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第四夜

小鳥のさえずりが聞こえる。

もう朝なのか…。

昨日遊んだ疲れが、一気に取れた気がする。


寝袋を確認した。二人はいなかった。



「あれ…サヤカ?アイ?」


俺はゆっくりテントを出た。







「なんで!!?なんでミカが死んでるの!!?」

「私だってわかんないよ、なんでそんなサヤカは怒ってるの?」

「だって…だって……」


サヤカは拳を握りしめた。

そんなに悔しいのか…

俺は二人に話しかけようとしたが、次のサヤカ一言で動くのをやめた。










「だって…どう見ても自殺じゃない……」











俺たちはサヤカの遺体を見た。

おそらく出血死…だろう。

あらゆる所に切り傷があり、手首が一番深い。

そしてミカのそばには、ケンを刺したと思われる刃物が置いてあった。




「こんなもの…こんなもの……!!」

サヤカは刃物を放り投げた。



「自殺ってなんなんだよミカ…昨日は楽しかったって言ってたじゃないか…」

涙が溢れてくる。





「…昨日最後にミカに会ったのってアイだよね」

「そうだけど…」

「待てよサヤカ。さすがにそれだけで決めつけるのはおかしいだろ」

「じゃあ、ユウタくんは私だっていうの?」

「そ、それは…」



あまりにも情報がなさすぎる。

殺されたならまだしも、自殺なんて……。





「ユウタくんもアイも知ってるでしょ。私とミカは幼なじみだったってこと…それを踏まえた上で私が人狼だと思ってる?」


「でもっ「もういいわユウタ」


アイが言葉を遮る。




「あなたたちとは距離を置く、それでいい?」

「アイ…」

「いいの、何も言わないで。私がちゃんと気がついてあげられなかったのが悪いんだから」



そう言ってアイは苦笑いした。










5人じゃ狭かったテントが、今じゃ広く感じる。


「ユウタくんは、誰が人狼だと思う?」

「…わからないし考えたくもない……」

「そっか」



俺はこんなことがしたかったのか?

仲間を守るために、仲間を裏切るのか?




「大丈夫だよ、もう怖い夜は来ない。きっと、ね」

「ああ…」



俺はそう言うと身体を横にした。

もう疲れた、今日は休もう…




目を閉じようとした時、俺はあることに気が付いた。

まだ、証拠がつかめるかもしれない。















「ユウタ、こんな遅くに様子見に来てくれたんだ」

「どうだ、1人ぼっちの夜は」

「うーんそうね、まあ悪くはないんじゃない」

「…よく笑っていられるね」

「私はこういう性格だから」

「そうやってミカも殺したの?」

「ユウタ、何言ってるの?」

「そうやってミカも殺したのかって言ってるんだよ」

「何言って…私がなんでミカを殺したりなんか…」

「もう終わりにしよう…」

「ユウタ?何それ…それで私をどうするつ「ばいばい、アイ」




俺はアイ目がけて、斧を振り下ろした。













セオリー通りなら、被害者は必ず何か遺しているはずだ。

ミカは自殺…だけど。




まずはケンの死体。

親友の遺体を見るのは、正気の沙汰ではなかった。

吐き気を催しながらも何かないかと探してみるが、残念ながらメッセージのようなものはなかった。



ただ、一つわかったことがあった。

ケンが四肢を切断されたのは、息絶える前だという事だ。

爪が剥がれているのは、凄まじい痛みで地面を引っ掻いたからだろう。

ということは、四肢を切断した後に喉を切られた…?





そしてミカの死体。これがビンゴだった。

ミカはどう見ても自殺だったが、手のあった辺りに何か文字があった。




『 I' 』



英語の『I』、これを示す人物は1人しかいない。

おそらく日本語で書くより、英語で書いた方が力を使わずに示すことができると思ったのだろう。




ありがとうミカ、そのメッセージ受け取ったよ。




アイは、僕が必ず、殺すから。








これで終わった、終わったんだ。

俺は返り血を川で洗い流した。



テントに戻った俺は、スヤスヤと寝ているサヤカを見つめる。

結局守れたのはサヤカだけだった。



もう朝が来るのを恐れることはない。

明日になったらサヤカと街へ戻ろう。

そして人狼をやっつけたと警察に申し出よう。



きっと功績は大きいはずだ。やり遂げたんだ。

勇者だって街の人から囃し立てられるのだろうか。




俺はこれからの生活に胸を躍らせながら眠りについた。

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