに死んでいくだけだ!」
「そんなことはわかっている!」
ベイマンズの声も相当大きかったが、それを上回るほどの声でロウは叫んだ。
「けど、仕方ないだろうっ! 体が勝手に動いてしまったんだ。お前を……大切な友を死なせてはならないと……」
「……ロウ」
彼らの口論はひとまず落ちついたようだ。
「2人とも、いまはあいつの相手をしたほうがいいんじゃないか!?」
アッシュはそう叫びながら、シーサーペントの食いつき攻撃を躱した。敵が顔を引くのにあわせてスティレットを振るって斬撃を放つ。極太の線が敵の顎近辺に命中する。が、かすかな傷を負わせただけに終わった。
「無駄だ! 遠距離攻撃はほぼ効果はないぞ!」
「効果ないって……んなのありかよっ」
反撃とばかりに放たれた水流を転がるようにして回避。続けて襲ってきた《フロストアロー》を迎撃していく。
「奴の腹に斜方形の宝石が見えるか!? あれが強力な《プロテクション》と《マジックシールド》を発生させている!」
ロウの言う斜方形の宝石は大の大人と同程度の大きさで、敵の腹側に埋め込まれている。敵の全長がわからないので正確には判断できないが、位置はおそらく中間地点だ。
「っても魔法も遠距離も無理ってなると、高さ的にきついなッ!」
「攻撃する機会は1度だけある。あるにはあるが――」
ロウがなにかを言いかけたとき、シーサーペントが湖の中に潜った。
ヴァンが慌てたように叫ぶ。
「奴が潜った! ツナミ来ます!」
「ツナミってシーホースが使ってたやつか?」
「そうですけど、こいつのは規格外なんすよ! 急いで手前の壁まで避難を!」
ヴァンだけでなく、ロウやベイマンズも全力で手前に向かって走っていた。それほど危険な攻撃というわけか。アッシュは彼らと同様に後退する。と、壁際まで辿りついたところで地鳴りが起こった。
振り返った先、湖から見上げるほど巨大な波がせり上がっていた。現実にはありえないほどの高さだ。アッシュは思わず顔を引きつらせてしまう。
「……たしかにこれは規格外だ」
そばでは、ベイマンズとヴァンが自身の得物を地面に突き立てていた。
「掴まれ、ロウ!」
「あ、ああ……っ」
ベイマンズの太い腕にロウがしがみつく。緊急時とあってか、わだかまりはひとまず置いたようだ。
こちらも彼らに倣って思い切りスティレットを地面に突き刺す。間もなく津波に呑み込まれると、凄まじい衝撃が全身を襲ってきた。スティレットを持った両手が引きちぎられそうになりながらも、必死になって握り続ける。
目を開けることはできなかった。
自分がいま、どんな格好でいるのか。混乱して把握できなくなった頃、一気に水が引いた。体が緩やかに地面につく。口を開けると同時に思い切りを呼吸を再開する。
しばらくゆっくりとしていたいところだが、悠長にしていたら敵の攻撃を受けかねない。アッシュは素早く立ち上がって身構える。が、敵に動きはなかった。それどころか陸地に接する形で湖から体を出して直立している。ちょうど腹の宝石が攻撃できる高さだ。
ロウの言っていた攻撃できる機会とは、このときだったのだろう。
すぐさま駆け出そうとしたところで、少し進んだ先に青い光で引かれた線が目に入った。こちらと敵を区切るよう横一線に引かれている。
「なんだあれ……?」
「アッシュ、あの境界線は絶対に越えるな。回避不能の《ウォーターピラー》が襲ってくる」
落ちついた様子で立ち上がったロウが濡れた髪を手でかぎあげながら言った。
「でも、いましかあれを壊せる機会はないだろ――って、ヒーラー2人必須ってのはそういうことか」
「そうだ。攻撃を受けることを前提で直進。あれを壊すんだ。ただ、敵の攻撃があまりに強烈なうえ攻撃間隔が短いために6等級以上のヒーラーが2人いないと回復が追いつかない……!」
ロウが悔しさを滲ませながら言った。
なんとも強引な方法だが、回避不能なら仕方なしといったところか。いずれにせよ、レッドファングの攻略法が使えないことは理解できた。
