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白夜の奏でる音  作者: 月原 悠


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15/16

道――2

アイリは少年の瞳が深く心に残っていた。

ふと気づいた。

あの瞳は、白夜祭で出会ったタピオの熱い眼差しと、

どこか重なっていた。

そう思ったとたん、アイリの胸に再びタピオの面影がよみがえった。


抱き寄せられたときのぬくもり、

交わした唇のやわらかさ。

それに触れたくて、アイリの胸は急に切なくなった。

けれど、タピオの香りは風に乗ってアイリのもとへは届かなかった。


月の淡い光が屋根裏部屋の窓から差し込んでいた。

アイリは目を閉じた。

胸の奥に浮かぶのはタピオの面影ばかりだった。


屋根裏部屋から見える景色まで、どこか影に包まれて見えた。

アイリは必死にタピオの姿を思い出そうとしていた。


影をかき消そうとすればするほど、タピオの姿は遠のいていった。

再びあの温もりに包まれたい。

そう思うばかりだった。


一方、タピオは豊かな暮らしの中にいた。

ルージェの屋敷には、夜ごと華やかな灯りが満ちていた。

暖炉の火は絶えることなく揺れていた。

そのぬくもりの中で、

タピオの胸からは少しずつアイリの面影が薄れていった。


そして、ルージェの情熱的な視線が、いつしかタピオの胸に刺さっていた。

タピオとルージェの距離が近づくほど、

クランは居場所を失っていった。


クランはそんな二人の姿を、少し離れたところから見つめていた。

暖炉の火が揺れるたび、胸の奥に小さな痛みが走った。

それでも兄を責めることはできなかった。


クランは静かに心に決めた。

そして、ある夜タピオに告げた。


「兄さん、僕は少しばかり旅にでるよ」

「クラン、突然どうしたんだ」

「これも運命さ」


クランは言い残してルージェの家を後にした。

その旅立ちは、静かに歯車を動かし始めた。


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