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ピンクブロンドの男爵令嬢ですが乙女ゲームなんて知りません  作者: もーりんもも


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11 公爵令嬢視点、王子視点

「階下が騒がしいようだけれど何かあったの?」


 侍女に尋ねると、ピクリと反応した。


「い、いえ。お嬢様には関係のないことだとお聞きしています」


 ふん。まあ我がグレンヴィル公爵家に刃向かえる家などないのだから、何であれ家令に任せておけばよい。

 そうは思ったけれど、窓から覗くと、エントランス前に衛兵らしき者たちの姿が見えた。

 ……衛兵?

 嫌な予感がする。


「お前。事情を聞いてきなさい」

「は、はい。かしこまりました」




 しばらくすると侍女が家令を伴って戻って来た。


「お嬢様。お騒がせしてしまい申し訳ございません。お帰り願うのに少々手間取りました」

「いいのよ。それよりも何だったの?」

「はい。それが――妙な話でして……」

「妙な話?」


 家令が首を傾げて言い淀む。

 それでもじっと睨みつけると先を話し出した。


「はい。街中でお嬢様の乗っていた馬車が暴漢に襲われたのではないかと言うのです。何でも目撃した女性が衛兵の詰所に報告されたとのことで」


 は?

 何よ……それ。

 そういえば、あの話……アレの実行は今日だったかしら?

 まさか……その女性って……。


「まあ、衛兵も少し混乱しているようでして。暴漢は捕えられたらしいのですが、言うに事欠いて、『お嬢様から頼まれて少女を襲った』などと言っているらしいのです」


 ……!

 しくじったばかりか、雇い主の名前を口にするなど契約違反ではないの。

 裏ギルドの連中など信用するのではなかったわ。


「何の冗談かしらね」

「誠にさようでして。一瞬でも疑うなど正気の沙汰ではありません」

「それで我が家の名前が語られただけで押しかけて来たと?」

「はい。ただ、暴漢たちは激しく打ちのめされているらしく、怪我をした際に頭でも打ったのではないかと衛兵は考えているようです。正しくは、『誰かに頼まれてお嬢様を襲った』ということだろうと結論づけたようですが」


 それはそうでしょう。この私がそんな野蛮な連中と繋がるなど誰も考えはしないはず。


「念の為御者にも証言をさせまして、事件とは無関係であることを理解いただきましたので、報告書にも公爵家の名前が残ることはないはずです」


 それはよかった。


「どうもありがとう」

「いえ、これが仕事ですから」




 つまり、ヘンリエッタとかいう男爵令嬢もどきの平民は無事っていうことなの?

 あの子は護衛もつけていないのに?

 いったい何が起こったの?



   ◆◆◆   ◆◆◆



「殿下! はぁっ。はぁっ。至急ご報告したいことが!」


 息を切らしたジェイコブが、生徒会室に飛び込んでくるなり声を張り上げた。


「何だ? どうした? 今日は騎士団の稽古に参加させてもらうのだと張り切っていたではないか」


 ジェイコブは騎士団長の息子だからではなく、第一王子である私の護衛の任務のために、正式な騎士の訓練に参加している。


「そ、それが。騎士の中に衛兵と知り合いの者がおりまして。その者が言うには、グレンヴィル公爵家が関係した事件が街中で発生したようなのですが、うやむやに処理され、上に報告されなかったらしいのです」

「まあ公爵家ですからね。衛兵たちでは楯突くことはできないでしょう。しかし、気になりますね。何を揉み消したのか……」


 宰相を父に持つノアは、常に理性的で感情に左右されない。


「もちろん、詳細な話を聞いて来たのだろうな、ジェイコブ?」

「はい、もちろんです。捕らえられたごろつきの話が要領を得ないもので衛兵たちも悩んでいたそうなのですが。グレンヴィル公爵家の名前が出たので、とりあえず公爵家を訪ねて話を聞いたらしいのです」

「ふむ。そこで一切の関与を否定されたと?」


 ノアの相槌にジェイコブが大きく頷く。


「ああ、そうらしい。詰所に報告にやって来た者たちなのだが、一人は学園の制服を着たピンクブロンドの少女と――」

「なんだと!」


 思わず叫んでしまったが、彼女のことを想うだけで胸が痛むのだ。


「ヘンリエッタ嬢が衛兵の詰所に現れただと? 助けを求めたのか?」

「何でも街中で貴族の馬車を襲おうとした不埒な輩を目撃したのだとか。名前は告げずに行ってしまったらしいのですが、学園の制服を着たピンクブロンドの少女といえばヘンリエッタ嬢しかいないと思います」


「うーん。グレンヴィル公爵令嬢とヘンリエッタ嬢の名前が出てくるとは……何やらきな臭い匂いがするのですが」


 ノアに言われるまでもない。


「僕たち生徒会の目の届かない学外で、シャーロットはヘンリエッタ嬢を害するつもりだったのだろうか……? この僕に――王子であるこの僕に近づけさせないために?」


 ジェイコブもノアも、初対面ではヘンリエッタ嬢のことを蔑むように見ていたが、その人柄を知った今では、すっかり態度を変えて、彼女をシャーロットの魔の手から逃すべく、常に気を配っている。


「シャーロットの息のかかった人間に襲われそうになったところを逃げ出して、衛兵の詰所に助けを求めたということか。おのれ、シャーロット! これは嫌がらせなどという生ぬるいものではないぞ! 貴族として、いや、人として一線を超えている! おい! ヘンリエッタ嬢は? 彼女は無事なのか?」


 憤る僕を尻目にジェイコブは目を泳がせた。


「いや、それが、その……結果的にのされたのはごろつきの方で。だから衛兵も貴族が襲われて、護衛がごろつきどもを返り討ちにしたと解釈したらしいのです」

「どういうことだ? ヘンリエッタ嬢は本当にただの目撃者なのか? だがそれなら一体誰が襲われて、誰がごろつきどもをやっつけたのだ?」

「……」

「……」


 ジェイコブもノアも真相は分からないというように肩をすくめて目を泳がせた。


「とにかく。シャーロットは危険だ。そのうちヘンリエッタ嬢に直接手を出すかもしれない」


 僕もいよいよ腹を決める時が来たようだ。

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