ただ、ひとつ疑問があった。
本当に攻略法はそれだけなのか、と。
アッシュは敷かれた光の境界線、さらにその先で待ち受けるシーサーペントをじっと観察する。と、視界の端でベイマンズが勢いよく駆け出したのが見えた。
「くそっ、こうなったら俺が突っ込んでアレを破壊する! ロウ、援護を頼む!」
「待て、ベイマンズ!」
ロウが制止するも、ベイマンズは止まらなかった。猛りながら、ついに境界線を越える。直後、ベイマンズが足を置いた地面から極太の《ウォーターピラー》が噴出した。
クララの属性石4ハメの《フレイムピラー》と比べても倍以上の太さ。さらには天井に激突するほどの勢いだ。属性石7、8ハメどころではない。
案の定、ベイマンズは上方へ吹き飛ばされていた。駆ける勢いを利用して、前方へと逃れたが、あまりに凄まじい威力に一撃でふらついていた。だが、ロウのヒールを得て、またも諦めずに前へと駆けようとする。
と、彼の進路は突如として出現した岩壁に塞がれた。さらにその両脇を固めるように幾つもの岩壁がせりあがっていく。緑の塔5等級の魔法、《ストーンウォール》だ。
「なにすんだ、ロウ!」
「それはこっちの台詞だ! そんなことをしてもお前が死ぬだけだ! 戻ってこい、ベイマンズ!」
舌打ちをしたベイマンズが引き返そうとしたところで、またも《ウォーターピラー》が噴出した。彼は打ち上げられると、水柱から必死になって飛び出してきた。地面を転がったのち、ふらついた足で駆け続ける。境界線の手前側まで戻ってくると、激しく咳き込んでいた。
ヴァンが慌てて駆け寄る。
「ボスッ!」
「くそっ……このままじゃ本当に全滅しちまう……俺のせいで……また……っ」
ベイマンズが悔しげに地面を叩いた直後、境界線の光がすっと消え失せた。シーサーペントが咆哮をあげ、食いつき突撃をしかけてくる。
「来るぞ! ベイマンズ、ヴァン!」
ロウの叱責するような声を受け、2人が弾かれたように駆けはじめる。序盤と同様、食いつき攻撃だけでなく水流を吐き出してくる。それらを迎撃、回避して凌ぐだけの時間が流れていく。
ベイマンズとロウ、ヴァンはすでに諦めているのか。顔が険しいままだ。そんな彼らに向かってアッシュは叫ぶ。
「なあ、さっきの宝石の破壊、俺に任せてくれないか!?」
そう提案した直後、誰よりも早く難色を示したのはロウだった。
「きみも見ただろう! 緑の属性石をフルに装着したベイマンスさえ1発で瀕死状態だぞ! きみの装備じゃ間違いなく即死する!」
「どのみちこのままだと死ぬしかないだろ! それに即死するなら当たらなきゃいいだけだ!」
アッシュは淡々と言い放った。
途端、ほかの全員が目を見開いた。
ヴァンがはっとなったあと、慌てて口を開く。
「いやっ、あれ回避不能な攻撃っすよ! 当たらなきゃいいって――」
「そう見えるだけだ! 実際は違う!」
先ほどベイマンズが特攻した際、注意深く観察していたが、《ウォーターピラー》の設置は彼が地面に足を置く前に確定していた。設置から発動までがおそろしいほど早いため、回避不能に見えていただけの話だ。
こちらのやる気に反して、ヴァンは不安で一杯といった様子だった。
「いくらなんでも無茶っすよ……ねえ、ロウさんからも――」
「……わかった。アッシュに任せよう」
「ですよねって、マジっすか!? ちょっとボスからもなんとか――」
「あのロウが言ったんだ。だったらいけるってことだ」
どうやらロウもベイマンズも任せてくれるようだ。
「どうなっても知らないっすからね」
渋々ではあったが、ヴァンの同意も得られた。
ヴァンの態度もこちらを心配してくれているがゆえだ。ありがたいと思うと同時に、必ず成功させると胸中で誓った。
いまもなおシーサーペントの激しい攻撃は続いていた。まだツナミ以外に直撃は受けていないが、走り続けているせいで肉体的にも疲労が溜まってきている。体力的に見ても命運をわけるのは次の境界線が出たときだろう。
