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白夜――5
タピオは雪道を歩いていた。
足音が静かに森へと響いていた。
湖のほとりへたどり着くと、暖をとった。
しばしの休みだ。
湖面が静かに波打った。
風の音がした。
「兄さん、僕らは歌い人のままでいいのかな」
「僕たちには歌があるだろう。それで十分さ」
「そうかな……」
「どうしたんだ」
「だって、恋のひとつすらできないよ」
タピオは何も言えなかった。
少女の面影が湖面に映っていたからだ。
夜の使いが訪れた。
「クラン、どうすればいいかな」
「決まっているだろう、兄さん、街から街へと旅するだけさ」
「そうだね。それが僕らの仕事だからね」
遠くからフクロウの鳴き声が響いた。
「そろそろ、行こう。隣町へ」
「そうだね」
屋敷ではアイリが月の欠片を眺めていた。
そっと呟いた。
どうして、私はどこにも行けないの。
屋敷から教会へ行くだけ。
あの人の元へ行きたい。
神様、お願い。
私を月に変えて。
時々でいいの。
あの人のそばにいたい。
アイリの瞳に滲んだ月が映った。




