ゴリラのオブリージュ
精神と身体のバランスがアンバランスである。精神はそこまで強くないが体がやたらめったら強い。哀れなモンスターである。
風邪を引くことがない。インフルエンザにもかからない。予防はしているがだとしても生涯で一度しかインフルエンザにかかったことがない。
風邪をひいて寝込むこともない。風説を信じるなら私は馬鹿かもしれない。わからないときはよくばななと言っている。
風邪を引かずに十数年以上経っている。風邪にはめっぽう強いらしい。丈夫な体に感謝したい。
体格に力は左右される。幼い時から同年代より一回り大きかったせいで妙に力持ちである。学生の時に友人を押しやったら壁に叩きつけてしまったことがある。
瓶の蓋を開ける時とても重宝する。怒りと共に硬い瓶の蓋を開けるのはおすすめだ。誰も傷つかないし硬い瓶が開いて生活の役にたつ。
生まれながらに強い体を持ってしまったようだ。両親に感謝せねばならない。その代わりメンタルは豆腐である。
強い体のせいで友人の悩みに共感できないのが悩みだ。すぐに具合が悪くなるだとかご飯の量が少なくなってしまうとか。私にはあまり縁のない症状である。
いつも具合が悪くなることはない。ご飯も毎回きちんと量を食べる。妙なところでストロングである。
ただメンタルは先ほども述べた通りとても弱い。すぐに泣いたりしょげたりしてしまう。モンスターの目にも涙である。
すぐに泣きべそをかく。そして寝る。次の日の朝はスッキリである。
睡眠で大方解決できるのも強い肉体のおかげだろう。打たれ弱いが再生速度は早い。精神がしょげていても肉体は元気なのである。
落ち込むことがあって休もうと思っても肉体は元気である。ご飯が食べられないと想像しながらいつもの量のご飯を食べる。ストレスでふらつくと思いたくても足取りはしっかりとしている。
弱い自分を演出しようとしていも肉体が強くて演出できない。大人しくいつもの通りの生活をするしかないのである。なんとも滑稽な姿である。
私だって具合が悪くてふらつくとか風邪で寝込むとかか弱い状態を経験してみたかった。だが無慈悲な肉体の強さのためにできない。本当はそれが一番いいのだとはわかっているのだが。
吹けば飛ぶような儚い自分を夢見てみるが実際は強靭な肉体を持つ豆腐メンタルモンスターである。力も強いので色々なものを破壊できる。もちろん物に当たるようなことはしない。
吹けば飛ぶようなメンタルなのに肉体はゴリラである。力が強いこともわかっているので無闇に物に当たったり手を上げるようなことはしない。力を持つゆえにセーブしなければならないのだ。
ゴリラのノブレス・オブリージュか。なんかもっと高貴で崇高なイメージがあったのに。しかしなんとなくわかるのが嫌である。
肉体の強さにはままならぬと思いつつ感謝している。おかげで毎日楽しく過ごせているのだから。ゴリラは儚げな少女にはなれないのだけが難点である。