転がるようにして敵の食いつき攻撃を避けたのを機にロウが併走してきた。
「アッシュ、宝石を壊せば奴はダウンする。そうなれば、あとはわたしたちが仕留める」
「つまり俺は宝石を壊すことだけに専念すればいいってことか」
「そういうことだ」
「でも、いくらなんでも3人でいけるのか? あいつかなりタフそうだぜ」
「愚問だな」
ロウが得意気に笑みながら右手に拳を作った。彼の細腕に通された幾本もの腕輪がじゃらじゃらと音を鳴らす。
「きみを信じて、残りの魔力をつぎ込み《ライトニングバースト》を可能な限りストックする。それにベイマンズもヴァンも運だけで8等級に昇ったわけではないさ」
「そういうことっすよ!」
「ああ。ロウ言うとおりだ。俺たちならやれる」
ロウの視線に応じてヴァン、ベイマンズが声をあげた。この場に来るまで喧嘩していたとは思えない連携ぶりだ。
「了解だ。あとのことは任せるぜ」
あの《ウォーターピラー》を避けるにはとてつもなく繊細な動きを要求される。ほかのことを考えないで済むのは実際ありがたかった。
シーサーペントが湖の中に潜った。
――ツナミが来る。
ただ、万全の態勢で挑むためにもツナミは食らいたくない。
アッシュは壁際に到達したベイマンズに向かって全力で駆けていく。
「ベイマンズ、俺を斧で思い切り上に飛ばしてくれ!」
「任せろ!」
こちらがなにをしたいのか、すぐに理解してくれたようだ。ベイマンズがツインアックスの片方を両手で持った。アッシュは向けられた斧の腹に飛び乗る。
「おらぁああッ!」
ベイマンズの豪腕によって斧が振り上げられた。アッシュは弾かれたように上方へ飛ばされる。思った以上の勢いに天井にぶつかるのではと一瞬焦ったが、直前で緩まった。アッシュは壁にスティレットを突き刺し、ぶら下がる。
ほぼ同時、湖からツナミがせり上がった。
上方から見ても圧巻の高さだ。
押し寄せたツナミが轟くような音を鳴らして手前の壁に激突する。激しい揺れが襲いくる。振り落とされないようにとスティレットを強く握りしめる。
アッシュは眼下を覆うツナミを見つめながら、先ほどベイマンズが境界線を越えたときの光景を脳内で何度も思い出していた。
敵が《ウォーターピラー》を設置した場所、瞬間を見極めて回避行動をとらなければならない。8等級に達したベイマンズたちでも気づけないほどの間だ。至難の業と言えるだろう。
ただ、回避できる自信はあった。……いや、違う。本当は試してみたいだけだった。目の前に勝負の舞台がある。おそろしく高い難度の――。
――こんなのやるしかないだろ……!
気持ちが昂ぶるにつれて波が引いていく。
やがて陸地を覆っていた水が完全になくなると、アッシュはスティレットを抜いた。落下の途中で壁を蹴って地面に着地。転がって勢いを殺すと、一気に駆け出した。
少なくとも対象に向かって《ウォーターピラー》が1本放たれると、それが収まるまでは次の1本が放たれることはない。その間にどれほど前に進めるかが勝負だ。
境界線を越えた。
初めの1歩目から判定に入ることは予測できていた。設置の瞬間、少し前の地面がかすかに発光する。すでに体は前に倒れかけている。だが、アッシュは腕を振り、体をひねり、残った足の力で強引に右斜め前方へと飛んだ。
左側のすぐそばで腹に響くほどの轟音が鳴った。《ウォーターピラー》が噴出したのだ。左手がかすかに触れ、湿った。
躱し方が甘かった。
――次はもっと強く地面を蹴る。
脳内で即座に修正しながら、全力で走り続ける。後ろを確認。迸った水柱が収まりはじめた。その間、驚愕するベイマンズたちの顔が映り込んだが、すぐさま視界から追い出した。そろそろ次の《ウォーターピラー》が来る。
前方に視線を戻してから間もなく、次の《ウォーターピラー》の設置を感知。今度は左斜め前方へと逃れた。右手は触れていない。飛沫がかすかに体にかかった程度だ。
かなり無茶な躱し方をしているのはわかっているが――。
いける。いける……ッ!
