3 奴隷の町(2)
2024/8/21
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「なぁ、本当にさっきの作戦でいいのか?」
「何よ、他にいい案があるの?」
なにやら不安そうな顔のフレイヤ。赤髪の少女が考えた作戦に思うところがあるのか歯切れの悪い言い方をしている。
「ねぇよ。ただなんつーか、お前がそんな作戦を考えるとは思わなかったていうか」
「そうかしら?」
「そうだよ。お前いいとこの女だろ? そんな奴が考える作戦とは思えねぇぞこれ」
ただ喋ってただけなのに赤髪の少女の出自がそれとなくバレかけていた。
「不思議そうな顔してるけどよ、私みたいに《《底》》で生きてたような奴はそんな喋り方にならねぇんだよ」
「できる限り雑に喋るよう気をつけていたのだけれど」
赤髪の少女はできる限り言葉遣いを崩していたが、フレイヤにとってはそれでもまだ丁寧な言葉遣いといえるものだった。城にいた時にこんな喋り方をしていたらどんな騒ぎになっていたか分からないのだけれど、と赤髪の少女はため息をつく。
「って、喋り方の話はいいんだよ。作戦だ作せ───」
「御託はいいわ。どうせやらなきゃならないんだもの」
「お前無茶苦茶だな」
フレイヤの言葉をさえぎって赤髪の少女は立ち上がる。
「無茶苦茶で結構。ここを出て生き残るために一番可能性があるのはこの作戦だわ」
赤髪の少女に止まる気が無いのが分かったのかフレイヤは諦めたように座り込んだ。
「ま、やるしかねえんだもんな」
そういうことよ、そう赤髪の少女は呟いて、自らの手につけられている手枷に目をやった。そしてそれをおもむろに持ち上げた。
「おい、鍵なら私が作って──」
「要らないわ」
そういうと赤髪の少女は短く息を吸い込み、一気に両腕を広げる。当然、手枷がその動きを阻もうとするが、大部分が錆び付いた手枷は少女の力を抑えきることは出来ず、崩れるようにして壊れた。
「嘘だろお前。魔法……じゃねぇよな。どこにそんな力があんだよ」
「……やっぱり、普通じゃないわね。崖から落ちても無傷だったし、思い当たる節はいくつもあるけれど」
「おい、独りでブツブツ言ってんじゃねぇよ。どうしてそんな力があんだよ!」
「乙女の秘密よ」
「真顔で冗談言ってんじゃねぇよ」
フレイヤは魔力を用いることでその力技を為したのだと最初は考えた。だが、何度確かめても赤髪の少女からは魔力を感じない。
それは、いくら錆びているとはいえ金属で出来た手枷を己の力のみで引きちぎったということを示している。
口調は悪いながらも、フレイヤの口角は自然と上がっていた。
「ま、そんなもん見せられちゃやらない訳には行かねぇよなぁ!」
そういってフレイヤは立ち上がり、赤髪の少女を再現するように手枷を見つめる。
「それじゃあ見せてやるよ、私の魔法をな!」
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