白夜祭――2
森がざわめいた。
花が一斉に開き始めた。
二人に光が宿った。
アイリはタピオをめがけて進んだ。
村人の群れがそれを遮った。
タピオとアイリは離れ離れになった。
村人の一人がアイリに声をかけた。
「おや、あなたは花冠をしていないのね。
これを差し上げますから、つけてみなさい」
「ありがとうございます」
「まあ、綺麗だわ。よく似合っているわよ」
「本当ですか?」
「ええ、あなたにピッタリよ」
「すみません。急いでいますので」
「ああ、お行きなさい」
アイリはタピオを探すのに夢中だった。
タピオも歌うことをクランに譲って、探し始めた。
それは、まるで
やわらかな風が二人の名を別々に呼んでいるようだった。
やがて、その風は二人を引き合わせた。
タピオはアイリの目の前に現れ、胸の奥の言葉をそっと告げた。
「あなたは花の精霊です、そして、私は心を奪われた旅人です」
「私は精霊ではありません」
「精霊とは姿が見えないもの、でも私にははっきりと見えるのです」
「私が精霊ならばあなたに魔法をかけられるはずです」
「いえ、すでに私はあなたの魔法によって心が揺れているのです」
「それならば、私は罪な精霊です」
「いえ、それは違います」
「どうして、違うのですか」
「あなたが罪な精霊ならば、私が甘んじて罪を受け入れるからです」
「それでは、あなたは罪人になるではありませんか」
「それでしたら、あなたの魔法で私の罪を解いてください」
「それはどうやって」
「聖なる口づけを交わすのです」
「それは、あなたの唇が可哀想というものです」
「それでは、私があなたに罪を移しましょう」
「どうやって、あ……」
「ほら、もう、あなたに罪を移しました。今度は私が罪をもらうのです」
「あ……」
白夜の光の中で、
二人はひとつの花のように咲いた。
「おおい、火事だ、焚火の炎が燃え移ったぞ」
「逃げろ、逃げろ」
祭りの場は騒然となり、タピオはアイリを探した。
しかし、もう姿は見えなかった。
花冠が空に飛んで消えていった。
その光景が、なぜかタピオの胸に深く残った。
やがて騒ぎが静まり返った。
その時、タピオは道に花冠が落ちているのに気づいた。
そして、それを拾い上げた。
柔らかな香りがいつまでもタピオに残った。




