道――1
外は次第に日が暮れて、
空にはさまざまな色あいが広がっていった。
白夜が終わりを告げるように、
フクロウや夜泣き鳥がざわめき始めた。
町のあちこちに灯りがともった。
アイリは途方に暮れていた。
あまりに日々の暮らしが貧しかったからだ。
隣の大きな屋敷の灯りが恋しかった。
次第に、家を飛び出してきたことを後悔し始めた。
そしてアイリは、かつて暮らしていた町ユヴァミエミへ引き返すことにした。
そりはもうなかった。
彼女はただひたすら歩き続けた。
ユヴァミエミへ到着すると、アイリは震える手で家の扉を開いた。
「ただいま、帰りました……」
アイリは小さな声で帰りを告げた。
中は静まり返っていた。
しばらくすると、部屋の奥から声がした。
その声はまるで、冬の窓辺のように冷え切っていた。
「誰かしら、婆や、追い返してちょうだい」
「奥様、それはあまりに……」
「いいから、リンネヴェラ家には汚れた娘などいません」
それを聞いたアイリは思わず、扉から飛び出した。
もう、帰るところはないのだとわかった。
再びラヌアに戻った。
そして、老人の家で再び暮らすことになった。
月の輝く夜。
アイリは呆然と町を歩いていた。
しばらく歩くと教会の灯りが見えた。
教会のすみっこに、一人の少年がいることに気づいた。
少年はうつむいていた。
アイリはどことなく気になって仕方がなかった。
少年にそっと声をかけた。
「どうしたの、こんなところで」
少年は何も答えなかった。
それがアイリの胸になぜか響いた。
もう一度、声をかけた。
「ここで、何をしているの」
少年はアイリの方を向いた。
けれど、唇は閉ざされたままだった。
彼女は仕方なく、老人の家へと帰った。
彼女の胸にそっと少年の瞳の輝きが残った。
老人の家の屋根裏部屋の窓から月がそっと顔を出していた。
月の光と少年の瞳が重なった。
アイリはあくる夜も少年のことが気になって、教会へと行った。
しかし、少年の姿はそこになかった。
なぜか、不思議な気持ちになった。
月の淡い光が夜のしじまに溶け込んでいった。




