表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイルス・オブ・アンタクティカ  作者: せりもも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/57

知の守護、クロエ

 明るい筈である。

 等のてっぺんの、その部屋は、全面、ガラス張りになっていた。

 天井もガラスなら、側面の壁の部分も、透明なガラスである。

 斜めに傾いた陽の光が、小さな部屋に、眩しいくらい、強烈に、差し込んでいた。


 夕日に照らされた床には、細かな色石で、魔法陣が描かれていた。

 その中央に、女性が、立っていた。


 女性というものにあまりなじみのないサンジュは、最初、彫像だと思った。

 そのくらい、動かなかったのだ。

 静かに、目を閉じている。

 指の先まで、ぴんと伸びている片手を、高く差し上げている。

 もう片方の手は、だらりと下げたままだ。


 彫の深い、はっきりとした顔立ちの女性だった。黒い髪は縄のように編んで、頭のまわりに巻きつけていた。

 そして、肌の色も、黒かった。

 黒、というと語弊がある。あくまで、カイトやジークと比べて、という意味である。この二人と比べれば、サンジュも地黒ではあるが、目の前の女性の肌の色は、それよりさらに濃かった。

 きめの細かい、滑らかな肌だ。

 さまざまな色が細かく混じった、変わり織りのローブが、よく似合っている。


 「前世界(プレ・ワールド)の知恵を、受信しているんだ」


不遜にも、その美しい女性を顎で指し示し、カイトがささやいた。


前世界(プレ・ワールド)って……?」


サンジュが前と同じ質問をしようとした時、傍らに立っていたジュスティビエーヌが、素っ頓狂な声を張り上げた。


「いんにゃ。クロエの手を、よく見るがいい。上がっているのは、左の手だ」


「あっ、本当だ。左手を上げてる!」


「クロエのやつ、また、BLを受信しておるんだにゃ!」


当然のことながら、サンジュには、何のことやら、さっぱりわからなかった。


「腐女子めがっ!」


 その時、彫像の目が、ぱちりと開いた。

 漆黒の、印象的な瞳が現れた。


「腐女子上等! 男好きより、なんぼかマシ!」


「なんだってぇ~」


仲が悪いのは、プリンセス・イガミとジュスティビエーヌだけではなかったようだ。

 ジュスティビエーヌとクロエは、喉の奥で低く唸りながら、睨み合っている。


「二人とも、やめなよ。初対面の人の前で、恥ずかしいよ」


おろおろとカイトがとりなそうとすると、二人そろって、こちらを向いた。

 そして、息の合った声で叫んだ。


「お黙り、マザコン!」


「ひえーっ」


カイトの怯えた声を、初めて聞いた。

 サンジュは、目を白黒させるばかりである。




 黒い瞳に、サンジュの姿が映り、クロエは、息を整えた。


「いらっしゃい、コングラの後継、サンジュよ」


 「今さら気取ったって、手遅れだがや」


ジュスティビエーヌが毒づくのを、クロエは、無視した。


「私は、クロエ。塔の守り人。また、知の守護」


この人も、守護なのだ、と、サンジュは思った。


「クロエ。教えてほしい。前世界(プレ・ワールド)ってなんだ? ここで、あんたは、何を、受信しているんだ?」


 「ちょっとちょっと、ボクは、おなかが空いたよ。クロエ、何か、食べさせてよ」


「あっちも!」


カイトとジュスティビエーヌが叫び、つられて、サンジュの腹が、ぐう、と鳴った。


 「確かに。先に客人をもてなすのが、礼儀。ジーヴス!」


クロエが両手を高く、打ち鳴らした。

 扉が音もなく開き、きちんとした黒服姿の男が現れた。櫛目の通った髪をオールバックに流している。


 「執事のジーヴスよ」


そう言うクロエの鼻は、得意げにひくついて見えた。


「美中年ってやつ? まったく、好きだねえ」


ジュスティビエーヌがつぶやいたが、無視された。


 「ジーヴス、客人に、食事を」


「帝が民に賜る食事ですか? それとも、もてなしの食事でしょうか?」


ジーヴスは、値踏みするように、サンジュを見ている。

 クロエは、にっこり笑った。


「こちらは守護、サンジュ。コングラの弟子です。貴人として、もてなすように」


「承知いたしました」


執事は一礼した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=231030255&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