自分でも驚くほどに感覚が研ぎ澄まされていた。いざ飛び込むまでは腕の1本程度は覚悟していたが、まるで当たる気がしない。それどころか余裕を感じるほどだ。
さらに3発目の《ウォーターピラー》を回避した、そのとき。
アッシュは気づけば口の端を吊り上げていた。
◆◇◆◇◆
「ありえない……あの攻撃をたった1度で見切ったというのですか……っ」
眼前の壁に描かれた映像を前に、アイリスは思わず驚愕の声をあげてしまった。
面白いものが観られるぞ、とベヌスに呼び出されたのがつい先ほどのこと。館に到着するなり観せられたのは、やはりベヌスのお気に入りの挑戦者――アッシュ・ブレイブの戦闘場面だった。
彼はシーサーペントにたった4人、しかもヒーラー1人で挑むという無謀なことをしていた。アッシュの《ラストブレイブ》を使うなら話はべつだが、それをする気もない様子。おそらく全滅するだろう。そう思った矢先だった。
アッシュが、これまで挑戦者が誰一人として回避できなかった攻撃を回避したのは。
「奴の特徴は対応力の高さだ。それも並大抵のものではない。幼い頃から魔物と戦い続けたからこそ得られたものだろう。そしてもう1つ。戦いを楽しむ……その余裕だ」
ベヌスは嬉しそうにアッシュのことを語った。
アイリスは壁の映像をまじまじと見る。いまもアッシュは《ウォーターピラー》を次々に回避している。それほど余裕があるようには見えないのに彼は笑っている。まるで心の底から戦闘を楽しむ無邪気な子供のように。
彼はほかの挑戦者とはまったく違う。
明らかに異質な存在だ。
「来るぞ、奴は」
ベヌスは妖艶に笑んだのち、刃のごとく鋭い言葉を放った。
「――真なる戦いの舞台へと」
◆◇◆◇◆
アッシュは《ウォーターピラー》を回避するたび、自身の動きをより効率的に昇華させていく。6本目を躱したときには回避後もほぼ速度を緩めずに走り続けられるようになっていた。
すでにシーサーペントの腹に埋め込まれた宝石の艶をはっきりと視認できるほどまで近づいていた。もう間違いなく辿りつけるだろう。
ここまで気持ちが昂ぶったことは記憶を漁ってもただの一度しかなかった。廃棄された塔。最後の試験として〝父親に見守られる中、ひとりで竜を相手にした〟あのとき以来だ。
アッシュはひらりと《ウォーターピラー》を回避すると、ついに宝石に肉迫した。逆手に持ったスティレットの先端を向けると、左掌に柄尻を添えた。そして、ここまで走り続けた勢いを込め、宝石へとスティレットを突き刺した。
抵抗なんて感じなかった。ピシッという音とともに亀裂が走り、砕け散る。シーサーペントが鳴き声をあげながら身悶えるように体を揺らした。地鳴りのような音を響かせて不恰好に陸地へと崩れ落ちる。
「ベイマアアアアアアアアアアンズッ!!」
アッシュは昂ぶった感情を吐き出すよう振り向きざまに大声で叫んだ。
「ほんと大した奴だぜ……お前はよぉッ!」
すでにベイマンズは走り出していた。ツインアックスを無茶苦茶に振り回しながら、むき出しになった敵の腹を斬り裂いていく。一撃ごとに響く凄まじい衝撃音。えぐい、という表現が似合う凄惨な攻撃だ。
ヴァンもまた敵が倒れると同時に攻撃を繰り出していた。普段の下っ端な姿が嘘のように冷酷な目つきで敵の首付け根を執拗に狙っての素早い連撃。かと思うや、敵の頭部を突き飛ばすほどの一撃を見舞った。
血だらけのシーサーペントが呻き声をあげ、たまらず体を持ち上げようとする。
「全員、散れ!」
そう叫んだのは広間の入口側にて待機していたロウだ。彼の頭上には5つもの巨大な魔法陣が浮かんでいた。それらはすべてシーサーペントへと向けられている。
近接組が散ったのを機に5つの魔法陣から光球が出てきた。その大きさはシーサーペントの頭部を呑み込むほど。
光球たちは凄まじい速度で敵に衝突。辺りに大樹の根のごとく閃光を迸らせ、炸裂音を空洞内に響かせた。激しい明滅にアッシュは思わず腕で目を覆う。
やがて炸裂音と明滅が止んだとき、地面が揺れた。シーサーペントが倒れたのだ。一拍の間を置いて敵の身体は無数の燐光となり、風に吹かれた砂のように消えていった。
主がいなくなった静かな巣の中。
ベイマンズとロウのハイタッチを交わした音が響き渡った。





